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37話 メシアを待ちながら。


 37話 メシアを待ちながら。

 破壊された心臓と胸部がジュクジュクと再生し、
 また、わずかばかりの生気をとりもどすレバーデイン。

(あれは……まさか……『闇色天国』か……?)

 奇異に何度も再生するレバーデインの様子を目の当たりにしたモナルッポは、
 壊れたヘルズ覇鬼が『闇色天国』のスペシャルをもっていると推測する。

(やっかいな化け物に、やっかいなスペシャルが発現してしまった……まあ、現状だと、スペシャルではなく、魔法である可能性も捨てきれないが……)

 闇色領域という、闇色天国を展開させる魔法も存在するため、現段階では、断定することはできないが、しかし、どっちであろうと、結果は変わらないので、その点の考察は適当におさめて、
 モナルッポは、

(ヘルズ覇鬼が、レバーデインの拷問を楽しんでいるのかどうか知らんが……とにかく、もうしばらく、レバーデインで遊んでいてくれるとありがたい……)

 その間に、救出するプランを練ることができるから。

(レバーデインは使えるコマ……できれば、生きたまま回収したい……っ)

 『金』ほどの活躍はしないかもしれないが、そこらの『歩』よりは確実に有能なコマ。
 今は、猫の手も借りたい状況なのだから、『普通に使えるコマ』を失いたくはない。

 だから、そこで、モナルッポは、
 サーナに対し、

「王女! お願いします! 報酬はお支払いいたしますので、どうか、兄上を助けてください! 兄は大事な家族なんです!」

 レバーデインのことを『大事な家族』だと思ったことは、産まれてこのかた、一度もないが、しかし、モナルッポは、迫真の演技で、その嘘を、彼女に信じ込ませる。

 人生の大半を費やして、死ぬ気でとことん磨きぬいてきた『モナルッポの演技力』を見破れる者はそうそういない。

 モナルッポに請われたサーナは、
 渋い顔をして、

「目の前で行われている狼藉を、黙って見過ごすのは王族としてあまりに情けないゆえ、助けたいのは……やまやまだが……」

 ここに関しては嘘ではない。
 王族には、王族なりのメンツと意地がある。
 そして、今は、大研究会という、公の場。
 この場での失態は、そのまま、自分の『世界的な評価』の失墜につながる。

 『壊れたモンスターを対処することができず、無様にやられっぱなしになった無能』という評価を世界に刻むわけにはいかない。

 ――ただ、

(あの化け物は、生命力が高すぎる……ただでさえ、鬼種はバイタリティが高い種族だというのに……)

 壊れたモンスターは、さまざまなスペックアップを果たすのだが、
 共通しているのは、生命力が膨大になると言う点。
 最初から生命力が高い種族が壊れた場合、
 その生命力は、本当に、バグっているような状態になる。

(壊れなくとも、ヘルズ覇鬼の体力を削り切るのは困難。そして、先ほどの、カバノンとの一戦を見ても分かる通り、あのヘルズ覇鬼の体力はバグっている様子。我々のレベルでは、短期間で殺しきるのは不可能。……レバーデインが殺される前に、壊れたヘルズ覇鬼を討伐出来るだけの戦力は、ここにはない……レバーデインを助けることは……できない……っ)

 そこで、サーナは、

(彼がいれば……)

 頭の中で、『彼』のことを思い出す。

(……人類のメシア『ドーキガン・ザナルキア』が、この場にいてくれれば……っ)

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