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71話 パーフェクトリーダー、カルシィ。


 71話 パーフェクトリーダー、カルシィ。

「嘘も、状況と内容によっては、強力な武器になりますから、それをやめろと言う気はありませんが、しかし、もう少し、内容を練った方がいい。あと、邪神を騙るのは、メリットよりもデメリットの方が明らかに大きいので、やめた方がいいですよ。これは、本気の忠告です」

「お、俺のどこが嘘ついてるって証拠だよ!」

 そう叫んだセンの後ろで、ラーバは、

(……ぅ、うまいっ……あの雷ゴブリンは、『小物を演じる』のが抜群にうまい……)

 ――センの作戦が成功しているところを、
 後ろから観察しているラーバは、
 リグのように、無駄な努力をすることなく、

(あれでは無理……メシアは絶対に信じない……メシアだけじゃなく、誰も……)

 タメ息を一つはさむだけで、
 ドーキガンに対し戦意を向けながら、魔力とオーラを練り上げる。

 と、そこで、カルシィが、

「勇者相手に、そんなアホな作戦が通じるわけないだろぉ!」

 と、ブチキレ顔で、叫んで、

「セン! ミシャ! ラーバ! あんたらも、正式に、私の指揮下に入れ! 全員で、ちゃんと一致団結しないと、陛下と勇者の両方を相手にすることはできない! あと、ボーレ! 現実逃避するな! あれは、本物の勇者だ! 太刀筋を見れば分かる! あれほどのイカれた剣豪が勇者の他にいてたまるか!」

 リーダーシップを発揮する。
 彼女は、非常に優秀な人材。

 数少ない『人の上に立つことが出来る人間』である。
 最初から彼女の配下であるドコスとエーパは、言われなくとも全力で、カルシィのサポートをしていく。
 ボーレは、タメ息をつきつつも、仕方なく、カルシィと共に前線を張ろうと、ドーキガンに突撃する。

 それに続く、セン・ミシャ・ラーバ。

 さっきまで死力をつくして戦っていたので、
 『お互いに何ができるか』は身をもって知っている。

 全員が、的確かつ正確に『自分にできる最善』を尽くし、
 どうにか、ドーキガンに一矢報いようとしている。

 その様子を、少し後ろで見ていたモナルッポは、

(あのカルシィという女……ただよう気品から察するに、おそらく、王族か貴族位の出だな。実力とカリスマと統率力があって、かつ、土壇場で歯を食いしばれる根性もある……非常に優秀。資質の高さで言えば、レバーデインを遥かに超えている)

 兄のレバーデインも、王族としては、そこそこ優秀である。
 そんなレバーデインを超えた才能をもつ彼女を見て、
 モナルッポは、

(……しかし、ゾメガが注目しているのは、あの『優秀な女』ではなく、後ろの、特に何も感じない『目つきが悪いブサイク』だというのだから、人生というのは、分からないものだな。……あのブサイクは『ちょっとした小物』にしか見えないのだが……もしかして、俺と同じで、演技をしているのか? そうは見えないんだが……)

 などと、心の中でつぶやきつつ、

「……『ワンダーマン(ザンク)』、魔法でドーキガンのフォローをしてくれ」

 と、自分の召喚獣に命令をくだす。
 すると、ワンダーマン(ザンク)は、右手を斜めに上げて、

「イーッ!」

 と、ショッカーのような返事をして、
 ドーキガンのサポートについた。



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