センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
94話 そこに愛はあったかい。
94話 そこに愛はあったかい。
「――『ソル』――」
「……ああ……なるほど……」
センは思い出す。
センの中に刻まれた『天童』と『才藤』が、まだ生身だった頃のラストバトル。
二つの世界の最終決戦の相手は、どっちもソルだった。
(どっちの世界も、最後は、ソルに食われていた……この世界の管理者がソルなのだとすれば、最終的には、そうなるというわけか……)
と、そこで、ヨグが、
ぽつぽつと、
「私は……ソルを知りたかった。ソルがどんな思いで、世界の管理者をしているのか……知りたいと思ってしまった。だから――」
「真・第一アルファの管理者をやってみた、と?」
「そうだ……」
「ソルさんのモノマネをやってみて、どうだった?」
「……辛いだけだった。ただひたすらに苦しいだけ」
「……だろうな。話を聞いている限りにおいて、世界の管理者って役割は、学級委員長を煮詰めたようなもの……絶対にやりたくない……」
「けれど……」
「けれど、なんだよ」
「満たされている時も、確かにあった」
「……」
「自分が創造した命に対する愛着……つまりは『子』に対する愛情……愛して、愛されて……そんな双方向性の幸福……そんなものも……あったんだ……あったんだよ、センエース……」
ヨグの痛みが伝わってきた。
『その痛み』を知っているヨグは、
『ただ数値が膨大なだけの神』ではない。
――そんな風に、センは思った。
「優しい命が無数に咲いた……生まれたばかりの赤子の、小さな手を握りしめて……『この子のためなら何でもできる』と覚悟を決めた命が連鎖して……そうやって、命は輪になって……暖かな光に包まれて、命が満たされた……そんな瞬間もあった……『親』になるということは、心底大変で、苦しくて……けど、辛いだけではなかった……満たされている豊かな瞬間が……確かにあったんだ……」
「……」
その気持ちが、センには、理解できた。
ゼノリカの王――第二~第九アルファの『親』になったセンは、
たくさんの責務を抱えて、ぶっちゃけ、死ぬほどつらいのだが、
しかし、この上ない幸福を感じる瞬間も確かにあった。
――本当に、
――あったんだよ……
「愛着というものに縛られたからこそ、痛みが増加した……そんなものなければ、何も苦しまずにすんだ」
「……」
「私はアウターゴッドだ。心などない……そう思っていた。けれど、残っていたんだ……オメガと同じだ……いや、結局のところ、みんな、そうなのかもしれない」
「俺を置いてけぼりにして、独りで勝手に納得するな。途中から難しくなりすぎている。落ち着け」
話の本質は理解できている。
けど、現状は、ニュアンスの理解だけでは足りない。
シルエットもニュアンスも肉質も、
全部、ただしく理解しておかなければいけない。
――そう思った。
「……単純な話だよ、センエース。『超常の神になる』というのは、『心を失う』ということに他ならない。心とは……バグのことだ。神になるというのは、完全なる存在になるということ。『心』という『不確定要素でいっぱいの不純物』を取り除き、完全なる個体になること。私はずっと完全な個体だった。しかし、『芽生えてしまった心』に振り回されたことで、私は、より一層強く、心の鬱陶しさを理解した。こんなものは、足枷でしかない。無駄な重荷。ただ苦しくなるだけの縛り。……けれど……」
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