センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

58話 ばいばい。


 58話 ばいばい。

「19兆だろうが、100京だろうが、無量大数だろうが、知ったことか、そんなこと」

「開き直れば、何かがどうにかなるとでも? 頭がバグって単純な計算すら出来なくなったというのであれば、数字の意味を思い出せてやろう」

 そう言いながら、
 アダムは、拳に少量のオーラを込めて、

「これが、存在値1000相当の拳だ」

「ぐぼへぇっ!!」

「すべてを出しつくしてからっぽになった貴様には、かなり効くだろう。卓越したオーラコントロールで防御力を高めることができなければ、貴様など、ただのレベル1だ。さて、次は、存在値2000相当で蹴ってみようか」

 言いながら、センのみぞおちにヤクザキックをぶちこんでいく。

「うぼぉええええっ!」

 噴水みたいに血をはくセンに、
 アダムは、

「数字の怖さを思い出したか? 存在値1は存在値1000に勝てない。つまりは、この世に、『存在値19兆の私に勝てる者』は存在しない」

「ぶへぇ……おへぇ……はぁ、はぁ……確かに難しいな……さて、どうしようか……どうすれば……お前を……黙らせられるかなぁ……」

「まだ、言うのか……いい加減、諦めたらどうだ? 本当に、気持ち悪すぎるぞ、貴様」

「……考えろ……どうすればいい……どうすれば、俺は……アダムを救える……」

 ビリビリと、センの脳波が伝わってくるようだった。
 センの目は完全にイカれてしまっていた。
 人間とは思えない気迫。
 なんと、イカれたことに、
 このごにおよんで、センは、


 ――ほんとうに、まだ、諦めていない。


「……センエース。今、私は貴様に『本物の恐怖』を覚えたよ。貴様の力はゴミみたいなものだが、その精神性は『いびつな狂気のかたまり』と言えよう。もう、一秒たりとも話したくない。今、すぐに、死ね」

 そう言い捨てると、アダムは、右手をセンに向けて、
 もはや、無駄な言葉を一切使わず、

「――異次元砲」

 センを確実に殺しえる異次元砲を放った。

 異次元砲が直撃するギリギリまで、
 センは、必死に考えていた。
 ――オメガバスティオンを使おうか――
 ――使ったところで、どうなるだろうか――
 極限状況下で加速した脳で、色々と考えるが、何も浮かばない。

(ど、どうすれば、アダムを――)

 それでも、諦めずに、どうすればアダムを救えるか。
 その思案に没頭していた――
 その時だった。

 ドンッッ!!

 と、センの体に衝撃が走った。
 タックルされたとすぐに理解できた。
 それをしてきた相手が誰であるかも。

「シューリ……」

 シューリは、

「ばいばい」

 最後にそう言って、
 アダムの異次元に貫かれた。

 次元の違うエネルギーは、
 情け容赦なく、シューリの全てを奪っていく。

 ほんの一瞬で、
 跡形もなく、
 あっさり、

 ――完璧に蒸発してしまったシューリ。


 ……死体すら残さない完全な死。
 それを目の当たりにして、センは、

「……」

 ガチリと、頭の中で、何かが外れた気がした。
 最初から、頭おかしいセンだが、
 今、この瞬間に、『ネジ』なのか『歯車』なのか『留め金』なのか分からないが、
 とにかく、センの中で、なにかが外れた。


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