センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
50話 暴走するキ〇ガイ。
50話 暴走するキ〇ガイ。
「君は最初から詰んでいたんだよ、センエース。しかし、最初からその『覆せない事実』を伝えたら面白くないだろう?」
『こうすればどうにかなる』という余地が残っているうちは、どれだけ困難でも、『チャレンジしてみよう』という意欲がわいてくる……可能性はある。
そういう『希望』を無慈悲に叩き潰された時、
人は、本当の絶望を知る。
悪夢バグは、『経験』上、それを知っている。
「――だから、希望をチラつかせてあげた。『頑張ればどうにかなるんじゃないか』と思わせてあげた。楽しかっただろ? 未来が見えている時は活力も沸いてくる。――だが、現実を知った今は、どうかな? 覆せない絶望を前にした君の感想をぜひ聞かせてもらいたい」
「ドン引きだな……辛すぎて泣きそうだ」
「……」
センの発言を聞いた悪夢バグは、
一度、渋い顔を浮かべてから、
「……センエース。君は、常に、言葉と行動がかみあっていない。現実に絶望した者は、そんな目をしない」
センの目は、まっすぐに、悪夢バグを捉えていた。
決して目をそらさない。
視線だけで命を殺そうとしているような、鋭い激しさを伴う、力強い眼差し。
「300の魂という、鬱陶しい足枷をつけた状態で、『数値的には、君を遥かに上回る力を持つ化け物』を、10000体同時に相手にしなければいけない……その上、その10000体は、何度殺しても甦る。文章にしてみたら、これほど酷い絶望はない。そう思わないか?」
「思っているよ。だから、『ドン引きだ』っつってんだろ。こちとら、今すぐ自殺して楽になりてぇ気分で一杯なんだよ」
「なのに、なぜ、拳を握りしめる? なぜ、300の魂を守る盾で在り続けようとする?」
「さぁな、たぶん、ヒマだからじゃね?」
ヌルりと、そんなことを口にしてから、
センは、自分の奥へと入り込んでいく。
暴走するキ〇ガイ。
とびぬけてイカれたファントムトークで世界を翻弄する。
気力を整える。
乱れた魂を整地する。
そうやって、静かに、自分を見つめなおしてから、
「さて、と……それじゃあ、再開しようか。ヒマと一緒に潰してやるよ」
そう言い捨てると、センは、また、
虫ケラどもを殲滅しようと無駄な努力を開始した。
バグは、復活こそしているものの、別段パワーアップしたわけではないので、殺す手順に変更はなかった。
すでに、殺し慣れた相手なので、サクサクとボコボコにできている。
必死にバグどもを殺し続けているセンに対し、
悪夢バグは、
「な、なぜ、無駄に頑張る? その行動に何の意味が――」
「だぁあありゃぁああああ! 龍閃崩拳っっ!!」
悪夢バグのダラダラしたおしゃべりを吹っ飛ばすように、
センは、悪夢バグの顔面に、特大の一撃をぶちかました。
その圧力に耐えきれず、悪夢バグの顔面は、腐った風船みたいに、もろくも、パァァァンと弾け飛んだ。
続けて、副官の頭を吹っ飛ばしていくセン。
指揮官級二体の死を前にしても、
バグどもは、ひるむことなく、ほとんど機械的に、
センを殺そうと攻撃を続けている。
それを見たセンは、
(……頭をつぶしても関係ねぇか……)
また一つ、大きな情報を得る。
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