センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

2話 俺の名前を知っているか?


 2話 俺の名前を知っているか?

 ――3000年、18万回以上のループを繰り返したところで、
 センは、
 5月17日、初日の朝に、

「……」

 うつろな目で、


「ミレー、珍しいなぁ。あんたが遅刻してへんとか、どんな奇跡?」
「トコ。私は生まれてこの方、遅刻なんてしたことないわ」


 姦しく会話をしているK5の面々の目の前まで歩き、


「俺の名前を知っているか?」


 などと、前置きも何もなしに、そう尋ねた。

 問われたトコは、
 当たり前のように、

「……いや、知らんけど……」

 普通に引きながら、
 訝し気な目を向けてくる彼女に、
 センは、

「だよな……」

 そう言いながら、
 歪んだ笑顔で、ポロポロと涙をこぼす。

 その様が、あまりに異様だったため、
 トコは、慌てて、

「は? なんで、泣いとんの? ちょ、めっちゃ、キモいんやけど」


 席から立ち上がり、かるく距離をとる彼女に、
 センは、

「いや……さすがに、ちょっと……辛くてな……」

 涙が止まらない。
 みっともなくて、恥ずかしくて、本当に嫌なのだが、
 しかし、どうしても、止まってくれなかった。

 あまりのガチ泣きに、トコたちも、強く戸惑う。

「え、なに、マジで? なんなん?」

 さすがに、異様すぎて、心配になってきたトコ。

 センは、奥歯をかみしめて、

「……悪い……」

 そう謝ってから、教室の外に出た。

 教室を出て、人目がなくなったところで、
 屋上に瞬間移動する。

 そのまま、その場にうずくまって、

「はぁ……はぁ……あぁ……うっ……はぁあ……うっ……」

 さらに泣いた。
 涙が止まらない。
 どうやら、心のダムが壊れたみたい。
 どうしても止められない涙で、顔がぐしゃぐしゃになる。


 センは、自分の腹を殴ったり、口の中を噛んだり、
 必死になって、涙を止めようとするが、
 あふれるばかりで、まったく止まってくれない。


「晒すなよ、無様ぁ……いい加減にしろ……泣くな、みっともない、ダサい、キモい、鬱陶しい……」


 自分を叱咤する。
 いい加減にしろと叱りつける。
 けど、止まらない。

「言っただろ……ヒーロー見参って……誓った覚悟をゴミにするんじゃねぇ……」

 自分自身の誓いと向き合う。
 折れそうになる自分を魂で殴りつける。

「ヒーロー見参、ヒーロー見参、ヒーロー見参……」

 何度でも口にする。
 自分自身に刻み込もうとする。

 しかし、涙は止まってくれない。
 むしろ、あふれでてくる。

「……ダメだ……言えばいいってもんじゃねぇ」

 当たり前の真理と向き合う。
 覚悟の重さと、あらためて向き合う。


「そうじゃねぇんだ……もっと……ちゃんと……もっと……ぅぅ」


 砕けそうな心を抱きしめて、
 どうにか、こうにか、自分と向き合う。

「痛い……辛い……苦しい……死にたい……」

 本音の言葉をぶちまけて、
 その上で、

「受けとめろ、全部。全霊で。……俺をゆがませる弱さも、全部、俺のものだから……逃げずに向き合え……」

 自分自身に命令する。
 無茶を通せと無理を言う。

「たのむから……折れるな……お願いだから、折れないで……折れたくない……失いたくない……」

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