センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

4話 蝉原、ボッコボコ(ちょいざまぁ)!


 4話 蝉原、ボッコボコ(ちょいざまぁ)!

 蝉原が余裕(よゆう)を見せていると、

 そこで、龍美女が、
 口から出ている血を、
 袖(そで)で拭(ぬぐ)いながら、


「べ、別時空の……邪悪な侵略(しんりゃく)者ども……」


 ギリっと奥歯をかみしめ、

「貴様らは、絶対に殺す……この世界の『守り神』として……」

 なにやら、神聖(しんせい)っぽい力を充満させていく。

「余(よ)は、龍の女神! この世界の天帝(てんてい)アポロ・テスタメント。すべての悪(あ)しきを砕(くだ)く聖なる輝き! 貴様らのような邪悪の化身(けしん)には、絶対に屈(くっ)しない!!」

 名乗りをあげるアポロ。

 ――そのスキを、酒神(さかがみ)は見逃さなかった。
 タメにタメた拳(こぶし)で、
 アポロの顔面を叩き割ろうとした。
 しかし、



「究極(きゅうきょく)完全体(かんぜんたい)モードッッ!」



 攻撃が当たる直前、
 アポロは、変身した。

 グググっと、力が増していく。
 より美しい姿へと覚醒。
 ギラリと目を光らせて、
 アポロは、



「龍撃(りゅうげき)/反譜(はんぷ)!!」



 綺麗なカウンターをぶちこんできた。

「おっとぉ!」

 アポロのカウンターを、ギリギリのところで回避(かいひ)した酒神は、
 バックステップで、俺たちの近くまで戻ってくると、

「あのトカゲ女……パワーとスピードが、死ぬほど上昇していまちゅ……強ボスにありがちな、第二形態(だいにけいたい)ってやつでちゅかね」

 そんな酒神の発言に、
 蝉原がボソっと、

「ちっ……存在値が1000まで上昇しやがった……クソ鬱陶(うっとう)しいな。『かませ犬』で終わっていればいいものを……」

「ケガしたくないんで、『アルブム』と『マリ』も呼んでくだちゃい。全員でかかれば、完封(かんぷう)できるでちょう」

「……そうだな……『アルブム・カライト』、『文月(ふみつき) 真里(まり)』、召喚(しょうかん)」

 蝉原がそう言うと、
 周囲に、2つの魔方陣が出現する。

 そして、召喚される、蝉原の弟子二人。

 一人は、ナース服を着ている『柔らかな雰囲気の美女』で、
 一人は、ミニスカポリスみたいな恰好のクールビューティー。

 蝉原の話が事実なら、二人とも、ただ美形というだけではなく、
 どちらとも、『魔王以上の力』を持つ、とんでもない化け物。
 どう見ても、そんな強いようには見えないんだけどねぇ……
 まあ、それは酒神も同じだけど。

 なんて思っていると、
 そこで、蝉原が、ボソっと、

「センくん……おれたちに命令してくれ。あのトカゲをたたきつぶせ、と」

 バキバキっとユビの関節をならしながら、舌なめずりをする蝉原。

 暴力をふるいたくて、うずうずしているのが見てとれた。

 別に俺の命令を待たなくとも『自発的に闘うこと』もできるのだろうけど、
 一応、体裁(ていさい)を保(たも)とうとしているっぽい。

 その気持ちが分かったので、俺は、余計なことは言わず、


「え、あ……うん。じゃあ、よろしく」


 そんな俺の『命令?』を受けて、
 この場にいる俺以外の全員がいっせいに飛び出した。

 見た目どおり、アルブムがヒーラーを担当し、
 文月が『状態異常系のデバフ魔法』を敵にかけて、
 酒神と蝉原がアタッカーをつとめる。

 バランスのいいパーティで、
 連携(れんけい)も見事だった。

 蝉原の、

「殺神覇龍拳(さつじんはりゅうけん)!!」

 『ハデなエフェクトのかかった豪快なアッパー』が、
 アポロに炸裂(さくれつ)する。
 ちなみに、技の名前をさけんでいるのは『カッコイイから』ではなく、
 そうした方が『火力が出る』と、説明書に書いてあったから。


「ぎゃぁあああああああああああああああああああっっ!!」


 白目をむいて、爆発音のような悲鳴をあげるアポロ。

 その痛々しい悲鳴を聞いた蝉原は、
 満面の笑みを浮かべて、

「いい声で鳴(な)くねぇ。もっとイジメたくなる」

 などと、快楽(かいらく)殺人者の顔で笑う。

 最初から知っていたけれど、
 やっぱり、蝉原は極悪人だ。
 あいつが敵だったらヤバかったな……

 ――などと思っていると、
 そこで、アポロは、
 第二形態になるだけでは飽(あ)き足らず、


「この、おぞましい『邪悪の化身(けしん)ども』さえ殺せれば、それでいい! 余の寿命(じゅみょう)を、残り15分まで圧縮(あっしゅく)する! つまりは、すべてをささげる!! だからぁああ! ありったけをぉおおお!!」


 ノドがちぎれるほどに叫ぶ。

 その叫びは、たんなる『覚悟の表明』ではない。
 どうやら、『世界との契約(けいやく)』だったらしい。





「――絶死(ぜっし)のアリア・ギアス、発動ぉおお!」





 宣言(せんげん)の直後、
 『鮮血(せんけつ)のような真っ赤なオーラ』に包まれるアポロ。

 アリア・ギアス。
 そのシステムは、説明書に書いてあったから知っている。

 『覚悟(かくご)』と引きかえに、
 『望む力』を得られるようになる世界のシステム。

 アポロは、さらに、

「邪悪なる者よ、ふるえるがいい! もう一段階(いちだんかい)、積(つ)んでやる!! 余の『弱点属性』は『雷』だ!! 余は雷撃に弱い!!」

 と、『自分の弱点』を急に叫びだした。
 その『意味』を、ここにいる全員が理解している。
 説明書に書いてあったから。

 おそらく、あの宣言は、
 『暴露(ばくろ)のアリア・ギアス』。
 『自分にとって不利な情報』を、あえて叫ぶことで、
 『その覚悟』を『力』にかえる、世界との契約。

 『絶死(ぜっし)』と『暴露(ばくろ)』を積(つ)んだことで、
 彼女は、限界を二つ超えていく。



「――『霊甲(れいこう)・光龍闘衣(こうりゅうとうい)ランク27』!!」



 『すさまじい性能の強化魔法』を使っていくアポロ。

 その様子を見た蝉原が、
 こめかみに脂汗(あぶらあせ)を浮かばせて、

「ランク27だとぉ?! 『ランク魔法』の上限は『25』だろぉ! なに、チートかましてんだ、このトケゲ女ぁああ!」

 そこで、ヒーラーのアルブムが、

「魔法だけではありません! 存在値も『1200』にアップしています!」

 これには、酒神も渋(しぶ)い顔をして、

「ふざけてまちゅねぇ……なにもかもチートじゃないでちゅか」

 続けて、デバフ担当のマリが、

「……状態異常系の魔法が通りづらくなった。あのトカゲ、耐性値(たいせいち)も、ものすごく上がっている」

 そこで、蝉原が、

「くそったれぇえ! おかわりだぁ! 『ファイアゲート・デビナ・バーサキュリア』、召喚!!」

 また、魔方陣から、美女が登場。
 今度の美女は、 真っ赤なセーラー服を着こんだ、ピカピカの美少女。
 ただ、『目のギラつき』がハンパではないので、
 『かわいらしさ』というものは、ほぼほぼ感じない。

 デビナは、そのギラギラした感じを強め、
 腹の底から、


「めちゃくちゃピンチじゃねぇか! 血がたぎるねぇ!! かはは!!」


 アドレナリン全開な感じでそう叫ぶ。

 見た感じ脳筋(のうきん)っぽい……と思っていたら、
 ほんとうに脳筋だった。

 デビナは、ラリったような顔をして、
 アポロに対して、作戦なしの神風特攻(かみかぜとっこう)をかましていく。

 蝉原は、さらに、

「まだまだぁあ! 『アズライル・ノーバディ』、召喚!!」

 次に召喚されたのは、
 『白と黒が織(お)りなす奇抜(きばつ)なドレス』に身を包む美女。

「なんか、めちゃくちゃ、めんどいコトになっとんなぁ。ウチ、こういう、ヤバ気(げ)な展開とか嫌いなんやけど」

 ダウナーな感じで、魔法を連発するアズライル。
 彼女は、マリと同じくデバフ担当らしく、
 マリと一緒になって、アポロに、状態異常系の魔法をたたき込んでいる。

 その勢(いきお)いで、蝉原は、『残りの全員』を召喚した。
 『左右の目の色が違うメイド姉妹』と、
 『剣豪の渋(しぶ)オジ』と、
 『イケメンの執事』と、
 『喪服(もふく)の無口男』という濃いレパートリー。

 どいつもこいつも、超美形というだけではなく、
 全員が最強魔王以上の力を持つ、とんでもない集団。

 けれど、アポロは、
 そんな、『蝉原と愉快(ゆかい)な仲間たち』を見て、

「殺しきれる!! 絶死(ぜっし)と暴露(ばくろ)を積(つ)んだ余は、貴様らをこえている!! 邪悪なバケモノどもぉおおおお! 残らず、ここで、死ねぇえええええ! ――『異次元砲(いじげんほう)』ぉおおお!!」

 強大なビームの魔法で、蝉原たちをなぎはらうアポロ。

 最前線で『タンク』の役目をはたしている蝉原が、
 目に見えてボロボロになっていく。

 『大嫌いな蝉原』が痛めつけられるのは、
 正直言って、痛快(つうかい)だったが、

「おいおいおい……大丈夫かよ……切り札の弟子を全員召喚したってのに、めちゃくちゃおされてんじゃねぇか……」

 と、思わず、そんなことを口に出してしまった直後のことだった。





 ――センエース、君に選択肢(せんたくし)をあげるよ――





 頭の中で、あの時の『謎の声』が響いた。
 俺が、質問を投げかけるよりもはやく、
 謎の声は続けて、

 ――選択肢1。蝉原たちを見捨てるのなら、君だけ、転移の魔法で逃がしてあげる。この選択肢1をえらぶのであれば。おまけとして、特別に、『存在値が500になる指輪』をあげるよ――

 ――選択肢2。君も『絶死のアリア・ギアス』を積(つ)むというのであれば、『蝉原たちを守ることができる力』をあげる。ただし、タイムリミットはアポロが死ぬまで。アポロが死ねば、君も死ぬ。この条件で、君が死んでも、蝉原は死なない。2を選ぶなら、蝉原たちを完璧に守れる――

 ――1か2でこたえて。それ以外は何も受け付けない――


「あのさ、2を選ぶメリットを教えてくれや。なんで、2を選択肢(せんたくし)にくわえた? あんた、バカなのか?」



 ――1か2でこたえて。それ以外は何も受け付けない――



「……ちっ……『タイムスリップする前』に聞きそびれた『俺が払う代償(だいしょう)』についても聞きたかったんだが……その、ムダにかたくなな態度……どうやら、相手にしてくれそうにないな……」


 ――1か2でこたえて――


「うるせぇなぁ」

 つい、イライラしつつ、
 俺は、蝉原たちに視線を向ける。

 とっくに、戦線(せんせん)は崩壊(ほうかい)している。
 『絶死のアリア・ギアス』というのは、
 本当にすごい効果があるらしい。

 蝉原がボコボコにされている。
 殴られて、けられて、ビームを撃たれて、
 そろそろ死にそう。

 いい気味だ。

 母さんのサイフを踏みつけたお前を、俺は許さない。
 どうせだから、苦しんで、苦しんで、そして、死ね。


 ――1か2でこたえて――


 俺も『絶死のアリア・ギアス』を使えば、
 蝉原を助けられる……か。

 ……はっ、ありえねぇー。

 なんで、俺が、蝉原のために命をかけないといけないんだ。
 こんなもん、完全一択じゃねぇか。
 『1』以外はありねえぇだろ。
 もし『2』を選ぶバカがいたら見てみてぇ。

 ――1か2でこたえて――

 うるせぇなぁ。
 だから、そんなもん、言うまでもねぇって。

 俺は、蝉原のことが嫌いなんだよ。
 『使える道具であるうち』は、ギリ生かしておこうと思ったが、
 この現状だと、あいつに価値はない。

 『ここで逃げ出す』ことで『蝉原に対する復讐(ふくしゅう)』としよう。
 そして、このファンタジー化した未来を楽しもう。
 『存在値が500になる指輪』があれば、こまることはない。

 ――1か2でこたえて――

 ……

 ……

 ――そこで、
 俺は、『酒神(さかがみ)終理(しゅうり)』に目をやった。

 あいつは、また、アポロの攻撃から、俺を守ってくれた。
 あの女は、最初からずっと、俺のことを守っていた。

 弱い俺が死なないように。
 自分の体を盾にして、
 ボロボロになりながら、
 俺を守ってくれている。

 だから、この、『凶悪な魔法が飛びかう戦場』で、
 俺みたいなザコが生きていられた。



 ――1か2でこたえて――


 ……
 ……

 俺が逃げれば、酒神は死ぬ。


 ……気付けば、アポロが、
 『最終奥義っぽい技』を放とうとしている。

 俺が逃げれば、酒神は……


 ――1か2で





「うるせぇ、『2』だぁあ! くそったれぇえええええええっ!!」







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