センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

37話 ヒーローが頭悪い職業だってことぐらい、みんなわかっている。


 37話 ヒーローが頭悪い職業だってことぐらい、みんなわかっている。

「この世には、無数の、『きつい仕事』があるが、しかし、その中でも最底辺に位置するのがヒーローって職業だと思う。思うっていうか、事実だろ。こんなに割の合わない仕事は他にねぇ」

 そこで、センは、ギュっと奥歯をかみしめて、

「絶対にやりたくねぇ……やりたく……」

 頭の中で、グルグル、グルグルと、色々なことを考えた上で、

 グっと、顎を上げて、
 まっすぐに、世界を睨みつけて、



「ヒーロー見参」



 あらためて、センは、宣言する。
 センは、何も知らずに憧れを口にしているわけではない。
 自分が、今、どれだけの面倒を抱えているのか、
 全部、わかった上で、
 全部、承知の上で、

 それでも、センは、ヒーローを騙る。

 そんなセンの言動に対し、
 クルルーは、

「……愚か極まる」

 素直な感想を口にした。
 心の底から思った本音。

 そんな本音に対し、センは、

「俺もそう思うよ」

 心の底から思った本音で返していく。
 お互いに、全て、正しく理解している。

 愚かしさの結晶。
 この上なく頭が悪い。


「閃拳っっ!!」


 ウザったい感情論を振り切るように、
 センは渾身の拳を突き出した。

 必死になって磨いてきた拳は、
 センの想いを受け止める。

「っ」

 クルルーの顔面スレスレをかすめていった閃拳。
 クルルーは、

「ステータスの数値を考えれば、ありえない威力の拳」

 センの拳は、いつだってバカみたいに重い。
 徹底的に研ぎ澄まされた愚者の拳は、
 賢者の英知を置き去りにしていく。

「貴様は異常だ。何もかもが」

 そこで、クルルーは、
 センエースに対して、本気のカウンターをぶちこんでいく。

 遊びのジャブではなく、
 命を刈り取るストレート。

 そんなクルルーの拳に対し、

「……見えたっ」

 センは、呼吸を合わせていく。
 積み重ねてきた武が、クルルーを捉える。
 完全に見えたわけではないが、
 しかし、軌道だけは確かに感じ取れた。

「神速閃拳っ!!」

 カウンターにカウンターを合わせていく無茶なゴリ押し。

 その拳は、クルルーの腹部を正確にとらえた。

「うぶっ……」

 神速閃拳は、速度重視で火力が微妙。
 ゆえに、大したダメージは通っていない。

 だが、初のクリティカルヒット。
 それは、すなわち、
 センの武は、クルルーに対して無意味ではないという証明。

 まともな一撃をくらってしまったクルルーは、
 冷や汗を流しながら、

「ほとほと呆れかえるな。貴様はおかしい」

 思ったことを、素直に口にするクルルー。

「ヒーローか……」

 しみじみと、

「……ヒーローねぇ」

 そう声に出してから、

「私には理解できない概念だ……というより、理解したくない概念といった方が正確か」

 そう言い捨てると、
 クルルーは、オーラを膨らませた。

 とても静かな覇気だった。
 音を平伏させる暴力的な静寂さ。

 その奥で、クルルーは、
 深い魔力を練り上げていく。

 深く、深く、どこまでも深く。
 海をおもわせる壮大さ、荘厳さ。


「――異次元砲」


 一点集中の照射。
 美しい魔力の結晶。

 その膨大なエネルギー量は、
 今のセンに対応できる数値を超えていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品