センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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45話 あれは嘘だと言ったが、それは嘘だ。


 45話 あれは嘘だと言ったが、それは嘘だ。

 ――20年という月日を積んだことで、
 センは、ようやく、この無敵バリアとの向き合い方を知った。

 この『歩み』が必要だった。
 下らない閉塞に風穴を開ける力。

 センは、

「龍閃崩拳っっ!!」

 全身全霊の拳で、
 ソルの無敵バリアを砕き切る。

 そのままの勢いで、

「ぶっはぁああああああああああああああっっっ!!」

 ソルの顔面にたたきつけた拳。

 風穴をブチ開ける。
 イカれた積み重ねの結晶を顔面にくらって陥没。

 顔面だけではなく、
 全身が砕け散ったソル。

 ――その様子を見たセンは、

「……はぁ……はぁ……」

 なんどか、呼吸を整えてから、

「……なんつーか……手ごたえが薄い……これも、しょせんは分体……みたいな感じか?」

 そうつぶやくと、
 ヨグシャドーが、

「だいぶ理解が深まってきたな。まさに、そのとおり」

「……はぁああ……くそがぁ……」

 ため息をつくセンに、
 ヨグシャドーは、

「今回も一撃で決めてしまったな。貴様は成長している」

「こんだけ、色々と積んできて、まったく成長していなかったら、それは、もはや、才能がないとかじゃねぇ」

「表面の成長だけではなく、中心も成長していると言っているのだ。積み重ねてきた時間を考えると、だいぶ微妙な仕上がりと言えなくもないが、しかし、積み重ねた時間が、規格外に膨大であるため、相対的には微妙でも、絶対的な評価では破格。貴様の異常性はすさまじい」

「褒めてくれてありがとよ。嬉しくて涙が出るぜ」

 からっぽの言葉をつぶやくセンに、
 ヨグシャドーは、

「……しかし、まだだ。まだ足りない」

「知っているよ。だから、銀の鍵をつかって――」



「いや、もう、その段階ではない。もちろん、それも、まだ必要なのだが、今、この瞬間に必要なのは、回数ではない」



「……何を言って……」

「何十年も前の話になるが……K5の面々と肉体関係にならないと私の本体が召喚される、と言ったのを憶えているか?」

「ああ。なかなかしんどい地獄だったから、まだ忘れてねぇよ。結果的に『あれは嘘だ』と締めくくられたのも全部、キッチリと憶えている。で、それがなんだ?」

「あれは嘘だと言ったが、それは嘘だ」

「……ん?」

「ようするに、私は嘘をついていない。裏の裏は表だ」

「……な、なにを……」

「貴様は、童貞を捨てられなかった。童貞も捨てられない滑稽な男に、世界を守る資格などない。これより、無様極まりない貴様を粛清する」

「……な、なんで、非モテの陰キャってだけで、神から罰を受けなきゃならんのだ……理不尽もここまでいくと芸術的だな、おい」

 そんなセンの文句は、
 ビキビキという世界が割れるような音にかき消された。

 空がひび割れて、
 その奥に、まがまがしいジオメトリが見えた。

「おいおいおいおい……ちょっと、ちょっと……え、なに、あのヤバそうな……」



「刮目するがいい。貴様は『虚空の王』の前にいる」



 ヒビわれた空はカケラとなって、
 歪な天使の階段を空に刻んだ。

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