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27話 この世界を創造した神。


 27話 この世界を創造した神。

 人間の中で最強の存在は、勇者ドーキガン・ザナルキア。
 彼の存在値は異常な領域にあり、その気になれば、聖龍王親衛隊を皆殺しにすることも不可能ではないだろう。

 だが、そんなドーキガン・ザナルキアでも、
 龍の突撃を、片手で受け止めるということは、さすがに厳しい。

 モノには常識というものがある。
 それが、龍には理解できている。
 だからこそ、いっそう困惑する。

「な、何者だ…………なんなんだ、貴様……っ!」

「さっき、ワシ、自己紹介したやん。人の話は、ちゃんと聞いとけや、ダルいのう。まあええわ。じゃあ、ちゃんと、正式かつ丁寧に自己紹介したるから、ちゃんと耳かっぽじれ。ワシは、T・104。この世界を創造した神――そのサポートAI。」

「神? サポ……は?」

 理解できないという顔をする龍に、

「神という理解でええよ。実質的に、この世界を創ったんはワシやし。あのアホは、ただ見とっただけやから」

「……神……様……?」

 困惑が止まらない。
 龍の中でも、神という概念は存在する。
 この世の造物主。
 宇宙と星と命を作り出した全能の存在。

「神だと……いうのか……貴様が……いえ、あなたが……」

「信じたくないなら、信じんでもええで。別に、神様あつかいしてほしいわけでもないし。ていうか、むしろ、してほしくないし、タルいから」

「……」

「まあ、言葉だけでは信じられへんやろうから、ちょっとだけ見せたるわ」

 そう言いながら、
 Tは、軽めのオーラをまとい、

「ほいっ、と」

 龍ですら知覚できない一瞬で、
 龍の目の前まで高速移動すると、
 龍の腹めがけて、とてつもない速度とパワーのジャブをいれる。

「ぶげはぁあっ!!」

 一瞬で、腹部が吹っ飛んで、同時に意識も飛びそうになった。
 だが、

「――『神の慈悲』――」

 ありえないレベルの回復魔法で、
 龍の腹部が全快する。

「なっ? は? え?」

 何がなんだか分からないという顔をしている龍に、

「言うとくけど、先に手ぇ出したんはそっちやからな。神様を殺そうとしたんやから、何されても文句は言えへんで」

 そう言いながら、Tは、
 右ジャブ10連、左ジャブ10連、右フック、左フック、右ストレート、の23連発で、
 龍の全身をハチの巣にしてから、

「はい、『神の慈悲』と」

 また、回復魔法で、元の状態に戻す。

 すでに、痛みや傷は完全に癒えているわけだが、
 しかし、数秒前に地獄を味わったという記憶は刻まれている。

 だから、龍は、魂の底からブルブルと震えていた。
 バカじゃないので、もう理解できている。
 目の前にいる化け物が、『マジでヤベぇ規格外である』ということ。

 次元が違う。
 世界が違う。
 レベルが違う。
 存在値が違う。

 生命としての格があまりに違いすぎると理解した龍は、

「ど、どうか……」

 ブルブルと震えながらも、声をしぼりだして、

「どうか、おゆるしを……主よ……どうか……」

 神に対して、どのような言葉遣いや礼節が正解なのか、
 そんなことは分からない。
 なので、龍は、自分の中での最大限の礼儀でもって、Tに接する。


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