センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

・番外編 特別読み切り「正月プレイ」


 特別読み切り「正月プレイ」


「思うんだが、シューリよ……お前は、最初に出会った頃が、一番、俺に対して敬意を表していて、それ以降は、徐々に、徐々に、俺のことを嫌いになっていっているよな?」

「な、な、な、なにをばかな! いったい、なにを根拠に、そんな、ば、ば、ばかなことを!!」

「……その120%の動揺が、何よりの証拠なんだが、それ以外にも、裁判所に現物として提出できる証拠は山のようにあるぞ」

 和やかに会話をしているセンとシューリ。
 ちなみに、今は神界深層の年始。

 一年の始まりを一緒に祝うのが恒例になって、はや数百年。

 基本的に、誕生日などの記念日は一緒になって祝うのが通例。
 ただ、一日中、一緒にいるというわけではなく、
 前回のクリスマスなどは、
 前半はシューリと殺し合う半日を過ごし、
 その後の半日をシューリと過ごした。

「一番最初に会ったころは、まだ、俺に対する態度が普通というか、ましな部類だった。けど、時間がたつにつれて、どんどんひどくなって、アポロギスを倒して以降ぐらいから、その流れが凶悪に加速した。そして、ゼノリカを頼んだぐらいから、もう、お前と俺の関係は終わったと言ってもいいぐらい悪化した」

 センエースは事実を並べつつ、
 おせち料理にはしを伸ばした。

 ちなみに、このおせち料理は、
 センとシューリが一緒になってつくったもの。

「正直、俺は、お前と関係改善を望んでいる。お前は俺の大事な師匠。できれば、仲良くやっていきたい。というわけで、俺に不満があるなら、遠慮せずに言ってほしい。改善できる部分があるなら、前向きに善処していく所存だ」

 場所は、センが『シューリと過ごすためだけに創造した世界』の中心に建てられている一軒家。

 一応、豪邸に分類されるが、
 派手さはなく、
 落ち着いた雰囲気の日本家屋。

 畳が敷き詰められた居間のど真ん中。
 堀りゴタツでぬくぬくしながら、
 並んで、おせちに舌鼓。

「不満点なんか挙げだしたら、言い終わるまでに、200億ぐらいかかりまちゅ。なんで、オイちゃんが、お兄ごときに、そんなにも膨大な時間をかけなければいけないんでちゅか。いい加減にしてくだちゃい」
 
 綺麗なハシ使いで、数の子をヒョイとつまむと、
 当たり前のように、それを、センの口元にもっていく。

 センも、また、当然のように、
 アーンをうけいれ、
 もぐもぐしてから、

「あのさぁ……これまで、何万回も言ってきたし、これからも、きっと、何億回と言っていくんだろうけど……俺、なんで、お前にそんなに嫌われてんの? 俺、けっこう、がんばったよ? どのぐらい頑張ったかというと、世界最強のラスボスであるアポロギスを倒したぐらい頑張ったよ? 普通は、『素敵、抱いて』のモードに突入するのが普通じゃないかね?」

「たかが、世界最強のラスボスを倒した程度で、世界一の究極超美少女であるオイちゃんに、アーンしてもらえると思うだなんて、夢を見るにもほどがありまちゅ」

「……」

 シューリの言葉に対し、
 センは、一瞬だけ何か言いたそうな顔をしたが、
 しかし、ここはグっとこらえて、

「めちゃくちゃでかい豪褒美をよこせとは言わんけどさぁ……せめて、誘った時に、快く了承くらいしてもらいたいんだが? 毎回、毎回、何度も何度も断りやがって。鬱陶しくてしゃーねぇんだよ」

 記念日、誕生日、正月、クリスマス、
 などなど、そういう節目のたびに、
 センは、シューリを誘っているわけだが、
 シューリは、毎回、必ず断ってくる。

『なんで、オイちゃんほどの女神が、お兄みたいなチン○スのなりそこないと時間を過ごさないといけないんでちゅか。オイちゃんの中枢で、虫唾がパラパラを踊っていまちゅよ』

 毎度、毎度、ものすごい勢いで断られるのだが、
 しかし、それで折れて誘わなくなると、
 おそろしいほど不機嫌になるので、
 あきらめずに誘い続けなければいけない。

 正直、センは『め、めんどくせぇ』と、
 心底から思っているのだが、
 惚れた弱みというのはあまりにも重たい十字架で、
 センは、毎回、毎回、
 平均5~6回ほど断られながら、
 シューリと記念日を過ごしている。

「最終的には、一緒に過ごしてあげているんだから、文句をいわれる筋合いはありまちぇん。――それ、食べたいでちゅ」

 そう言いながら、シューリは、黒豆を指さした。
 センは、綺麗なハシ使いで、ヒョイっとつまんで、
 シューリの口元にもっていく。

 ――そんなこんなで甘々な食事を終えると、
 二人は、隣の部屋にうつる。

 そこは、ふかふかのソファーが設置された洋室で、
 最初にシューリがソファーに腰を掛けた

 ポンポンと、シューリが、自分のふとももを叩いたのを確認してから、センは、シューリのふとももをまくらにしてゴロンと横になる。

 シューリは、流れのまま、センの頭をなでながら、

「お兄の髪の毛、ガサガサで、キモいでちゅ。剃り上げてツルツルにしてもいいでちゅか?」

「あかんに決まっとるだろうが。スキンヘッドを悪いとは思っていないが、自分がなりたいとは一ミリも思っとらん」

「ちなみに、オイちゃんの髪は、こんなにサラサラでちゅよ」

 と言いながら、シューリは、
 ニュニュニュっと、髪の毛を、かなりのロング状態にまで伸ばす。

 いつもは、肩までの長さだが、
 今のシューリの髪は2メートルを超えている。



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 センは、その長い髪を撫でながら、

「おお……いつも思うけど、お前の髪、ほんとえぐいな……幼児の髪よりフワフワ、サラサラ……」

 つやつやで、つるつるで、きめ細かく、
 極上の輝きを放っているシューリのロングヘア。

「汚い手で、オイちゃんの髪に触らないでくだちゃい」

 などと言いながら、
 シューリは、毛先をつまんで、
 センの顔で書初(かきぞ)めをはじめる。

 サラサラァっと、5秒ほど習字にいそしんでから、

「さて、オイちゃんは、今、お兄の顔に、何と書いたでちょう! シンキングタイム!」

「今の感覚的に……おそらく、『愛してる』だな」

「ぶぶー。正解は、『ヘドで溺れそう』でちたぁ」

「人の顔面に、そんな辛タンすぎること、書かんでくれる?」 

 などと、
 一通り、食後のまったりを終えてから、

「さて、と……ここらで、一ゲームいきまちょう」

 と、シューリから勝負の提案が入った。

「勝ったら、相手に、好きなことを命令できるという条件でどうでちゅか? え、破格の条件すぎて泣きそう? まったく、お兄は、相変わらず、オイちゃんのこと、好きすぎるんだからぁ」 

「なんも言っとらんがな、なんも言っとらんがな」

 大事なことなので、二回言ってから、

「で? なんのゲームするんだ? まさか、無限将棋とか言わんだろうな。言っておくけど、俺、あれ、死ぬほど苦手だから、絶対にやらんぞ。決着つけようと思ったら年単位かかるし」

「オイちゃんがガチれば、秒で決着がつきまちゅよ。というか、このオイちゃんともあろうものが、お兄ごときと、『頭を使うテーブルゲーム』で遊ぶわけないじゃないでちゅか。オイちゃんは、幼卒相手に知的遊戯で勝負を挑むほど底意地悪くありまちぇん」

「お前の底意地は最悪だし、なにより、俺は幼卒じゃなく、中卒だ! もっといえば、高校中退だ! ここはかなり大事なところだから、絶対に忘れるな!」

「オイちゃんが、お兄のプロフィールを忘れることなんてありまちぇんよ! 身長体重略歴はもちろん、女の好みや、好きなカレーの味まで、ちゃんと完璧に把握していまちゅ!」

「全部わかった上で、俺を幼卒扱いしやがったのか! 本当に、どんだけ底意地わるいんだ、お前は!」

 また、ダラダラとイチャついてから、

 ――シューリは、パチンと指を鳴らして、
 その美しい手の中に、
 『Tアイデンティティ(トランプ)』を召喚する。

「インディアンポーカーで勝負でちゅ」

 そう言いながら、華麗にシャッフルして、
 一枚選ぶと、センにだけ数字が見えるよう額に押し当てて、
 Tアイデンティティを、センに渡す。

「無難なところだな」

 そう言いながら、センは、
 シューリから受け取ったTアイデンティティをシャッフルして、
 一枚選んでから、シューリにだけ見えるよう額にカードをあてる。

 センのカードの数字を見たシューリは、

「ああ、終わってまちゅねぇ。お兄は、ほんとに、運が悪いでちゅ」

「よく、その程度の知識で俺の師匠を語れるな。俺の運はよくも悪くもない。ここは、センエース検定の頻出問題だから忘れずに覚えておくように」

「オイちゃんと比べたら相対的に運が悪いと言わざるをえまちぇん」

「それ言い出したら、全員そうだけどな」

 そういいながら、たがいにコール。
 降りる理由がないので、サクっとゲームを進めていく。

 結果は、エースと2で、シューリの勝ちだった。

「……あれ? もしかして、ラッキー・ニルヴァーナが発動してる? あ、お前、さては、Tアイデンティティをゴスペル化させてるな?」

「いや、普通に勝っただけでちゅよ。純粋にオイちゃんが勝って、お兄が負けた。そんだけでちゅ」

「そんなまっすぐな顔で言われたら、なんも言えんがな……」

「というわけで、罰ゲェェム! 闇の罰ゲェエム!」

「闇の罰ゲームは許容してねぇ。『普通に、やらされたらイヤなこと』ぐらいで勘弁してくれ」

「それでは、オイちゃんの足を舐めなちゃい」

 そう言いながら、自分の太ももをトントンと叩くシューリ。

「……えぇ……」

 と、しんどそうな顔をするセンに、

「まさか、神の王ともあろう男が、約束をたがえるわけじゃないでちゅよね。安価は絶対という、この世のコトワリに反してはいけまちぇん」

「安価スレこそ、闇のゲームだと思う」

 などと、どうでもいい言葉を口にしてから、
 センは、

「まあ、負けたしな」

「そう、負けまちたからね」

「じゃあ、しゃーねぇわな。敗北したのが事実である以上、俺も神として、腹をくくろう。神が約束を破るわけにはいかないからな。まったく、こんなゲームを受けるんじゃなかった。あー、あー、やれやれ、まったく」

 と、丁寧に根気強い言い訳を口を並べ散らかしてから、

 センは、シューリのふとももに、優しく口をつけた。
 さすがに舐める勇気はなかったので、
 そこまでの行為にとどめた。

 鉄火場では勇気の化身になる男だが、
 こういう場での彼はマスターチキン。

 シューリは、じれったそうな顔をしているが、
 これ以上の踏み込みができるようなら、
 この二人はとっくに結婚している。

 いまだ、『熟年夫婦以上、恋人未満』という、
 謎の関係性を続けているこの二人に、
 これ以上の展開などない。

 これ以上の展開はない、と分かっているのだが、
 しかし、そのことに対して怒りを覚えるよりも強く、
 シューリは、ゾクゾクしていた。

 神の王が、自分の体に口づけしている姿を見て、
 シューリの中で、快楽物質が乱れ飛ぶ。

 全身の全てが沸騰しているよう。
 プラスの意味の鳥肌が全身に沸き立つ。

 そんな彼女の交感神経の高まりを、
 モロに触覚で感じ取ったセンは、

「こんなに鳥肌が立つほど嫌なら、無理して、足なめろとか言ってくるんじゃねぇ」

「オイちゃんは自分に厳しい探究者タイプなので、この状況になっても、もういっちょをぶち込んでいくんでちゅよ。というわけで、今度は、おいちゃんの鳥肌をなめなちゃい」

「ええかげんにせぇ」

 と言いながら、センは、シューリの足に軽めのビンタをいれる。
 決して痛みは出ないように調整しつつ。

 なんだかんだ、センは、シューリのことが大好きなので、
 決して『攻撃』は出来ない。

 『本気の殺し合いをした場合にどっちが勝つか』という問いがあったさい、センがシューリに勝てる理由は一つもない。

 なぜならば、どれだけの理由をつまれても、
 センは、シューリに攻撃できないから。
 『惚れた方が負け』を地でいくスタイル。

 ただ、これは、逆も言えるため、
 この戦闘に決着がつくことはない。

「さて、じゃあ次だ。もう一勝負。勝ち逃げは許さねぇ」

 そう言いながら、Tアイデンティティをシャッフルする。

 消化不良が表情に滲みでているシューリは、
 当然、その勝負を受けた。

 次の勝負では、
 エースとクイーンで、センが勝利。

「はい、勝ちぃ! はっはぁ! どんなもんじゃい、ぼけぇ!」

「まあ、お兄の運は、良くも悪くもありまちぇんからねぇ。負けたあとは勝つという、極めて自然で平凡な収束が起きたって感じでちゅねぇ。ま、ようするに、面白みのない凡夫である、という、それだけの話」

「……どんな状況であれ、絶対に悪態を崩さない徹底ぶり。お前は、ほんとうに、アレだな。俺を不快にさせる天才であり、かつ、俺を不快にさせるためならどんな手間暇も惜しまない努力家だな。ほんと、毎回、聞いているけど、お前、なんで、そんなに俺のこと嫌いなん? 俺、お前に、結構、尽くしてきたよ? 日常生活においてもそうだけし、極限状態でも、お前のためにアポロギスを倒したりとかさぁ。こんだけ頑張ってくれている男なんざ、そうそういないよ? もっと大事にした方がいいと思うよ? その辺、どう思う? ん?」

「え? 今、なんて言ったんでちゅか? ちょっとボーっとしてて聞いていまちぇんでした。もう一回最初から、言ってもらっていいでちゅか?」

「……もういい……」

 心底しんどそうな顔でためいきをつくセン。

 そんなセンに、シューリは、追撃していく。

「最初に出会った頃が、一番、お兄に対して敬意を表していて、それ以降は、徐々に、徐々に、オイちゃんが、お兄のことを嫌いになっていっているのではないか、という疑問を投げかけられたことまでは覚えているんでちゅけど……」

「え、そんな序盤から話、聞いてなかったの? しっかり会話できていると思っていたけど、俺の気のせいだった感じ? 食事したり、顔に髪で落書きされたり、罰ゲームありで闇のゲームをしたり、色々あったけど、その間ずっと、ボーっとして、無意識のうちに対応していたの? もはや、逆に凄くて感心するよ」

 そんなセンの文句をシカトして、
 シューリは、満面の笑みで、

「大正解! オイちゃんは、お兄のことを、年々嫌いになっていまちゅ!」

「……ああ、そうすか。もう、どんだけ嫌いになってくれてもいいから、会話の流れだけは、常識的な範囲に収めてくれない?」

「で、インディアンポーカーに勝利したお兄は、オイちゃんに、どんないやらしい命令をする気でちゅか?」

「……ほんと、こいつと会話するのつかれる……」

 と、本音をこぼしてから、
 センは、

「お前には、これまで、散々屈辱を味わわされてきた。よって、お前には、屈辱をあたえる」

「ほう……いったい、オイちゃんに、どんなことをやらせる気でちゅか? ま、まさか、結婚しろとか言うつもりじゃないでちょうね! こ、この鬼畜! 外道! 人殺し! 邪神! 変態! 下劣! 閃太陽の息子!」

「……『閃太陽の息子』って重荷は、鬼畜や人殺しって侮蔑に匹敵するレッテルなのか……俺、生まれた時から背負っているハンデが酷すぎん?」

 ため息交じりにそう言ってから、

「こんなショボいゲームで勝ったぐらいで、そこまで大それたことを望むほど、俺の常識的思考はバグってねぇ」

「ふむ。じゃあ、オイちゃんに何を望むんでちゅか?」

 そこで、センは、創造系の魔法で『耳かき』をつくると、

「耳掃除してくれ。たまに、フッってやるのも忘れるな。それが醍醐味だからな」

「なんで、おいちゃんが、お兄の汚い耳を掃除しないといけないんでちゅか」

「勝負に負けたから」

「はぁあああああああああ」

 と、全身全霊で『落胆』を表現するものの、
 しかし、シューリは、

「仕方ないでちゅねぇ。敗北したのが事実である以上、オイちゃんもも女神として、腹をくくりまちゅ。女神が約束をやぶるわけにはいきまちぇんからね。まったく、こんなゲームを受けるんじゃありまちぇんでちた。あー、あー、やれやれ、まったくぅ」

 お似合いのメンドくささを爆発させながら、
 センの耳かきを開始した。

 神の肉体なので、別に、耳の中が汚れていることはない。
 だから、これは、掃除というよりは、ただの愛撫。

 つまりは、ただの確認作業。

「きもちいいちゅか?」

「うん」

 ただただ優しいだけの、穏やかな時間が流れていく。
 コショコショと、耳の中を撫でられて、
 センの脳内麻薬が暴走する。

 ただ幸せなだけの時間を過ごしているセン。

 深い幸せをかみしめながら、センは、

「シューリ、これまでずっとありがとう。今年もよろしく」

 心から思ったことを口にした。
 そのまっすぐな想いに対し、
 シューリは、
 一度、ニコっと、天使の笑みを浮かべてから、  


「イヤでちゅ」


 軽快に、そう答えた。


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