センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

90話 後味のパンチがこみあげてきただけ。


 90話 後味のパンチがこみあげてきただけ。

「きっしょいなぁ……くそがぁ」

 センは、そう言ってから、
 トウシの『バグに噛まれた箇所』に口をあてて、
 毒を吸い出そうとする。

(うぇ…………おぇ……死にたい……)

 心底イヤだったが、
 トウシという強化パーツを失うのは致命傷なので、
 センは仕方なく、
 チューチューと、毒を吸いとる。
 おぞましい感覚。
 強い吐き気。
 これは、毒ではなく、トウシに対しての感情論。

 完全に吸い出したところで、

(ここ、『センキーの中』だから、吐き捨てるわけにもいかんのよなぁ。つぅか、そもそもにして、体外に出すのが無理っぽい……これは、センキーに刻まれたもの。トウシから俺に移すぐらいが関の山……はぁ)

 覚悟を決めて、ごくりと飲み込んだセン。
 すると、

「ああ、なるほど。これはしんどいわ。うん。一般人には耐えられないな」

 と、額に軽く脂汗を流す程度で余裕しゃくしゃくのセン。
 そんな彼を見て、トウシは、

「……お前、どうなっとるん? ソレ、めちゃめちゃしんどい毒で、ワシ、普通に死にかけたんやぞ……その毒を、丸々引き受けといて、なんで、そんな普通の顔ができんの?」

「ふふん。お前とは根性が違うからな。ヘタレのお前には理解できないだろうが、俺は、これまで、極限状態の地獄を無限に超えてきた。そんな俺からすれば、この程度は……おぇ、うぇ……げほっ」

「…………大丈夫ですか?」

「う、うるさい、ちょっと、後味のパンチがこみあげてきただけだ。もう大丈夫だと思った腹痛が再発することはよくあるだろ? あれと同じだ」

「ほな、大丈夫やないやろ。その状態は普通にゲリが腸の中で暴れ散らかしとる」

「うるさい、とにかく俺はお前よりも凄いんだ。それだけ理解できたら、とっとと、自分の作業に戻れ、ばーか、ばーか」

 そう言い捨ててから、
 センは、ヨグとの闘いに戻るため、センキーの中に溶けていった。

 そんなセンの残影を尻目に、

(あまりバグらせすぎると、手痛いしっぺ返しをくらう……か。厄介な話やな……)

 そうつぶやきつつ、作業に戻り、

(すでに、重要なバグはぶちこんだ……あとは、このまま実行して、プラチナムを7に変えて……)

 と、そこで、


 ――っっっ?!


 『センキー』の『全身』に、強烈な衝撃が走った。
 当然、『センキー』の『中』にいるトウシにも強い影響が出る。


(――あ、こら、あかんなっ……ヨグから、えぐい攻撃をくらったっぽい……おい、センキー、大丈夫か?)


 自分の中のトウシに心配されたセンキーは、

「うっせぇ、ぼけ……てめぇは、黙って仕事してろ」

 そうつぶやきながら、
 どうにかこうにか立ち上がる。

 ありていに言えば、ヨグの異次元砲をじかにくらってしまった。
 それまでは、どうにか避けていたのだが、
 『センの部分』が『虫』に気をとられたことで、
 運動系統が散漫になって、
 ヨグの一撃を回避しきれなくなってしまった。

 すべてが悪循環の坩堝(るつぼ)。
 うまくいかないときは、なぜだか、とことん、不幸が美しく重なる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品