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19話 狂おしいほどの憧憬。


 19話 狂おしいほどの憧憬。

「私の配下である『エターナルコール・ドラウグル』たちをどうした? 殺したのか?」

「ええ、全滅させたわ」

「ほう……素晴らしい実力だ。悪くない」

 と、一度、カティを褒めてから、

「貴様が相手となると、私も全力を出す必要がありそうだ」

 そう言いながら、全身の魔力とオーラを高めていく死羅腑。

 合わせるように、カティも、全身のオーラをアゲていく。

 両者とも、エンジンがかかったところで、死闘が開始される。

 超高速の戦闘を繰り広げる二人を見て、
 ギャンバルは、

(……すごい……な……)

 素直に、そう思った。
 『本物』を前にすると、基本的に、みんな、装飾された言葉を見失う。

(俺も……ああなれたんだろうか……)

 二人の死闘を見ていると、ふと、そんなことを思った。

(諦めずに……闘い続けていたら……俺も……同じステージに立てていたんだろうか……あの子の隣で、一緒に戦うことが出来ていたんだろうか……)

 あの少女のことが眩しくて仕方なかった。
 容姿に関しては好みじゃないが、しかし、彼女の武に対して、激しく、美しいという感情をいだいた。

 そんな、狂おしいほどの『憧憬』が、
 『助けてもらった』という感謝の気持ちと一緒になって、
 ギャンバルの心の中をかき乱す。

 二人の死闘は、長くは続かなかった。
 本物の決着を求めた場合、もっと、もっと、長い時間を必要としただろうが、
 途中で、死羅腑が、

「……人間の中に、このランクの強者が存在していたとは、思っていなかったな。この世界を終わらせることぐらい、数日で済むと思っていたんだが……考えを改める必要がありそうだ」

「いずれ10つ星冒険者チームになることが決定している、我らガットネロがいる限り、世界の安寧は永久に不滅!!」

 カティが、そう叫んだところで、
 後ろで、彼女のサポートをしていた3歳ぐらいの少年が、

「よっ、あんたが大将!」

 と、小気味いい太鼓を打つ。
 実に、見事な、腰ぎんちゃくぶりだった。

「ガットネロ……おぼえておこう」

 そう言うと、死羅腑は、指をパチンとならした。
 すると、空間魔法が音をたてて崩れていく。

 ――気づいた時、覇剣とガットネロの2チームは、元の場所に戻っていた。
 死羅腑の気配はすでにない。

「……しまった、逃げられた……」

 と、カティが悔しそうにつぶやくと、
 後ろの腰ぎんちゃくが、

「逃げられたのではなく、追い払ったと表現した方が正確だと思いやすよ、姉さん。あんな凶悪な化け物を撃退できるのは、世界広しと言えど、姉さんのみ! よっ、宇宙一!」

 と、素晴らしい『下っ端っぷり』を披露する。

 すると、そこで
 ギャンバルが、

「そこの少年の言う通りだ……あれほどの化け物を撃退するとは……見事だ。レミングウェイ・カティ・デステニィ。フェイトファミリーが誇る天才。あんたのウワサはチラっと聞いたことがあったが、まさか、ここまでの実力者だとは思っていなかった」

 そう言うと、そこで、腰ぎんちゃくが、

「さんをつけろよ、デコ助野郎! 姉さんを呼び捨てできる立場か、あぁん?!」


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