センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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32話 そんなものは決まっているだろう。


 32話 そんなものは決まっているだろう。

 もし『聖典に刻まれたセンエース』が実在するのであれば、
 自分ごときが、ここまで必死になって駆けずり回る必要はなかったはずだ。
 ――と、カンツは心底から思う。

 文句が言いたいわけではない。
 潔癖ゆえの、もはや『不条理』と言ってもいい『レベルの高すぎる不満』がダダ漏れになっているだけ。

「センエースが本当に存在するなら! どうして、まだ世界は、ワシの理想通りの美しさを得ていないんだ!!」

 歯をむき出しにして、
 潔癖ゆえの狂った文句を叫ぶカンツ。

 そんな彼に、ウムルは、

「くく……どうしてって……」

 おかしそうに笑ってから、





「そんなものは決まっているだろう。私のような『化け物』を処理するのに忙しかったからさ」





「……」

 カンツは目をむいた。
 ウムルの言葉が、魂に刻まれたから。

 『アルテマウムル・シャドー』という化け物に殺されかけた。
 ――その経験を経て、はじめて、カンツは、
 センエースという王が、これまで、ずっと、
 『世界のために何をしてきてくれたのか』を知った。

 『理性』だけでは『理解できていた気になっていた部分』に、
 『本物の質量』が伴った瞬間。

 バグや愚神という怪物の話は聖典で知っていた。
 だが、知っていただけだった。

「貴様らじゃ、どうがんばっても、センエースの代理はこなせねぇ。実際、この通り、できていないだろう。いったい、他の誰にできる? 『どうあがいても勝てる気がしない壊れた化け物』が現れて、暴れ散らかした時、その処理を担えるのは、この世でたった一人。本物ヒーロー、センエースだけ。あいつは、全部を一人で背負っている。強くなることがあいつの仕事。命の壁を超えることが、あいつの最大の……というか、唯一の仕事。その仕事を全うすることだけが、あいつの責務。――だが、あいつは、それ以外もやっていた。リフレクションというアホな組織をつくって、『ゼノリカが処理しきれなかった闇の裏側』を、頑張って掃除していた」

「リフレク……聖典教を小バカにしているだけの……あのゴミ組織が……?」

 もちろん、カンツも、リフレクションが、基本的な慈善事業をしていることは知っている。
 しかし、それは、『税金対策』兼『表向きのパフォーマンス』に過ぎないと思っていた。

 それも仕方のない話。
 『実際にリフレクションで働いているメンツ』が、
 そのように認識しているのだから。

「それ以外にも、身分を偽って、お前らと共に、現場の視察を行ったりもしていた。あいつは、天上に属する数百人全員の名前を覚えているが、それはなぜだと思う? 机の上で写真を見ながら暗記したから? 魔法を使って頭にインストールしたから? 違う。一緒に仕事をしたからだ。時には支え、時には命を救い、時には励まし、そうやって、お前らと一緒に世界を安定させるための仕事をこなしていたから。だから、あいつは、お前らを知っている。天下の連中の中でも、とくによく働く連中の名前なら、あいつは覚えているぞ。あいつは頭が悪いから、さすがに全部は覚えられないがな」

「……身分を隠して……一緒に仕事……?」

 それを言われて、カンツは、一人の青年を思い出す。
 かつて、一緒に仕事をした愚連のA級武士。
 『ネス(NES)』という名前の、目つきが悪いへちゃむくれ。
 存在値は大したことなかったが、根性の入り方が異常だったので、よく覚えている。


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