センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

13話 たまには変わった一幕も。


 13話 たまには変わった一幕も。

「この先、何百回、何千回、タイムリープしようと、俺が、あんたより年下の後輩であることに変わりはない。よって、あんたは俺に敬語を使うべきではない。証明完了」

「勉強になります」

 多くの言葉を使ったが、
 しかし、結局、頑ななままの佐田倉に、
 センは、しんどそうな顔でため息をつき、



「……もう、いいや……」



 面倒くさくなったセンは、
 『佐田倉の説得』を普通に諦めて、
 食事のターンに入った。

 佐田倉が用意してくれた食事は、
 彼の見た目に沿わない繊細なフルコース。

 ナイフとフォークが用意されていたが、
 『知ったこっちゃねぇ』とばかりに、
 箸(はし)だけで片っ端から片付けていく。

 魚はポワレで、肉は鴨。
 デザートは甘さ控えめのアイスだった。

 風呂場ではムリヤリ背中を流され、
 頼んでいないパシリを勝手にこなされる。

 エアコンが汚れているとか、
 排水溝に髪の毛がたまっているとか、
 居間の電球が切れかけているとか、
 トイレの清掃が甘いとか、

 なんだかんだ、目ざとく、家の中のアラを見つけては、
 勝手に、どんどん掃除をしていく。

 そんな佐田倉に、
 センは、

「……いや、どうせ、リセットするから、掃除とかせんでいいから」

 そう言うと、
 佐田倉は、

「その考え方は、どうせ死ぬから生きる必要はない――というのと同じかと」

「えー、いや……それとは、また、違うくない?」

 好意で掃除してくれているのを、
 『ムリヤリ止める』というのもおかしな話だったので、
 センは、佐田倉の好きなようにやらせておいた。

 その結果、家はピカピカになった。

「なんで、そんなに家事が得意なの?」

「得意というより、『家事』を他人に任せる習慣がないだけです。『一般家庭では、母親が、家事の大半を担う』……という話は、よく聞きますが、ウチは、そういう家ではなかった。それだけの話ですよ、兄(あに)さん。つまり、俺は別に家事が得意なのではなく、ただ、やってきたから出来るという、それだけの話です」

 別に、そこまで『佐田倉と話したかった』というわけでもないのだが、
 一緒にいる時間が、それなりに多くあったため、
 センは、佐田倉と、色々と言葉をかわしあった。

 華族に生まれ、家の流儀に従って生き、
 『愛する女』を守るために強さを求め、
 ただひたすらにもがき続けてきた人生。

 センの人生と比べれば、当然、
 壮絶さも、絶望感も控えめだが、
 しかし、もちろん、それなりに、
 紆余曲折・波乱万丈が、
 佐田倉の人生にも、確かにあった。

 センの『性格の問題』で、
 佐田倉の『深部』に踏み込んだりはしなかったが、
 『表層』に触れるだけでも、
 佐田倉が、『必死に生きてきた』ということは理解できた。



 誰だって、必死に生きている。



 センだけではなく、
 佐田倉だって生きている。

 彼は、決して、漫画やアニメの背景に描かれるモブではない。
 親がいて、歴史を背負って、愛する人がいて、
 毎日、メシを食べて、クソして、風呂入って、眠って、
 そうやって、必死に、毎日を生きている。

 そして、いつか、自分の恋心に区切りをつけて、
 適切な相手と家族を形成するのだろう。

 自分の子供がかわいくて、
 無理して仕事を頑張って、
 くたくたになって、
 体を酷使して、
 そうして、いつか、命を終えるのだろう。

 ――そういう、一人の人間。
 頑張って生きている命の一つ。



(忘れていたわけじゃないが、あらためて思い知らされたよ。世界ってのは、どれも、記号じゃねぇ……空っぽの箱庭なんかじゃねぇんだ……)


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