センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

26話 届いてくれてありがとう。


 26話 届いてくれてありがとう。

 殺戮に没頭する二人の時間が、涼やかに流れる。
 気づけば、血だらけ、傷だらけになっている両者。
 お互いの一撃が、あまりにも重たすぎて、
 コスモゾーンの法則が、一々、介入せざるをえない。

(パーフェクトコール状態で、究極超神化8を使えれば、今の蝉原ぐらい、秒で消滅させられるんやけどなぁ……)

 闘いの中で、ザンクは、どうにか、
 『究極超神化8パーフェクトコール』を使えないものか、
 と、必死になって模索していたのだが、
 しかし、やはりというべきか、
 今のザンクでは、その領域に届くことは不可能だった。

 それも当然の話。
 なんせ、今の、『簡易版の簡易版』に指先が届いただけでも、奇跡の中の奇跡なのだから。

 今のザンクでは、絶対に8には届かない。
 だから、

 ――長期戦になる――
 と、ザンクは思った。

 けれど、
 そこで、蝉原が、

「できれば、全部奪い取りたかったけれど……まあいいか」

 そんなことを口にしてから、
 アイテムボックスから、一枚の魔カードを取り出した。

 それを見たザンクは、
 一瞬で、汗が噴き出して、

(まさか、まだ、禁止魔カードを?! 鬱陶しいっ!)

 どの禁止魔カードか知らないが、
 なんであれ、鬱陶しいことに変わりはないので、
 『使わせない』ように、瞬間移動で距離を詰めて、
 禁止魔カードを奪い取ろうとした……が、
 その時、
 またもや、『蝉原の世界』が展開されていく。

「残念。実は、ちょっと前から、ひそかに、無詠唱で展開していたんだよねぇ。時間は30秒が限界だけれど、それだけあれば、まあ、余裕」

 一度、目の前で詠唱展開しておくことで、
 意識を、詠唱展開のみに向けることが出来る。
 釣り球による目付け。

 戦闘思考力が高い相手には通じないが、
 ザンクの経験値では、まだまだ、その領域に到っていない。

「ぐっ!」

 『無敵の世界』に閉じ込められて詰むザンク。
 必死に頭を回転させて、逆転の一手を狙うが、
 しかし、そのザマを見た蝉原はニヤリと微笑み、

「――ちなみに言っておくと、阻止するのは絶対に無理。なぜなら、俺の言動は、最初から、ずっと、『この一枚を使うための布石』だったから」

 蝉原は狡猾な男。
 直球の殺し合いをする方が珍しい。

 いつだって、相手の裏をかこうとする。
 発言と行動を巧みに操り、相手を思い通りに動かそうとする。
 卓越した演技力、いざとなれば、秒で棄てられるプライド。

 『自分にとっての最善』のために没頭できる精神力が、蝉原にとっての最大の武器。

「君が、俺の『想像以上の覚醒』を果たしたのは事実だけれど、こっちとしては、別に、それでも問題は何もない。というか、そっちの方が、むしろ、手間がはぶけるから、ありがたいんだよね」

「……」

「届いてくれてありがとう。おかげで、この後の作業が少し楽になった」

 『くく』っと、黒く微笑んでから、
 蝉原は、

「すでに使用許可は下りている。戦闘に入る前から、申請していたから。普通はそんなこと出来ないのだけれど、まあ、特別な状況っていうのは、どのタイミングにも存在するわけで……ま、なんでもいいけれど、とにかく、そういうわけだから、ばいばい」



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