センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
1話 転生したら、雷ゴブリンだった件。
1話 転生したら、雷ゴブリンだった件。
最終結論は言うまでもなかった。
散々悩んではみたものの、
結局のところ、セン的に、選択肢は一つしかない。
中に入ると決めたセンを、
『既定の手順』で送り出そうとするT・104。
「掟に従い見送らぬ。すこやかにあれ」
「うっせぇ、ボケぇ」
「お前の流儀にあわせて、テンプレを使ってやったのに、ずいぶんとタンパクな返しやないか。もっと、小粋に返してくれや」
「自分がファントムトークを駆使するのはいいが、他人に使われると死ぬほど腹たつ」
「ワガママなやっちゃな」
「黙れ、カス。そもそも、『どうしようもなくなるまでバグを放置したテメェ』の『ミス』のしりぬぐいをしてやろうっつってんだから、涙を流しながら、こうべをたれてつくばうぐらいしてみせやがれ、クソが」
――こうして、散々悪態をついてから、
センは、自分が創った世界に転生したのであった。
★
――残されたTは、
新世界に旅立ったセンに意識を向けながら、
ボソっと、
「ワシがそんなミスするわけないやろ」
そこで、T・104は、空中に、
複数のエアウインドウを出現させる。
慣れた手つきで、
いくつかのシステムを弄りつつ、
射貫くような視線で、天を仰いで、
「それでは、『復讐のデスゲーム』を開始する。センエース。……本気で殺しに行くから、覚悟せぇよ……」
ボソっと、静かに、
しかし、力強く、そう宣言した。
★
(……転生したら、雷ゴブリンだった件……)
目が覚めると、センは、森の中にいた。
湖にうつる自分の姿を確認したところ、
最弱種の雷ゴブリンであると理解できた。
ちなみに、思考は普通に出来るのだが、
しゃべることはできなかった。
口を開いても、ゴブリン特有の変な鳴き声になるだけ。
(やべぇよ……レベル1で、種族がゴブリンって……詰んでんだけど、どうする? こんな『怒涛のスタートダッシュ』から、たったの50年で、バグをどうにかしろって? 人生の厳しさをナメんのもたいがいにしておけよ)
頭を抱えてうずくまるセン。
(可能性があるとしたら、『ゾメガ』と『ドーキガン』に協力を要請する感じか? いや、でも、どっちも、存在値800ぐらいだしなぁ……この世界においては最強とはいえ、バグ相手に何かできるかなぁ……できんだろうなぁ……)
この世界は、南と北の大陸に分かれている。
南がモンスターの世界で、北が人の世界。
もともと、おたがいの領土を求めて戦争しまくっていたが、
数十年前に、
南で『究極の魔王ゾメガ・オルゴレアム』、
北で『究極の勇者ドーキガン・ザナルキア』が生まれたため、
それ以降は、冷戦状態になっている。
(もし、この二人をバグ戦にかりだして、どっちか、あるいは、どっちも死んだりしたら、また普通に戦争になるんだよなぁ……バグに殲滅されるか、戦争で自滅するかの二択になっちまう……)
この世界の平均存在値は80前後。
そんな中に産まれたゾメガとドーキガンの存在値は800オーバー。
『個で世界一つに匹敵するレベル』の『とびぬけて強い魔王と勇者』の誕生により、
戦争は、『いったん、やめておこうか』という結論に陥った。
この二人が強すぎて、もはや、戦争において『兵器も兵隊』も意味を失った。
仮に、人間の軍が数百万単位で兵を編成しても、
ゾメガがその気になれば、魔法一発で、全員を吹っ飛ばせる。
そして、その力を持っているのは、ドーキガンも同じ。
二人が全力で殺し合えば、人類と魔族の優劣に『確かな決着』がつくが、『尋常ではない被害』が出ることは目に見えているため、どちらの陣営も、『決着』をのぞんでいない。
幸運なことに、どちらの陣営も、最上層部が、『まともな倫理観』を持っているので、話し合いの末、『おたがい、不可侵でいくのはどうだろう』という、結論にいたった。
(ゾメガとドーキガンの二人が神化すれば……可能性はあるか? どっちも、俺なんかよりも、はるかに優れた才能を持っているのは、確定的に明らか……)
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