センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

11話 取り返しのつかない愚かさ。


 11話 取り返しのつかない愚かさ。

 ゾメガは、

「……おそれおおくも、師は、ゼノリカを愛してくださっている――」

 平の熱量に呼応するように、
 顔面圧のギアを上げていく。
 ビリビリと、空気が震える。

「――余は、師から『師が愛するゼノリカの指揮』を任された。余にとっての敗北は『師が大事にしているゼノリカ』を『守り切れない』こと。師に託されたゼノリカを守るために出来ることはすべてやる。平熱マン。我が同胞。我が家族。余は、貴様を大切な家族として愛している。しかし、余の覚悟を愚弄することは許さない」

「ゼノリカよりも、師の命令よりも、師の命の方がはるかに大事だ! 師の命以外はどうでもいい! なぜ、それが分からない、ゾメガァアア!」

「……落ち着け、平。この真・第一アルファに転移してから、ぬしは、少々、張り詰めすぎておる」

 あまりに冷静さをかいている平の取り乱した姿を見たことで、
 逆に、冷静さの質を上げるゾメガ。

 『超上位の存在』に至ったとしても、
 『人としての本質』はなくならない。
 『テンパっているヤツを見ると冷静になる』という人間としての資質。

 ゾメガは『鎮まってきた自分の感情』と向き合いながら、

「師の命は大事じゃ。そんなことは言われなくとも分かっておる。ゼノリカは、師がいなければ存続不可能な危うい組織。組織運営という観点だけでモノを見れば、『師がいなくとも成立する組織』を目指すべきなんじゃろうが……しかし、その努力が徒労に終わることは、最初から目に見えておる。師がいなければ……センエースという絶対的な神がいなければ、これほどまで大きく清廉で高潔な組織を維持することは不可能」

 センエースが消えれば、ゼノリカは瓦解する。
 それは、もう、100%絶対に間違いない未来。
 ゼノリカにとって、センエースは、絶対必須の大黒柱。
 『生まれたばかりの赤子にとっての母親』以上に大事な存在。

 ゼノリカには『優秀な管理職』が多く存在するので、
 センがいなくなったからといって、
 『すぐに消し飛んでしまう』というわけではないだろう。
 しかし、時間の経過とともに、あちこちで、ほころびが見え始める。
 そして、いつしか、必ず崩壊する。
 間違いなく、絶対に。

 平が、まだまだ鼻息荒く、

「コトは、ゼノリカだけの話ではない! 師がいなくなるということは、この世界が光を失うということ! 誰も生きてはいけなくなる! センエースという輝きを失った世界に未来などない!」

 落ち着いてきたゾメガとは非対称的に、
 平の熱はどんどん加速していく。

「ああ! もう! こんな言い争いなど無意味! とにかく、さっさと人を集めて、師の捜索に向かう! これは命令だ! 逆らうというのであれば!」

 そこで、平は剣を抜いた。
 そして、その切っ先をゾメガに向ける。

「……逆らうというのであれば、余を殺す、と?」

「殺しはしない。強制させるだけだ。あなたは、ボクの家族であり、師が大事にしている配下の一人。その事実を忘れるほど愚かではない」

「いや、もう、取り返しがつかないほどの愚かさを、これでもかと、晒しまくっておるがのう……」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品