センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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6++話 『本物』の『絶対的忠誠』を誓(ちか)われるセンエース。


 6++話 『本物』の『絶対的忠誠』を誓(ちか)われるセンエース。

 ――アポロの肉体が完全に消えて、
 世界が静かになった。

 ――と、そこで、
 蝉原が、背後から、

「センくん……」

 声をかけてきたので振り返ると、
 蝉原は、片膝(かたひざ)をついていて、


「最初から……おれは、君の奴隷(どれい)だが……今後は、より一層(いっそう)の忠義(ちゅうぎ)を君に捧(ささ)げる。命がけで、おれの命を救ってくれた君に……おれは、本当に感謝している。それだけじゃない。君のそばにいれば、おれはもっと強く輝ける。おれは、君を見誤(みあやま)っていた。きみは……すごい男だ」


 そんな、蝉原の殊勝(しゅしょう)な態度を見て、俺が思ったことは次の通り。

 ははっ。
 嘘つけ。

 ――お前はそんなヤツじゃねぇ。
 お前は、そんなに『つまんないヤツ』じゃない。
 今でも、絶対、腹の中では、
 俺の殺し方を考えているはずだ。

 『俺の命令に従(したが)って、善人をしなければいけない』と言うことに対して、
 歯ぎしりするほどイラついているはず。

 蝉原、
 てめぇは一生、苦しみながら、『善人』をやってろ。
 それが、俺の、お前に対する復讐だ。


「セン様……」


 蝉原の次に声をかけてきたのは、
 ヒーラーのアルブムだった。
 ピタピタのナース服が妙にエロいので目のやり場に困る。

 彼女は、目をキラキラとさせて、

「あなた様の高潔(こうけつ)な光……しかと拝見(はいけん)させていただきました。『師匠(せみはら)』と同じく、わたくしも、最初から、あなた様の下僕(げぼく)ですが……より一層の忠誠(ちゅうせい)を誓(ちか)わせていただきたく存(ぞん)じます」

 そう言って、おごそかに、片膝をついて、頭をさげる。
 『酒神(さかがみ)以外』の『弟子たち』も、それに続く。

 んー、こいつらは……『どっち』だろうなぁ……
 ガチで忠誠(ちゅうせい)を誓(ちか)ってんのか、
 それとも、腹の中で、別の事を考えてんのか……

 いやぁ、わっかんねぇなぁ……
 蝉原ほど分かりやすいヤツなんて、そうそういないもんなぁ。

 と、そこで、
 唯一、この中で、片膝をついていない酒神が、

「やっぱり、オイちゃんの目に狂(くる)いはありまちぇんでしたね。まあ、内包(ないほう)されている、その『凄(すさ)まじいポテンシャル』が、こんなにはやく開眼(かいがん)するとは思っていまちぇんでちたけど。『お兄(にぃ)』は、想定以上にハンパない男だったみたいでちゅ。――オイちゃん、こんなことは滅多(めった)に言わないんでちゅけど、命を救ってもらったことでちゅち、特別サービスとして、一つだけ、なんでも言うことを聞いてあげまちゅ」

「え、マジで? ……いま、『なんでも』って言った?」

「なんでもいいでちゅよ。さあ、このオイちゃんに、なんなりとお申(もう)し付けくだちゃい」

 別に、今回の件で、そんな大層なことをしたつもりはないが、
 しかし、せっかくの機会だから、ちょっとだけ冒険させてもらおう。



「……じゃあ、俺を、ちゃんと見てくれ」



 『絶対服従だから崇(あが)める』とか、そんなんじゃなくて、
 こいつには、ちゃんと、俺を見てほしいと思った。

 そんな俺のワガママをぶつけたところ、

「……」

 酒神は、2秒だけ間を置いてから、
 ニっと、イタズラな笑顔を浮かべて、

「世界最強の男になれたら、考えてあげまちゅよ」

 などと、そんなことを言ってきた。
 ちなみに、『絶対的主人公補正の影響』で、『絶死が解除されてしまった今の俺』の存在値は、もとの『2』に戻ってしまっている。
 つまり、ほぼ世界最弱である。

「……なんでも言う事聞くんじゃなかったのかよ。なんで、『重たい条件』をつけてんだ。話が違うじゃねぇか」

「何を言っているんでちゅか。ちゃんと『聞いてあげた』じゃないでちゅか」

「……古典的(こてんてき)な言葉遊びしやがって」

「言葉遊びじゃないでちゅよ。もし、お兄が、世界最強になれたら、その時は、オイちゃんの処女をあげまちゅ」

「……っ」

 あまりに、唐突(とうとつ)なセンシティブワードに、
 つい、俺の童貞がビクついてしまった。

 しかし、ここで動揺(どうよう)するのはあまりにカッコ悪い。
 クールにいけ。
 最後まで、虚勢(きょせい)を張り続けろ。


「――『俺なんかが世界最強になれるわけがない』と、タカをくくっての発言か? ずいぶんと、ナメ腐ってくれるじゃねぇか。いいだろう。なってやるよ。ほえヅラかかせてやる。――言っておくが、酒神。はいたツバはのめないぞ」

「発言を撤回(てっかい)する気はありまちぇんよ。ちなみに言っておきまちゅけど、オイちゃんが、こんな約束をするのは、この世で、お兄(にぃ)だけでちゅ。他の男には、間違っても、絶対に、こんな約束はしまちぇん。そこんところ、勘違いしないでくだちゃいね」



 ――もともと『最強の男』を目指すつもりだった。
 せっかく、レベルアップができるファンタジー世界に来られたのだから、『最強を望まない』というのは、もはや罪と言ってもいいレベル。


 ……男子はね、誰でも一生のうち一回は、地上最強ってのを夢見るのさ。


 まあ、あと、蝉原が『永遠に俺の奴隷であり続ける』という保証(ほしょう)はどこにもないしな。
 今後、蝉原の力が増して、俺の命令を無視できるようになる可能性はゼロじゃない。
 『もしもの時』のために『蝉原を止められる力』を得ておくのは必要不可欠だと思っていた。

 その『絶対に走り切ると決めたマラソン』の『ゴール』に、
 『とんでもないご褒美(ほうび)』が用意された。
 それだけの話。

 こうなったら、もう、俺は止められんぞ。
 死ぬ気でやってやる。
 最強になってやる!!





 ……てか、最強になったら、本当に、俺、童貞を捨てられるのかな……
 いや、あれは、酒神流のブラックジョークかな……
 うん、そうだな。
 そうだよな……

 ……
 ……


 ……冗談じゃなかったらいいなぁ、
 と期待しているが、

 それは誰にも内緒だ。

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