センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

17話 研ぎ澄まされた『人が持つ弱さ』の展覧会。


 17話 研ぎ澄まされた『人が持つ弱さ』の展覧会。

「くく……そこまで無様になれるとは、もはや、素晴らしいとすら思うな。逆に敬意を表したい気分だよ」

 死羅腑の煽りを受けて、
 ギャンバルは、さらに激昂する。

 なまけているという自覚がある人間は、往々にして、
 『お前、なまけているよね』という指摘に対して、最大級の怒りを示す。


「無様だと! 何がだ! ふざけるなよ、化け物風情が! 人様の社会で生きていくことの辛さも知らないくせに! ただ、命を消費しているだけの化け物に、人間の苦労がわかってたまるか! ナメるなぁあ!」


 ギャンバルは、そう叫びながら、
 剣に魔法を込めて、全力で斬りかかった。
 それなりのランクの剣気だが、伝導率が鈍っているのでパーセンテージは低い。

 体が重い。
 全盛期はもっと軽やかだった。
 剣が重たい。
 全盛期はもっと軽々と振るうことが出来た。

(――く、くそがぁ、俺はもっと動けただろう――)

 不甲斐なさに溺れるギャンバルに、
 死羅腑は、冷めた声で、

「底なしのマヌケが。『前線で歯をくいしばる』という日常を失った脱落者は、もはや戦士とは呼べない。貴様のようなカスが、剣などにぎるな、みっともない」

 そう言いながら、死羅腑は、
 ギャンバルの上段斬りを、あえて紙一重のところで回避して、

「その『ノロマな速度』が通じる世界に、この私がいるとでも?」

 あえて、ガキを相手にするような、穏やかな口調でそう言ってから、

「とことん、あわれだな」

 死羅腑は、ギャンバルの右腕を引きちぎった。
 それは、『腐ったエンピツ』をヘシ折るぐらいの、軽い感覚だった。

「ぎゃあああああっ!」

「腕が折れただけで、そこまで叫んでいては、これから大変だぞ」

 嗜虐的(しぎゃくてき)な声音でそう言いながら、
 続けて、死羅腑は、ギャンバルの右足を、
 『死神のカマ』で、サクっと切った。

 また、悲鳴をあげるギャンバル。
 覇剣のメンバーは、その光景を黙って見ているしかなかった。

 すでに、全員、戦意を喪失している。

 死羅腑は、あまりにも強すぎた。

「これから……努力する……」

 ギャンバルは、ボロボロの体をかばうようにして、

「努力すると誓う……だから……こいつを殺せる……力を……くれよ、世界!」

 そんなことを口にした。
 それを受けて、死羅腑は、呆れた顔を見せて、

「え……ま、まさか……それは、アリア・ギアスのつもりか? は、ははっ!」

 さすがに、耐えきれなくなって、大声で笑ってしまった。
 嘲笑ではなく、爆笑。
 面白すぎて、たまらなかった。

「今の贅肉を未来に丸投げとはおそれいった」

 何度か首を横に振って、

「せめて、命の一つぐらい、賭けてみたらどうだ? 絶死のアリア・ギアスでも積めば、私に、一太刀ぐらい、浴びせることもできるかもしれないぞ」

「……死にたくない……から……祈っているんだ……っ」

「はは……あ、そう」

 完全に興味をなくしたように、そういうと、
 死羅腑は、

「それじゃあ、そろそろ死のうか」

 そう言いながら、
 『死神のカマ』を天高く振り上げた。

 死羅腑の殺気を受け止めたギャンバルは、

(……死ぬ……)

 ようやく、現実を受け止める。
 そして、圧縮された時間の中で、自分の人生について考えた。
 頑張って上を目指している時は濃密だったが、
 ここの警備を任されるようになってからは何もなかった。

(……は……はは……走馬灯、みじかっ……)



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