センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
30話 究極の邪神『聖なる死神セイバーリッチ』視点。
30話 究極の邪神『聖なる死神セイバーリッチ』視点。
俺の名前はセイバーリッチ。
どうやら、召喚されたっぽい。
召喚されたのは、ひさしぶりだな。
いつぶりだったかな……
……つぅか、ここ……もしかして、『神界』じゃなく『現世』か?
周囲を見渡すと、
なんだか、いかにも『邪教の教徒(きょうと)です!』みたいな恰好の連中が、
俺のまわりを囲んでいた。
その中で、『もっとも存在値の高いヤツ』が、
俺を見ながら、
「せ、成功だ!! 完璧に成功したぁ! 見ろぉお! みんな、見ろぉおお! 究極の邪神だ! これほどの邪神を召喚できる者は、過去にも未来にも、私以外、存在しないだろう!!」
まあ、現世の魔人に召喚されたのは、実際、初めてだな。
『神界(しんかい)の深層(しんそう)』だと、
たまーに、俺の事を召喚するヤツもいるけど。
いやあ、しかし……現世のヤツが、
なんで、俺ほどの死神を召喚できたんだ?
俺、一応、死神の中でも、最高位中の最高位なんだが……
『神界の深層』にいる『上位神』の中でも、『だいぶ格上の神』じゃないと召喚できない『ウルトラレアモンスター』なんだけど……
なんて思いつつ、
俺は、軽く肩をまわしてみた。
なんか、体が重いな……
『自己鑑定(じこかんてい)』の魔法を使い、
自分の能力を調べてみると、
……あ、やっぱり、存在値が死ぬほど下がっている。
『2000』までの出力しか出せなくなってんじゃねぇか。
酷いな……『2000』が限度とか……
俺の存在値、本来は『9000億』以上あるんだけど……
まあ、俺みたいな『神の召喚獣』が現世で召喚された場合、
『コスモゾーンの法則』にしたがって、だいぶ力は落ちるんだけど……
でも、『2000』はヒドいなぁ……
あ、ちなみに、コスモゾーンの法則ってのは、えっと……
なんだろう……まあ、『質量保存の法則』とか、『ニュートンの法則』とか、
そう言う物理法則の一種だと思ってくれ。
ぶっちゃけ、俺もよくわかってねぇんだ。
神界だと、みんな、コスモゾーンがどうたらって言葉をよく使っていて、気付けば、俺も一緒に使っていた、っていう……それだけの話だから。
……なんてことを頭の中で考えていると、
「邪神よ! 貴様を召喚したのは私だ! この私! 『グラムド・ズワート』が、貴様を召喚した!」
と、そんなことを言われたので、
「あ、そう。うん、おめでとう。ガチですごいと思うよ。現世の生命で、俺を召喚できるやつは、そういない。――で? 俺は、なんで召喚されたんだ?」
「われわれ『邪神教』は、全ての魔王を統括(とうかつ)し、この世の頂点に立つ組織である! 貴様には、その手伝いをしてもらう!」
「……なるほどね。まあ、俺を呼ぶ理由としては、妥当(だとう)か……ところで、俺の足元に、ガキの死体が5人分ぐらい、転がっているんだけど、これをやったのは、お前らか?」
「そうだ! 我ら邪神教の手にかかれば『魔王の種』を回収することも容易! 5体分の魔王の種を生贄にささげ、さらに、私の『生涯(しょうがい)をかけた最高位召喚術』をもちいることで、貴様ほどの邪神を召喚することに成功したのだ!!」
「……なるほど、なるほど。つまり、間違いなく、お前らが、やったんだな?」
「そうだ! この私が――」
そこで、俺は、グラムドとかいうヤツの腕を、愛用のデスサイズで切り飛ばした。
俺は、『デスサイズ』と『聖剣』をおもに扱う武闘派タイプのアンデッド、
聖なる死神セイバーリッチ。
『不愉快なバカ野郎の命令』を、おとなしく聞いてやるほど、愚(おろ)かではない。
「あ、ああ……腕がああ! 私の! 腕! な、なぜ! なぜ、私に攻撃する! なぜ、召喚獣が、召喚主に逆らえるぅううう!!」
「一応、これでも『神の召喚獣』なんでね……一応というか、最高位の神獣だから、『存在値1000億』以下の生命に支配されたりしない」
そう言いながら、俺は、デスサイズで、グラムドの『存在値』を刈り取る。
「ぎゃああああああああ!」
「そんなわめくなよ。どこも切れてねぇだろ?」
『首を刈(か)ったように見えた』と思うが……
というか、実際、首を刈ったんだが、
俺が奪いとったのは『首そのもの』ではなく、
こいつの中に内包されている魔力とオーラ。
「お前の力を殺した。これから先は、存在値10以下の社会的弱者として生きろ。それが、てめぇにあたえる罰だ」
そう言ってから、
俺は、グラムドの顔面に、
握りしめた拳を叩き込む。
「ぶへぁ!!」
吹っ飛んで壁に激突。
鼻がヘシ折れて、顔面血だらけになっているが、
殺してはいない。
死んだら罪を償(つぐな)えない。
グラムドがたおされたのを見て、
周りの教徒連中が騒ぎだす。
「ひ、ひぃいい! ぐ、グラムド様が! こ、こんな、あっさり……っ」
「グラムド様の存在値は、六大魔王に匹敵するというのに……こ、こんな、ばかなぁ!」
わめいている連中全員に対して、
俺は、グラムドと同じ罰をあたえた。
「ぐあああ!」
「ぎゃああ!」
「やめっ――」
サクサクっと、魔力とオーラを刈り取っていく。
全員が気絶して、静かになったところで、
俺は、
「……種族的に、『蘇生(そせい)系のスキル』は苦手なんだよ。使ったら、俺の生命力、絶対に減るよなぁ……やだなぁ……ただでさえ、存在値2000にまで減ってんのに……はぁ……」
一度、タメ息をついてから、
「……でも、まあ……こいつらが死んだのは、俺のせいみたいなもんだしなぁ……もう、ウッゼぇなぁ……」
俺は、生命力を媒体(ばいたい)にして、ガキどもに対し、
『反魂(はんこん)の神聖式(しんせいしき)』を使う。
まあ、要するには『ザ〇リク』だ。
『神の力』さえ使えれば、
この程度の雑魚どもを蘇生させるぐらい余裕なんだが、
今の俺だと、生命力を使わないと無理……
「はぁ……しんどい……」
再度、タメ息をついてから、
俺は、ガキどもを生き返らせた。
このガキども、現世のガキにしては、全員、それなりに存在値が高いから、
その分、俺の存在値が、けっこう、ゴッソリもっていかれた。
……1500まで下がったか……
下がったなぁ……
はぁ……
「まあ、いいや……とりあえず、こいつらには、『俺の加護』をさずけておくか。せっかく生き返らせたのに、『また同じ目にあって死にました』とか、そんなオチになったら、シャレにならんからな……」
ブチブチ言いながら、俺は、ガキどもに、加護をさずける。
『セイバーリッチの加護』は、現世だと、かなりチートな加護だが……
まあ、今回ばかりは仕方がない。
一応、『俺の加護を使って悪さをしよう』としたら、加護が切れるようにしておいたし、面倒ごとが起きるってことはないだろう。
「……しっかし……『神界に帰れない』のは……なんでだ?」
さっきから、ずっと、神界に帰ろうとしているのだが、
なかなか、戻れない。
さっき、グラムドから、存在値と一緒に、
俺の『召喚権』も奪い取ったんだが……
「んー」
俺がここにいるのには、もしかしたら、何か理由があるのかも……
そう思い、少しだけ、神経を研(と)ぎ澄(す)ませてみた。
すると、
「……あ……」
俺は見つけた。
この感覚は……
「ま、マジかよ……この世界に……俺の『片割れ』がいる……」
ずっと探していた『片割れ』……
全然みつからないから、ほとんど諦めていたんだけど……
マジか……実在したんだ……
まさか、こんなところで見つけられるとは……
具体的な居場所は、ちょっと分からないが……
間違いなく、気配を感じる……
「なるほど……引き寄せられたってわけか……」
俺はニっと笑って、
「待ってろよ、『センエース』……俺はお前のペルソナだ。一つになることで、俺たちは、完全な存在になる」
なんて、そんな言葉を世界にのこしつつ、
俺は、『片割れ(センエース)』を求めて、歩き出した。
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