センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

1話 優しいモナルッポ。


 1話 優しいモナルッポ。

(……また、妙なことになったなぁ……これ、もしかして、あれか? 異世界転移的なアレか? アニメとかでは見たことあったけど、まさか、自分の身に、これが、起こるとは思ってなかったなぁ。引くわぁ)

 などと、心の中で、つぶやきつつ、
 『彼』は、『モナルッポの執務机』の上に置いてある本を手に取り、

(うん……間違いなく、地球やないな。こんな言語は存在せん……)

 パラパラと、本に書かれている字を見つめながら、
 チラっと、『大きな窓』の向こうに広がっている夜空を眺めて、

(星の位置も明らかにおかしい……空気の質も、だいぶ違う。……いやぁ、しかし……マジかぁ……ははは、こら、おもろいなぁ)

 達観したような、あるいは適度に楽しんでいるかのような、
 そんな、『ぬるい質量』を伴う『乾いた笑い声』を出す『彼』に、
 モナルッポは、ガックリしつつも、最低限冷静に、

「……わ、私の本に触るな……」

 そう言って、指をパチンと鳴らした。
 すると、

「おっ……おおっ……っ」

 『彼』の体が、自分の意志に反して動き出す。
 本を、丁寧に机に戻して、
 モナルッポの前まで勝手に歩く。

(おお、すごいな……これ、もしかして、魔法か? はは、催眠術とかかかったことがなかったけど、もし、かかっとったら、こんな感じやったんかな? それとも、催眠術とかとは、やっぱり、毛色が違うんやろうか)

 心の中で、そんなことを思っていると、
 モナルッポが、

「お前、人間か? それとも、高位のフェイクオーラで素性を隠している『特殊な存在』か? 正直に答えろ」

 そう問いかけられた『彼』は、

「……」

 ジっと、モナルッポの目を見る。

「聞いているのか? おい! 言っておくが、俺の存在値は700を超えている。貴様が仮に、俺のセブンスアイですら見通せないほどの『高位のフェイクオーラ』が使える化け物だったとしても、さすがに、俺をどうこうすることはできんぞ。そもそも、召喚主に対して反抗など出来んしな。そこらの出来の悪い召喚士ならいざ知らず、この俺に逆らうことは不可能だ」

「……」

「徹底してシカトとは……ずいぶんと反抗的な態度をとってくれるじゃないか。それとも、しゃべれないのか? そうであるならば、態度でしめせ。私の言っていることが何も理解できないというわけでもあるまい。知性のない動物だって、意思の表現ぐらいはできるのだから」

「……」

「悪いが、反抗的なカスの相手をしているほどヒマではない。俺は忙しいんだ。こう見えても、世界の命運を背負っているんでね。――これが最後の質問だ。もし、応えなければ殺す。お前は人間か?」

「ん? ンー、まあ、そウやと思うで」

「喋れるじゃないか。無駄な時間をとらせるな。鬱陶しい」

「すんまヘンなぁ」

(妙なイントネーション……そういえば、あの実行委員も、同じようなイントネーションだった……たまにいるよな、こういう喋り方するやつ……)

 妙なイントネーションに疑問は抱いたものの、
 モナルッポは、『それ以上の疑念』は抱かない。
 なぜなら、『完璧な発音』で喋れる人間の方が少ないから。
 それに、この手の『独特のイントネーションでしゃべる者』は、ごくたまにいる。
 『吃音』や『子供の舌足らず』、あるいは『~でやんす系の口調』などと同じで『たまにいる、妙な喋り方』という認識をされている。

「それで、お前の名前は? セブンスアイで見たところ、ステータス上の名前は『39』となっているんだが、これは名前か? それとも――」

「あ、ごメん、にーサん」

「ぁ?」

「悪いケど、ここ、読んでくレへん?」

 そう言いながら、机の上の本をもってきて、
 とあるページの、一節を指さす。

「……何を言って――」

「たノむワ。それ、してクレたら、ちゃんと質問に答えるカら。おネがい、おネがい」

「……」

 『なんだ、こいつ』と思いながらも、
 モナルッポは、

(……変なのが召喚されてしまった……弱いだけではなく、流暢にしゃべることすら出来ず、妙な奇行をするバカ……勘弁してくれ……)

 心の中で、そう嘆いていると、

「頼むテ、マじデ。おネがい。してクレたら、ほンま、言うこと聞くかラ」

 などと、しつこく言ってくるので、鬱陶しくなったモナルッポは、
 下手に拒絶するよりも、サクっと処理した方がはやいと考え、

「はぁ……」

 と、一度タメ息をついてから、
 『彼』が望む通り、音読をしてあげた。

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