センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

1話 導入。主人公ボコボコ、そして、現世追放。


 1話 導入。主人公ボコボコ、そして、現世追放。

 俺の名前は『閃(せん) 壱番(えーす)』。
 いま、俺は、職員室で、担任と進路について話している。

「東高? ……おい、『閃(せん)』……なに言ってんだ、おまえ」

「もう『勉強するのいいかな』って思ったので、一番近いところに行きます」

「おいおい、閃……こちとら、『蝉原(せみはら)』の対応だけで手いっぱいなんだよ。頼むから、変な面倒を増やさないでくれ。中三担任の忙しさ、ナメてんじゃねぇぞ、おい」

「別にナメてませんよ。志望校をかえるだけです。……じゃあ、失礼します」

 そう言って、俺は、職員室を後にした。



 ★



 夕日をながめながら、
 ダラダラと、わたり廊下(ろうか)を歩いていると、



「――遅ぇよ、センっ!」



 鼻ピアスの金髪が近づいてきて叫ぶ。

「待たせんなよ、ボケ! つぅか、そっちから来いやぁ! ほら、集金、集金」

「……もう、勉強時間も内申点もどうでもいいから、金は払わない」

「あぁ?!」

「お前らの相手をするのはムダだから、月に千円でいいならそっちの方が楽だと思っただけ。『東』なら、受験当日まで寝ていても秒で受かる……だから、もう金は払わない」

「……あのなぁ、セェェンっ!」

 金髪は巻き舌で、ギリギリと歯を鳴らしながら、

「そういう、『気合いを見せる系』とか、マジで、いいからぁ! こっちは、今日中に、あと『17人』もまわらないと――」



「殺す気でこいよ、気室(きむろ)」



「……はぁ?!」

「死ぬまで抵抗するから、やるなら『殺す気でこい』って言ってんの」

「うぅわ、なんだ、こいつ……うっざぁ……なんかヤンキー漫画にでもハマってんのか? 鬼うぜぇえ……」

 俺は、気室(きむろ)をにらみ、さめた目のまま言う。

「俺は病院で、お前は少年院ってところか……まあ、そのくらいのオチがつけば、『蝉原』もメンドくさがって、俺をシカトするだろう」

 カバンを放り投げて、俺は、ギュギュっと拳(こぶし)をにぎりしめる。
 人を殴ったことはない。
 ケンカするような友達とか一人もいねぇ。

 なぜなら、俺は孤高(ここう)だから。

「気室(きむろ)、心配するな。勝てるとは思っちゃいない。ただ、見せるだけさ。『このカモは面倒くさい』ってところを」

「勘弁してくれよ。……『蝉原(せみはら)さん』に怒られるの俺なんだぞ。あの人の『マジのヤバさ』くらい、ほとんど関わりのないお前だって知ってんだろ。……ふざけんなよ、マジで……たかが月に千円だぞ。なんのためにその額(がく)にしていると思ってんだよ……」

「分かっているさ。だから、抵抗するんだ。蝉原はバカじゃない。こっちの出方(でかた)で行動を決めるはず……だから、俺は『俺のウザさ』をみせつける」

 俺は、気室(きむろ)を強くにらみ、

「今まで大人しく従(したが)っていたから気付かなかっただろ。俺は『無能のクソ陰キャ』だが……プライドだけは死ぬほど高い、ゴリゴリの厨二(ちゅうに)系男子なんだよ」



 ★



 ――5分後、

「はぁ……はぁ……」

 俺は立っていた。
 目の前には、カベにもたれかかって気絶している気室。

「はは……なんだ、見た目だけかよ、お前……ダッセェなぁ」

 思いっきり振り回した拳が、たまたま『気室のアゴ』に当たった。
 それだけで、こいつ、あっさり気絶しやがった。

「つぅか、マズイなぁ……『こっちが勝つ』ってパターンだと、蝉原も俺をシカトできねぇじゃん……ちゃんと、俺を叩き潰してくれよ、バカが……」

 口の中の血をベっと吐き出しつつ、その場にへたりこむ。
 と、そこで、



「……へぇ。面白い状況だなぁ。ねぇ、ユズ、そう思わない?」
「べつにぃ」



 『銀髪(ぎんぱつ)&日焼け肌の男』が、
 『ハデ目な美少女』を連れて、そこにいた。

 男の方は、ニタニタ笑いながら、俺を観察しているが、
 女の方は、ずっと、ダルそうにスマホをいじっていて、俺の方など見向きもしない。

「気室(きむろ)って、本当にケンカが弱いよねぇ……なあ、ユズ」
「しらない、どうでもいい」
「ははは、興味のなさがエグいね」

 その男――『蝉原(せみはら) 勇吾(ゆうご)』は、いつだって、『思いっきり裏がありそう』な『実はまったく笑っていない目』でほほえんでいる。

「少し話をしようか。えっと、きみ、名前、なんだっけ?」


「……俺、一応、お前のクラスメイトなんだけど」


「知っているよ。けど、カモの名前に興味はない。ただ、人間の名前には興味しんしん。というわけで、お名前は?」


「……閃(せん)」


「センくんね。えっと、とりあえず、サイフ、出してもらえる?」

「……」

「ああ、大丈夫、大丈夫。これで最後だから。『君じゃなきゃいけない理由』はない。だから、今後はシカトしてあげる。けど、今回は、君じゃないといけない。わかるよね、意味。ケジメってやつだよ」

「はは……ケジメねぇ……なあ、蝉原、前から聞きたかったんだが……ヤクザごっこは楽しいかい?」

「ごっこというより、練習だね。おれは確定で『そっちの道に行く』から」

 ニコォっと『今日一の笑顔』を見せて、

「宇宙一の極道(ごくどう)に、おれはなる!」


「……はは……ぁ、そう……恐いねぇ……」


「さんきゅー。恐いって言ってもらえるのが一番ささる。おれは、そのために生きているから。さて……それじゃあ、そろそろサイフ、出してくれる?」



「……イヤだ。拒否(きょひ)する」



「念を押すねぇ。まあ、いいけどさ。つかれるけど……これも仕事だから、ね、っと!」


 そう言って、蝉原は、俺の腹に右足のツマサキを入れる。


「うぐっ!!」


 め、めちゃくちゃ痛ぇ。
 的確に急所を狙ってきやがった……

「ユズも蹴(け)る?」
「そんなのに、触(ふ)れたくない」
「しんらつだねぇ」

 言いながら、蝉原は、ギュっと握った拳を、俺のみぞおちに、ドスっと入れた。

「うげぇ……」

 死ぬほど痛ぇ。
 普通に、ゲロを吐いちまった。

 そんな俺に対して、ユズが、


「きっしょ……くっさ」


 視線はスマホに固定したまま、鼻で笑った。

 そんなユズを尻目に、蝉原が、

「お金、とるけど、いい?」

「イヤだ……けど……もう、物理的な抵抗はできない」

「だよねー」

 言いながら、蝉原は、俺のスラックスからサイフを抜き取って、

「センくんは『気室(きむろ)に負けた』って事にして欲しいんだけど、いいかな? 了承(りょうしょう)してくれるなら、小銭(こぜに)は勘弁(かんべん)してあげるけど?」

「……サイフだけ……おいていってくれるなら、いくらとってもいい」

「ん? このサイフ、なんかあるの?」


「親の形見(かたみ)……『二年前に死んだ母親』がくれたもん……」


「へーそうなんだ」

 そう言うと、蝉原は、

「そりゃ」

 俺のサイフを地面に落として、ふみつけた。

「ふまれちゃったね、形見」

「……そうだな」

「怒る?」

「……ああ、怒ってる……かなり……自分でも、おどろくくらい」

「そっか。良かった。それでも立ち向かえない恐怖……それが、おれ、蝉原勇吾。よろしく、どうぞ」


「……」


「いい目するね。なんだか嬉(うれ)しいなぁ……」

 ――と、そこで、
 それまでスマホを見ていたユズが、俺に視線を向けた。

「マジでダッサ……あんたみたいなのって、生きてる価値あんの?」

「……さあな」

「ウザいんだけど、その受け答え」

 言いながら、ユズは、俺のサイフを踏みつけた。
 グリグリと、カカトで地面に押しつけてから、その足で、

「ぐぅっ」

 俺の頭をふみつける。

「あんたみたいなゴミを見ていると、イライラするんだよぉおお! 死ねよぉ、めざわりだからぁ! ダッセェ髪型のブッサイクなクソ陰キャぁあ! 生きてる価値ないんだよ、てめぇも、てめぇみたいなカスの親も、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶぅ!」

 その光景をニタニタと笑いながら見ていた蝉原が、

「あれー? ふれるのもイヤなんじゃなかったの?」

「……ムカついたから、別腹ぁああ!!」

 ユズは、ヒステリックにそう叫びながら、
 俺を、さらに、『強い目』で見下して、

「あんたさぁ……親の形見をふまれたんだから、もっと抵抗したら?」

「……抵抗か……しているさ、精一杯(せいいっぱい)……さっきからずっと、俺は『自分の感情』に抵抗している」

「ぷっ……だっさぁ……なに、今の、カッコいいの? カッコいいと思って言ったの? きっしょ、くっさ……こういうの、なんていうんだっけ? 確か、あったよね、こういうヤツを指す言葉。ねぇ、ユウゴ」

「厨二(ちゅうに)のことかな?」

「ああ、それそれ」

 そこで、ユズは、

「クソ厨二、マジで死ね! くるしんで死ね!!」

 そう言いながら、俺の顔面にけりを入れた。

 ――と、その時だった。





 ――空に『城』が出現した。





「えっ?! な、なんだ……し……城?」

 さすがに困惑している様子の蝉原。
 俺もおどろいている。

 ――『まるでラピ〇タみたいだ』
 なんて思った直後のこと、

 続けて、俺らの目の前に、
 またもや異常事態が発生。

 バリバリィっと音をたてて、
 『でっかいゲート』が出現した。

 そして、そのゲートは、
 シュゴオオっと、蝉原を吸い込もうとしはじめる。


「ちょっ……はぁあああ?! な、なんだ、これぇええ! す、吸われるっ! はぁあああ?! うそだろぉおお!」


 そう叫びながら、蝉原は、ユズを突き飛ばして、
 とにかく『自分だけは助かろう』と、
 必死になって、その場から駆(か)け出した。
 『ナゾのゲート』の『吸引力』に抵抗して、とにかく全力ダッシュ。

 しかし、


 ――くくくっ……逃げられないよ、蝉原――


 そんな声が、俺の脳内で響いた。
 その声は、俺だけではなく、
 蝉原にも聞こえていたようで、


「な、なんだぁあ! 幻聴(げんちょう)かぁ?!! 幻聴に幻覚ぅ?! なんでだ?! おれ、薬はやってねぇぞ!!」


 みっともなく悲鳴をあげて、
 とにもかくにも全力疾走。 

 『きゃあああああ!』というユズの『尋常じゃない悲鳴』が聞こえた。

 反射的に、そっちを見てみると、ユズが、『ゲート』に吸い込まれていった。


「おいおいおい……あのクソ女、吸われちまったよ……マジかよ……」


 ――その後も、『ゲート』は、
 シュゴォオオっと、蝉原を吸い込もうとする。

「う、うわぁ、ああああっ!! いやだぁああ!」

 近くの木にしがみついて、
 どうにか、吸い込まれないようにしようと必死。

 その光景を、俺は黙(だま)って見ていた。
 見ているしかなかった。
 不思議と、俺には、『ゲートの吸引力』が働いていない。
 だから、余計に意味が分からない。


 いや……あの……ほんと、なに、これ……


 ……そう思っていると、
 頭の中に声が聞こえてきた。



 ――センエース。お前に究極のチートをくれてやる――



「ち……ちーと……? てか、誰……え、これ、テレパシー? なに、この状況……」


 ――お前が手にするのは、蝉原勇吾を奴隷(どれい)化する力――


「蝉原を……奴隷……」

 ――これからお前には『170億年後の未来』にいってもらう。『蝉原のすべてを自由にできるチート』を使って、『ハイファンタジー化した未来の地球』を思うぞんぶん楽しむといい――

「ハイファンタジーを楽しむ……? え、マジ……? 俺、昔から、この『クソみたいな現実』から卒業して、異世界に行くのだけが夢だったんだけど、え、ほんとに……夢が叶う?」

 だいぶワケわからん状態だが、
 その話がガチだとしたら、
 ぶっちゃけ、すげぇ嬉しいんだが。


 ――『天の城』が出現したことで、地球には、ファンタジー世界の特権(とっけん)である『レベルアップシステム』や『魔法を使える権利』や『モンスターの自動ポップシステム』が発動した。いずれ、この星は、完全なるハイファンタジー化を遂げる。ただ、完全になじむまで、時間が必要。というわけで、『すべてが整(ととの)ったあとの未来』に行ってもらう――

 たんたんと解説(かいせつ)する謎の声。
 続けて、

 ――センエース。お前に『お前がのぞむ【理想の世界】で生きる権利』をやる。『最高のチート』も与えてやる。ただし、その対価(たいか)は払ってもらう――


「ぇ……た、対価……って……なんだ?」





 ――お前には、『??』になってもらう――





「……ぇ、なんて?! ……聞こえんかった! もう一回!」

 ――さあ、はじまりだ、センエース。今日から君の『ファンタジー冒険活劇(ぼうけんかつげき)』が幕(まく)をあける――

「ちょ、あの……まって! ほんと、聞こえなかったんだって! 俺、『何』になるって?!」

 と、そこで、蝉原の力がつきて、



「ぐぁああああああああああああっ! いやだぁああ! 助けてぇえええええええ!」



 すさまじい吸引力によって、『ゲート』の中へと吸い込まれていく。

 蝉原が消えた直後、
 急に、『ゲートの吸引力』が、俺にも牙をむく。

「ど、どわぁああ! ちょ、ちょ、まって!! 未来に行くのは良いんだけど、俺が払う対価が、何なのかだけは教え――」

 つい、反射で逃げようと努力してしまったが無意味。

 俺も、蝉原同様、あっさりと、
 『ゲート』に飲み込まれてしまった。


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