センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

30話 全身全霊で放つ渾身のボケ。


 30話 全身全霊で放つ渾身のボケ。

「あなたに……」

 とつとつと、ゆっくり、口を開く紅院。

「幾度となく救われたことを……私は、憶えている」

「……は?」

「いえ、嘘……記憶しているわけではない……けど、知っている……朧(おぼろ)げにだけれど、確かに……私は、あなたに救われた……魂ごと潰されそうなほどの地獄の底で泣きじゃくっていた時、あなたが……あなただけが、手を差し伸べてくれたことを……私の『中心』は、間違いなく知っている」

「……」

「リセットされても、全部はなくさない。なくしてやらない。絶対に」

 強い目で、センを睨む紅院。
 その目からは、燃えるような力強さを感じた。
 彼女の覚悟が伝わってくる。

「完璧に憶えておくことはできないと思う。けど、絶対に全部はなくさない。だから……」

 そこで、紅院は、ソっと、センの手に触れて、

「……お願い……」

 何をお願いされたのか、
 具体的には、言葉にしてくれなかったので、
 センは、理解していないのだが、
 しかし、なんとなくは伝わった。

 紅院が何を言わんとしていたのか。
 何を伝えたくて仕方がないのか。

(……無様な話だ……俺が、あまりにみっともないから、同情されている……『タイプの女』に、憐(あわ)れまれる……これほど情けないことはない……)

 その認識は、決してズレていない。
 確かに、同情もされている。
 しかし、それだけではない。
 そして、センも、実のところ、そのことを理解している。

 だから、

「俺は――」

 と、何かを言おうとしたところで、
 バーンッと、豪快に扉が開く音がして、
 扉の向こうから、
 茶柱を筆頭に、黒木、トコの三名が、ズカズカと、
 紅院に近づいて、

「報告は任せたけど、抜け駆けの許可はしていないにゃ」

 と、普通にキレ顔で、そうつめよった。

 茶柱の睨みに対し、紅院は、

「あんたじゃないんだから、抜け駆けなんてしないわ」

 シレっと、そっぽを向きながら、そう言った。

「ふふん……ツミカさんをガチンコで怒らせるとは、いい度胸だにゃ」

「あんたを本気で怒らせるのは面倒だから、出来れば避けたいけれど、ことこの件に関してだけは一歩も引く気はないから」

 ハッキリと宣戦布告してくる紅院に、
 茶柱は、威嚇の目を強める。

 気が強すぎる美女二人のにらみ合い。
 その間に立っているセンは気が気じゃない。

「あの……えっと……」

 一瞬、悩んだものの、しかし、覚悟を決めて、



「やめて! 俺のために争わないで!」



 と、渾身のボケをぶっこんでいく。
 この手のギャグをかますのは、恥ずかしすぎるので、本当はイヤなのだが、『実は空気が読めてしまう子』であるセンは、現状の空気に耐えきれず、危険なネタに走ってしまった。
 その結果、どうなったかというと、

「……」
「……」

 一切、状況に変化はなかった。
 両者はにらみ合いを続けたまま。
 センのセリフは、完全になかったことにされた。

 それが、何よりも辛い、ということが理解できたトコが、
 持ち前の優しさから、センに近づき、肩にポンと手をあてて、

「あたしは、まあまあオモロかったで?」

「やめて! 気を使わないで! それが一番キツいから!」


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品