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27話 超えられない障壁。


 27話 超えられない障壁。

(むちゃくちゃしすぎて、コスモゾーンがバグったか……? バックアップデータが破損したか……アカシックレコードのメモリフラグがイカれたか……キャンセルの処理が追っつかんようになったか……それとも、単なるデバッグミスか……あるいは、そもそもの仕様か……)

 答えを模索してみるが、

(……仮説はいくつか浮かぶけど、情報不足すぎて、決定打には至らん……というか、そこが明瞭になったところで、ロイガーを殺せるわけではないやろうから、今はどうでもええ)

 という結論にいたったため、
 『なぜ、この時点のスマホに、ニューラルネットワーク補助アプリがダウンロードされているのか?』
 という疑問は、一旦凍結されることとなった。

(とにもかくにも、今、考えなあかんことは、今夜までに、ロイガーを殺す手段を見つけ出すこと……実力差を考えれば、まともにやっても、絶対に勝てん……なにか、とびっきりのウルトラⅭをかますしかない……)

 そこで、トウシは、
 ニューラルネットワーク補助アプリをフル稼働させて、
 『未来につながる力』を追求する。

 最初に行ったのは、

(まずは情報……今のワシは、このアプリに関する情報がとぼしすぎる。唯一にして最大の切り札に関する情報が不足しとるとか、普通に考えてありえへん)

 常人をベースにした場合、
 トウシは、すでに、異常なほど、このアプリに関して詳しいが、
 しかし、『未来を勝ち取る』という前提条件をベースにした場合、
 トウシは、無知に等しいと言っても過言ではない。

(疑似携帯ドラゴンを経由して、コスモゾーンの領域外管理区域――『アカシックレコード』にアクセスする……『アリア・ギアス超えられない障壁』が鬱陶しいけど、これだけ複雑なシステムなら、想定外の穴は確実に存在する。神様のパラドクスを追及。なかなかイカれた行為やけど、ワシならできる)

 心の中で、覚悟を口にする。

 『これは、自分にしか出来ない不可能である』という発言は、
 いつだって、『どこまでの覚悟』を決めて口にしているか、
 それだけが重要な、いわゆる一つの『掛け声』である。

 どこぞの名医が『私、失敗しないので』と口にするのと、系統的には同じ。

(アカシックレコードは、異常なほど強大で堅牢なサーバー。せやけど、コスモゾーンというOSにガッツリと依存しとる。脆弱さのパターンを一つ見つければ突破できる。携帯ドラゴンを使えば、経路を模索するだけでええ。あとは、空白部分のDCSポートを発見できれば、侵入することも不可能ではない。最悪、侵入できんでも、ウェルノウンポートを流れるキュビットコールを盗聴すれば、必要なデータの入手は出来んこともないやろう。その流れで突破パターンを発見できるという可能性もあるし)

 心の中で、そんなことをつぶやきつつ、
 トウシは、アカシックレコードのシステム管理機構に対して、
 ポートスキャンをしかけていく。

 トウシが全力を出せば、

(はい、発見……さすがワシ、基本的に、頭だけやのうて、運もええ)

 アッサリと発見できる。
 が、もちろん、

(おっと……迎撃システムが発動してもうたか……もしかして、ワナやったんかな……いや、これは違うな……不特定パターンの異物に対する自動迎撃……反射の白血球捕食みたいなもん……なら、周囲のISL波形と同調……カメレオン化して潜伏すれば余裕でごまかせる)

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