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124話 彼女はイカれている。


 124話 彼女はイカれている。

「世界一かわいいねぇ、惚れてしまいそうだ」

「……ノるのヤメてくれる? キショすぎて死ぬ」

「くく……君は本当に気難しい女だね」

 そう言ってから、
 蝉原は、

「さあ、それじゃあ、華麗に防いでもらおうか。まさか、死んだりしないよね?」

 煽りながら、
 テラスに向かって、カンファレンスコールの嵐を叩き込む。


「――オメガバスティオン――」


 先ほどと同じく、波長にあわせてかき消していく。
 先ほどと違う点は、その作業量が膨大になったこと。

 一発をかき消すだけで良かった異次元砲対策とは違い、
 カンファレンスコールの場合、その膨大な数を的確に処理しなければいけない。

 その作業に求められている集中力と根気は、常人の領域を大幅に超えている。

「ぐっ……うぅ……お、多すぎる……クソが……」

 極限を超えた集中力は内臓をも傷つけていく。
 鼻血があふれて、脳がカラカラになっていく。

 普通なら、とっくの昔にお手上げのブラック業務。
 けれど、テラスは抗い続ける。
 この異常な仕事量を、一人で、必死にこなしていく。

 頭がブッつぶれるほどの、異常な集中力を世界に魅せつけたテラス。

 その神々しさに、まず、ザンクが、


(……し、信じられん……)


 オメガバスティオンの性質について、完全理解はしていないが、
 しかし、その破格の頭脳で、紐解いた結果、
 それが、どれだけ異常な技能であるかを予想することはできる。

(……アレは……確率だけで言えば、『地球に生命が生まれる可能性』を下回る奇跡……それを……あの女は、自力で巻き起こしとる……それも、膨大な回数……)

 人に出来ることではない。
 神だからと言って出来ることなのか?
 ――と、純粋無垢な困惑で一杯になる。
 ザンクは頭がいい。
 だから、目の前の女の異常性が正確に理解できた。
 あの女はイカれている。
 人間でも、神でもない。
 そういう次元の枠外にいる化け物。

 その『おそるべき事実』を目の当たりにして、
 ザンクは、

(あの女の集中力は……ウラスケを超えとる……)

 ザンクの中で『集中力』という一点だけに焦点をしぼった場合、
 全世界最強なのは、間違いなくタナカ・イス・ウラスケである。

 勝てるものなど存在しないと本気で思っていた。
 トウシですら、集中力という領域では、絶対にウラスケには勝てない。


 ――そんな、知識の土台があるザンクに、
 『彼女こそ、世界最強の集中力を持つ』と確信させた。

 それが、今、彼女がやっている神業。

(単純な強さ、ありえないほどの気高さ、破格の精神力、別次元の魂……こんな人間がおるとは……)

 これまで、ザンクは、『人間』など、どれも大差ないと思っていた。
 『血族』の面々が、『そこらの凡夫』よりも一段上にいるだけ。
 多少の性能の差はあるものの、しょせん、どれも『十把一絡(じっぱひとから)げのモブ』、『何の価値もない愚民』、『猿と大差ない無能』『意識に残り得ない、その他大勢』だと思っていた。

 ゾメガやドーキガンを見た時ですら、その価値観に変動が起こることはなかった。

 ――だが、ザンクは思う。
 この世には『自分たちの血族』以外にも、
 『価値のある存在』がいた。

(……セン……テラス……)

 心がザワつく。
 全身が熱くなる。

 熱くなっているのはザンクだけではない。
 彼女の神業を目の当たりにして『驚いていい』のはザンクだけの特権じゃない。
 蝉原も、

「……いやぁ、煽ってはみたものの……まさか、本当にやってのけるとはねぇ……」

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