センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
4話 蝉原、ボッコボコ(ちょいざまぁ)!
4話 蝉原、ボッコボコ(ちょいざまぁ)!
蝉原が余裕(よゆう)を見せていると、
そこで、龍美女が、
口から出ている血を、
袖(そで)で拭(ぬぐ)いながら、
「べ、別時空の……邪悪な侵略(しんりゃく)者ども……」
ギリっと奥歯をかみしめ、
「貴様らは、絶対に殺す……この世界の『守り神』として……」
なにやら、神聖(しんせい)っぽい力を充満させていく。
「余(よ)は、龍の女神! この世界の天帝(てんてい)アポロ・テスタメント。すべての悪(あ)しきを砕(くだ)く聖なる輝き! 貴様らのような邪悪の化身(けしん)には、絶対に屈(くっ)しない!!」
名乗りをあげるアポロ。
――そのスキを、酒神(さかがみ)は見逃さなかった。
タメにタメた拳(こぶし)で、
アポロの顔面を叩き割ろうとした。
しかし、
「究極(きゅうきょく)完全体(かんぜんたい)モードッッ!」
攻撃が当たる直前、
アポロは、変身した。
グググっと、力が増していく。
より美しい姿へと覚醒。
ギラリと目を光らせて、
アポロは、
「龍撃(りゅうげき)/反譜(はんぷ)!!」
綺麗なカウンターをぶちこんできた。
「おっとぉ!」
アポロのカウンターを、ギリギリのところで回避(かいひ)した酒神は、
バックステップで、俺たちの近くまで戻ってくると、
「あのトカゲ女……パワーとスピードが、死ぬほど上昇していまちゅ……強ボスにありがちな、第二形態(だいにけいたい)ってやつでちゅかね」
そんな酒神の発言に、
蝉原がボソっと、
「ちっ……存在値が1000まで上昇しやがった……クソ鬱陶(うっとう)しいな。『かませ犬』で終わっていればいいものを……」
「ケガしたくないんで、『アルブム』と『マリ』も呼んでくだちゃい。全員でかかれば、完封(かんぷう)できるでちょう」
「……そうだな……『アルブム・カライト』、『文月(ふみつき) 真里(まり)』、召喚(しょうかん)」
蝉原がそう言うと、
周囲に、2つの魔方陣が出現する。
そして、召喚される、蝉原の弟子二人。
一人は、ナース服を着ている『柔らかな雰囲気の美女』で、
一人は、ミニスカポリスみたいな恰好のクールビューティー。
蝉原の話が事実なら、二人とも、ただ美形というだけではなく、
どちらとも、『魔王以上の力』を持つ、とんでもない化け物。
どう見ても、そんな強いようには見えないんだけどねぇ……
まあ、それは酒神も同じだけど。
なんて思っていると、
そこで、蝉原が、ボソっと、
「センくん……おれたちに命令してくれ。あのトカゲをたたきつぶせ、と」
バキバキっとユビの関節をならしながら、舌なめずりをする蝉原。
暴力をふるいたくて、うずうずしているのが見てとれた。
別に俺の命令を待たなくとも『自発的に闘うこと』もできるのだろうけど、
一応、体裁(ていさい)を保(たも)とうとしているっぽい。
その気持ちが分かったので、俺は、余計なことは言わず、
「え、あ……うん。じゃあ、よろしく」
そんな俺の『命令?』を受けて、
この場にいる俺以外の全員がいっせいに飛び出した。
見た目どおり、アルブムがヒーラーを担当し、
文月が『状態異常系のデバフ魔法』を敵にかけて、
酒神と蝉原がアタッカーをつとめる。
バランスのいいパーティで、
連携(れんけい)も見事だった。
蝉原の、
「殺神覇龍拳(さつじんはりゅうけん)!!」
『ハデなエフェクトのかかった豪快なアッパー』が、
アポロに炸裂(さくれつ)する。
ちなみに、技の名前をさけんでいるのは『カッコイイから』ではなく、
そうした方が『火力が出る』と、説明書に書いてあったから。
「ぎゃぁあああああああああああああああああああっっ!!」
白目をむいて、爆発音のような悲鳴をあげるアポロ。
その痛々しい悲鳴を聞いた蝉原は、
満面の笑みを浮かべて、
「いい声で鳴(な)くねぇ。もっとイジメたくなる」
などと、快楽(かいらく)殺人者の顔で笑う。
最初から知っていたけれど、
やっぱり、蝉原は極悪人だ。
あいつが敵だったらヤバかったな……
――などと思っていると、
そこで、アポロは、
第二形態になるだけでは飽(あ)き足らず、
「この、おぞましい『邪悪の化身(けしん)ども』さえ殺せれば、それでいい! 余の寿命(じゅみょう)を、残り15分まで圧縮(あっしゅく)する! つまりは、すべてをささげる!! だからぁああ! ありったけをぉおおお!!」
ノドがちぎれるほどに叫ぶ。
その叫びは、たんなる『覚悟の表明』ではない。
どうやら、『世界との契約(けいやく)』だったらしい。
「――絶死(ぜっし)のアリア・ギアス、発動ぉおお!」
宣言(せんげん)の直後、
『鮮血(せんけつ)のような真っ赤なオーラ』に包まれるアポロ。
アリア・ギアス。
そのシステムは、説明書に書いてあったから知っている。
『覚悟(かくご)』と引きかえに、
『望む力』を得られるようになる世界のシステム。
アポロは、さらに、
「邪悪なる者よ、ふるえるがいい! もう一段階(いちだんかい)、積(つ)んでやる!! 余の『弱点属性』は『雷』だ!! 余は雷撃に弱い!!」
と、『自分の弱点』を急に叫びだした。
その『意味』を、ここにいる全員が理解している。
説明書に書いてあったから。
おそらく、あの宣言は、
『暴露(ばくろ)のアリア・ギアス』。
『自分にとって不利な情報』を、あえて叫ぶことで、
『その覚悟』を『力』にかえる、世界との契約。
『絶死(ぜっし)』と『暴露(ばくろ)』を積(つ)んだことで、
彼女は、限界を二つ超えていく。
「――『霊甲(れいこう)・光龍闘衣(こうりゅうとうい)ランク27』!!」
『すさまじい性能の強化魔法』を使っていくアポロ。
その様子を見た蝉原が、
こめかみに脂汗(あぶらあせ)を浮かばせて、
「ランク27だとぉ?! 『ランク魔法』の上限は『25』だろぉ! なに、チートかましてんだ、このトケゲ女ぁああ!」
そこで、ヒーラーのアルブムが、
「魔法だけではありません! 存在値も『1200』にアップしています!」
これには、酒神も渋(しぶ)い顔をして、
「ふざけてまちゅねぇ……なにもかもチートじゃないでちゅか」
続けて、デバフ担当のマリが、
「……状態異常系の魔法が通りづらくなった。あのトカゲ、耐性値(たいせいち)も、ものすごく上がっている」
そこで、蝉原が、
「くそったれぇえ! おかわりだぁ! 『ファイアゲート・デビナ・バーサキュリア』、召喚!!」
また、魔方陣から、美女が登場。
今度の美女は、 真っ赤なセーラー服を着こんだ、ピカピカの美少女。
ただ、『目のギラつき』がハンパではないので、
『かわいらしさ』というものは、ほぼほぼ感じない。
デビナは、そのギラギラした感じを強め、
腹の底から、
「めちゃくちゃピンチじゃねぇか! 血がたぎるねぇ!! かはは!!」
アドレナリン全開な感じでそう叫ぶ。
見た感じ脳筋(のうきん)っぽい……と思っていたら、
ほんとうに脳筋だった。
デビナは、ラリったような顔をして、
アポロに対して、作戦なしの神風特攻(かみかぜとっこう)をかましていく。
蝉原は、さらに、
「まだまだぁあ! 『アズライル・ノーバディ』、召喚!!」
次に召喚されたのは、
『白と黒が織(お)りなす奇抜(きばつ)なドレス』に身を包む美女。
「なんか、めちゃくちゃ、めんどいコトになっとんなぁ。ウチ、こういう、ヤバ気(げ)な展開とか嫌いなんやけど」
ダウナーな感じで、魔法を連発するアズライル。
彼女は、マリと同じくデバフ担当らしく、
マリと一緒になって、アポロに、状態異常系の魔法をたたき込んでいる。
その勢(いきお)いで、蝉原は、『残りの全員』を召喚した。
『左右の目の色が違うメイド姉妹』と、
『剣豪の渋(しぶ)オジ』と、
『イケメンの執事』と、
『喪服(もふく)の無口男』という濃いレパートリー。
どいつもこいつも、超美形というだけではなく、
全員が最強魔王以上の力を持つ、とんでもない集団。
けれど、アポロは、
そんな、『蝉原と愉快(ゆかい)な仲間たち』を見て、
「殺しきれる!! 絶死(ぜっし)と暴露(ばくろ)を積(つ)んだ余は、貴様らをこえている!! 邪悪なバケモノどもぉおおおお! 残らず、ここで、死ねぇえええええ! ――『異次元砲(いじげんほう)』ぉおおお!!」
強大なビームの魔法で、蝉原たちをなぎはらうアポロ。
最前線で『タンク』の役目をはたしている蝉原が、
目に見えてボロボロになっていく。
『大嫌いな蝉原』が痛めつけられるのは、
正直言って、痛快(つうかい)だったが、
「おいおいおい……大丈夫かよ……切り札の弟子を全員召喚したってのに、めちゃくちゃおされてんじゃねぇか……」
と、思わず、そんなことを口に出してしまった直後のことだった。
――センエース、君に選択肢(せんたくし)をあげるよ――
頭の中で、あの時の『謎の声』が響いた。
俺が、質問を投げかけるよりもはやく、
謎の声は続けて、
――選択肢1。蝉原たちを見捨てるのなら、君だけ、転移の魔法で逃がしてあげる。この選択肢1をえらぶのであれば。おまけとして、特別に、『存在値が500になる指輪』をあげるよ――
――選択肢2。君も『絶死のアリア・ギアス』を積(つ)むというのであれば、『蝉原たちを守ることができる力』をあげる。ただし、タイムリミットはアポロが死ぬまで。アポロが死ねば、君も死ぬ。この条件で、君が死んでも、蝉原は死なない。2を選ぶなら、蝉原たちを完璧に守れる――
――1か2でこたえて。それ以外は何も受け付けない――
「あのさ、2を選ぶメリットを教えてくれや。なんで、2を選択肢(せんたくし)にくわえた? あんた、バカなのか?」
――1か2でこたえて。それ以外は何も受け付けない――
「……ちっ……『タイムスリップする前』に聞きそびれた『俺が払う代償(だいしょう)』についても聞きたかったんだが……その、ムダにかたくなな態度……どうやら、相手にしてくれそうにないな……」
――1か2でこたえて――
「うるせぇなぁ」
つい、イライラしつつ、
俺は、蝉原たちに視線を向ける。
とっくに、戦線(せんせん)は崩壊(ほうかい)している。
『絶死のアリア・ギアス』というのは、
本当にすごい効果があるらしい。
蝉原がボコボコにされている。
殴られて、けられて、ビームを撃たれて、
そろそろ死にそう。
いい気味だ。
母さんのサイフを踏みつけたお前を、俺は許さない。
どうせだから、苦しんで、苦しんで、そして、死ね。
――1か2でこたえて――
俺も『絶死のアリア・ギアス』を使えば、
蝉原を助けられる……か。
……はっ、ありえねぇー。
なんで、俺が、蝉原のために命をかけないといけないんだ。
こんなもん、完全一択じゃねぇか。
『1』以外はありねえぇだろ。
もし『2』を選ぶバカがいたら見てみてぇ。
――1か2でこたえて――
うるせぇなぁ。
だから、そんなもん、言うまでもねぇって。
俺は、蝉原のことが嫌いなんだよ。
『使える道具であるうち』は、ギリ生かしておこうと思ったが、
この現状だと、あいつに価値はない。
『ここで逃げ出す』ことで『蝉原に対する復讐(ふくしゅう)』としよう。
そして、このファンタジー化した未来を楽しもう。
『存在値が500になる指輪』があれば、こまることはない。
――1か2でこたえて――
……
……
――そこで、
俺は、『酒神(さかがみ)終理(しゅうり)』に目をやった。
あいつは、また、アポロの攻撃から、俺を守ってくれた。
あの女は、最初からずっと、俺のことを守っていた。
弱い俺が死なないように。
自分の体を盾にして、
ボロボロになりながら、
俺を守ってくれている。
だから、この、『凶悪な魔法が飛びかう戦場』で、
俺みたいなザコが生きていられた。
――1か2でこたえて――
……
……
俺が逃げれば、酒神は死ぬ。
……気付けば、アポロが、
『最終奥義っぽい技』を放とうとしている。
俺が逃げれば、酒神は……
――1か2で
「うるせぇ、『2』だぁあ! くそったれぇえええええええっ!!」
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