センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

41話 『大丈夫』。


 41話 『大丈夫』。

 彼女が近づいてきているのは、気配で分かっていた。
 それも、涙を我慢した理由の一つ。
 女の前で涙を流すことを、プライドが許さなかった。


「……大丈夫ってなんだよ。それは、俺にかける言葉じゃねぇな」


 とことん、強がっていくスタイル。
 センは、不安と恐怖を押し殺し、
 虚勢100%の笑顔でアダムを見つめ、

「俺は『3億年の修行』に耐えきり、1兆の敵をワンパンできるようになった稀代のスーパーヒーローだぞ。俺にかける言葉は、称賛と喝采。それ以外は思い浮かばない――というのがデフォルトでしかるべき。そうだろう?」

「なぜ、そこまで……」

 アダムはバカじゃない。
 センのクソみたいな演技に騙されることはない。

「シューリを殺してしまえば、楽になるのに……どうして……」

 アダムは、センの強がりをシカトして、
 自分が思ったことだけを口にする。
 彼女は、いつだってそう。
 自分の理念だけを追求する、厄介オタク気質の狂信者。


「なぜって……そりゃあ……」


 そこで、センは言葉を探す。
 彼女の疑問に対して、『何かしらの答えを出してみたい』と思ったから。

 考えて、考えて、考えて、
 その上で、センは、ポツリと、

「……ほしいものがあったから……」

 本音の塊を吐き出した。

「それは……いったいなんでしょう? あなた様が望むものとは」

「……ヒーロー」

「ひ、ヒーロー……ですか? ヒーローがほしい? ……も、もうしわけありません。愚かな私では、主上様の言葉の真意がイマイチ分かりかねます」

 そこで、センは、つらつらと、

「ピンチに颯爽と現れて、どんな問題も快刀乱麻に一刀両断。たとえ、どれほど苦しい状況に陥っても、『大丈夫だ、心配するな』って笑っていて、最後には必ず、すべての巨悪をぶっ飛ばし、最高の『めでたし、めでたし』を世界に刻み込む……」

「……」

「それが……俺のほしいもの……『ヒーロー』だよ……」

 理想を口にすると、なぜだか、少しだけ楽になれた。
 頭の中だけにとどめていた時は、
 『曖昧(あいまい)にボンヤリしていたもの』が、
 『口に出すこと』を『求められた』ことで、
 『驚くほどハッキリとした輪郭』をもって、
 センの心の中心に刻まれた。

(ああ……そうだ……俺はヒーローが欲しい……)

 ぐつぐつと、沸き上がってくる。
 どんな絶望を前にしても、
 決して折れずに抗ってきた魂が、
 今、センの中で、ハッキリとした器に形成されていく。

「……ヒーロー見参――」

 それは虚勢。
 もっと言えばただの『嘘』。

 けれど、決して『薄っぺらな嘘』じゃない。
 どんな時でも叫び続けると誓った覚悟の証。

 そんな『センの覚悟』を受け止めたアダムは、
 我慢できなくなったように、
 センの顔を『自分の胸』に押し付けるようにして抱きしめる。

「な……なにを……」

 急な状況に、動揺を隠せないセンに、
 アダムは、

「……私は、あなた様の強さに惹かれました」

 ゆっくりと、言葉を紡いでいく。

「力もそうですが、精神の強さに心底惹かれたのです。私も、ソウルゲートを使いました。たった6万年ですが……幾度となく、孤独と絶望に押しつぶされそうになりました。だから、分かるのです。あなた様の偉大さが。その尊さが」

「……俺は尊くないよ。ただ頑張っただけだ。バカみたいに……必死に……」

「よく、頑張りましたね」

「……っ」

「あなたはすごい。『全世界ナンバーツーのド根性』を持つ私が保証します。あなた様が積んできた努力は、間違いなく、全世界ナンバーワンです」

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