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33話 『ケンカするほど仲がいい』という概念は、聖龍王親衛隊には通じない。


 33話 『ケンカするほど仲がいい』という概念は、聖龍王親衛隊には通じない。

 ――聖龍王親衛隊の面々は、それぞれが、
 突出して優れた『力』と『思想』を持つため、
 全員、一律に、仲が悪い。

 力を持つ者は、『我(が)の通し方』を知っているから、
 いざとなったら、『闘争』という選択肢を取ることができる。
 『話し合い』で『我(が)』は通せない。

 ……そして、『力ずくで押しとおろうとする我』は、必ず反発を産む。

 『知性のある命』が集まれば、
 大なり小なり、程度の差はあれど、
 ――必ず、毎日が戦争になる。


 強欲で残忍で邪悪で狡賢い悪魔、ショデヒ。
 愚直で我の強い暴力的な龍人、ガイリュー。
 無為な争いを好まない堕天使、ザラキエリ。
 王に忠実な飛竜、ラディエルノバーノイド。

 一人一人が魔王級の力を持つ聖龍王親衛隊。
 そんな彼・彼女らを束ねる世界最強のドラゴン、
 聖龍王エルメス。

 聖龍王軍には、他にも、無数の『高位進化種』や『魔人』の配下が在籍している。
 その勢力は、かなりのもの。

 聖龍王軍の全てを相手にすれば、
 さすがのドーキガンやゾメガでも、
 『一騎』では、なかなか厳しいものがある。

 ・それだけの勢力を、森の中に閉じ込めておくだけというのはもったいないと考えているのがショデヒ。
 ・特に何も考えず、強者であるエルメスの剣をしているガイリュー。
 ・実は裏で『エルメスの力を借りて、世界平和を成せないだろうか』と画策しているザラキエリ。
 ・長い物には巻かれていればおおむね安全である、という社会の真理を理解し体現しているラディエルノバーノイド。

 ――バラバラに見えて、彼・彼女らは……いや、事実、バラバラなのだが、
 しかし、絶対者エルメスのもとで、シッカリとまとまっている。
 上に立つ者が強大でシッカリしていれば、
 下が多少モメていても、組織は、なんとかなる。
 逆に、上がふがいない場合、部下のもめごとは致命傷にもなりえるのだが。

 ――ザラキエリから視線を外したショデヒは、
 エルメスに視線を向けて、

「陛下、あなた様は、世界を統べることができる器の持ち主。ドーキガンや、ゾメガを凌駕する、この世界の正当なる支配者。それほどの御方が、こんな、世界の片隅で隠居しているなんて――」

「しつこい。何度も言わせるな。外の世界に興味などない。それに……」

 そこで、エルメスは、
 『自分が座している玉座の背後』に飾られている『禍々しい箱』に視線を向けて、

「私には、この箱を管理するという役目もある。人間やモンスターと遊んでいるわけにはいかない」

 階段の上の台座に置かれた『ソレ』は、カンオケに近い形状をしている大きな箱。
 漆黒の鎖に縛られており、時々、ドクンと脈を打っている。
 常時、禍々しいオーラに包まれており、見る者全てを不快にさせる。

「あなた様ほどの超越者が、そんな『見た目がイカついだけの、特に何でもない箱』に縛られて、おもてだった行動ができずにいるなど……なんと、もったいない話なのでしょう」

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