センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
26話 届いてくれてありがとう。
26話 届いてくれてありがとう。
殺戮に没頭する二人の時間が、涼やかに流れる。
気づけば、血だらけ、傷だらけになっている両者。
お互いの一撃が、あまりにも重たすぎて、
コスモゾーンの法則が、一々、介入せざるをえない。
(パーフェクトコール状態で、究極超神化8を使えれば、今の蝉原ぐらい、秒で消滅させられるんやけどなぁ……)
闘いの中で、ザンクは、どうにか、
『究極超神化8パーフェクトコール』を使えないものか、
と、必死になって模索していたのだが、
しかし、やはりというべきか、
今のザンクでは、その領域に届くことは不可能だった。
それも当然の話。
なんせ、今の、『簡易版の簡易版』に指先が届いただけでも、奇跡の中の奇跡なのだから。
今のザンクでは、絶対に8には届かない。
だから、
――長期戦になる――
と、ザンクは思った。
けれど、
そこで、蝉原が、
「できれば、全部奪い取りたかったけれど……まあいいか」
そんなことを口にしてから、
アイテムボックスから、一枚の魔カードを取り出した。
それを見たザンクは、
一瞬で、汗が噴き出して、
(まさか、まだ、禁止魔カードを?! 鬱陶しいっ!)
どの禁止魔カードか知らないが、
なんであれ、鬱陶しいことに変わりはないので、
『使わせない』ように、瞬間移動で距離を詰めて、
禁止魔カードを奪い取ろうとした……が、
その時、
またもや、『蝉原の世界』が展開されていく。
「残念。実は、ちょっと前から、ひそかに、無詠唱で展開していたんだよねぇ。時間は30秒が限界だけれど、それだけあれば、まあ、余裕」
一度、目の前で詠唱展開しておくことで、
意識を、詠唱展開のみに向けることが出来る。
釣り球による目付け。
戦闘思考力が高い相手には通じないが、
ザンクの経験値では、まだまだ、その領域に到っていない。
「ぐっ!」
『無敵の世界』に閉じ込められて詰むザンク。
必死に頭を回転させて、逆転の一手を狙うが、
しかし、そのザマを見た蝉原はニヤリと微笑み、
「――ちなみに言っておくと、阻止するのは絶対に無理。なぜなら、俺の言動は、最初から、ずっと、『この一枚を使うための布石』だったから」
蝉原は狡猾な男。
直球の殺し合いをする方が珍しい。
いつだって、相手の裏をかこうとする。
発言と行動を巧みに操り、相手を思い通りに動かそうとする。
卓越した演技力、いざとなれば、秒で棄てられるプライド。
『自分にとっての最善』のために没頭できる精神力が、蝉原にとっての最大の武器。
「君が、俺の『想像以上の覚醒』を果たしたのは事実だけれど、こっちとしては、別に、それでも問題は何もない。というか、そっちの方が、むしろ、手間がはぶけるから、ありがたいんだよね」
「……」
「届いてくれてありがとう。おかげで、この後の作業が少し楽になった」
『くく』っと、黒く微笑んでから、
蝉原は、
「すでに使用許可は下りている。戦闘に入る前から、申請していたから。普通はそんなこと出来ないのだけれど、まあ、特別な状況っていうのは、どのタイミングにも存在するわけで……ま、なんでもいいけれど、とにかく、そういうわけだから、ばいばい」
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