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125話 ファンの狂想。


 125話 ファンの狂想。

 熱くなっているのはザンクだけではない。
 彼女の神業を目の当たりにして『驚いていい』のはザンクだけの特権じゃない。
 蝉原も、

「……いやぁ、煽ってはみたものの……まさか、本当にやってのけるとはねぇ……」

 アンリミテッドと名はついているが、普通に限界はある。
 すべてのカンファレンスコールが溶けた時、
 そこには、無傷で立ち尽くすテラスの姿だけがあった。

 大量の鼻血で顔は真っ赤になっていて、顔は死にかけ、精神的にはボロボロの様子だが、
 しかし、彼女は、見事に、蝉原のカンファレンスコールを処理し尽くした。

「君だけだ……君だけだよ、閃くん……そんなことが出来るのは」

 恍惚の表情で、蝉原は、テラスを見つめていた。

「ほかの誰にできる? というか、どうして、そんなことができる? 君は異常だ。本当に素晴らしい」

 激しく絶賛してから、

「ただ、ここからどうする? あえて、もう一度だけ言わせてもらう。――神化すら使えない今の君が、究極超神化8になりかけている今の俺に、いったい、何ができる?」

 朦朧としているテラスは、
 フラつきながら、

「……何も……出来ないんじゃない? ……知らんけど」

 ファントムで通す。
 無意味な言葉でケムに巻きつつも、
 その目に灯った『決意の炎』はまだ消えていない。

 そんな彼女に、
 蝉原は、

「閃くんの異次元同一体ならば、これまでにも、『この現状にも匹敵する絶望』を、何度か乗り越えてきているはず。数多の絶望を乗り越えた経験がなければ、そんな目はできないはずだ……いや、君の場合は、もしかしたら、初見の地獄でも同じ目ができるかもしれないが」

 軽く、自分の予想に笑みを浮かべてから、

「まあ、それはともかく、君は、確実に、これまで、多くの絶望を乗り越えてきたことだろう。その中には、あるいは、現状以上の地獄もあったかもしれない。――どれだけの絶望であろうと、君は、当たり前のように乗り越えてしまう。まるで、それが運命だとでも言わんばかりに」

 そう言いながら、蝉原は、ゆっくりと歩を進めて、

「だから、たぶん、この地獄も乗り越えてしまうのだろう……ただ、いったい、どうやって乗り越えるんだろうか。正直、想像もつかない。だって、普通に考えたら無理じゃない? 君は神化すら出来ない状態で、こっちは究極超神化8目前だよ? 絶対に無理だよ。普通に考えたら」

 当たり前の所見を述べていく。
 今のテラスが、蝉原という絶望を乗り越えられるはずがない。

「正直、見てみたい。この目で。君の運命力を」

 そう言いながら、蝉原は、テラスの目の前まで歩くと、
 そこで、ザンクを指さしながら、

「これからは、もののついでではなく、本格的に、あそこにいるゴミを殺そうと思う」

 淡々と、丁寧に、

「正義の味方である君は、俺が罪なきゴミを殺害することが許容できず、新たな力を覚醒させて、ゴミを守る……そういうシナリオになる、と俺は予想しているんだけど、どうかな? 『慈愛に溢れた君の高潔な魂が、あそこにいるゴミを守らずにはいられず、新たな領域に足を踏み入れる』という、そんな尊い未来は訪れそうかい?」



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