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7話 ハリボテの集合体。


 7話 ハリボテの集合体。

「遺言は以上か?」

「あなたとは、ぜひ、もっとおしゃべりがしたい!」

 そんなセンのワガママを、
 アダムは、完全にシカトして、
 無慈悲に空間を駆け抜け、
 センの顔面にダイレクトアタックを決め込んでいく。

 あっさりと粉砕されるセンの頭部。
 バラバラになった血肉と骨が、
 ギュギュギュっと寄り集まって再生する。

 肉体は再生しているが、
 メンタルと気力はどんどん削れている様子で、

「え、ちょっ、まっ――マジで、殺す気?!」

 かすれた声で、
 終わらない『弱さ』をまき散らす。

「当たり前だろう。貴様らパチモンを生かしておく理由などない。仮に、貴様が、『やっかいなパチモン』ではなく、たんに、『ちょっと主上様に顔が似ているだけのボンクラ』だったとしても、貴様が、『主上様の名を騙って犯罪行為を行った』という、ありえない事実がある以上、私が貴様を許すことはありえない」

「全面的に謝罪します! つい、出来心で、『この上なく尊き神』の名前を騙ってしまったことをお詫びし、これから先は、ずっと、エンを名乗って、つつましく、生きていきます! ですので、どうか、お慈悲を――」

「弱者相手にはイキり散らし、強者相手にはこびへつらう……そんなカスは、この世界に必要ない」

「八方ふさがり! やばい! こいつ、人の話を聞く耳がない! マジで殺される!!」

 理解に届くと同時、センの胸部が、アダムの細腕に貫かれる。

「が……はっ……」

「うむ……これでも、まだ死ななさそうだな。頭をつぶしてもだめ。心臓をつぶしてもダメ。……このゴキブリは、本当に鬱陶しいな」

 ついには、ゴキブリ扱いを受けるセン。

「いや、あの……マジで……そろそろ死ぬ……オメガ虫の生命力のストックが……もう……たぶん……切れる……空気感で、なんとなく、わかる……そろそろヤバい……黄色信号の気配……だから、あの……おねがい……たすけて……」

 その命乞いに対し、
 アダムは、ひどく冷めた顔で、

「そろそろ死ぬ? それは朗報。さっさと死ね。貴様の存在は、そのすべてが、とにかく不愉快だ」

 慈悲のかけらもない声音。
 彼女の『性質』が、その一言に凝縮されていた。

 冷淡で苛烈。

 怜悧(れいり)で、聡明(そうめい)で、
 艶麗(えんれい)で、華美(かび)。

 『仁義や倫理や美的や道徳』とは無縁な超現実主義者。

 『信じた世界』だけを『魂魄の中心』に置く、
 敬虔(けいけん)の情念が、あまりにも強すぎる、
 いと美しき武の結晶。

 ――それが、神の右腕、咲き誇る絢爛『セン・アダム』。

「はしゃいだことは……謝罪する……ゼノリカに……忠誠を誓う……あんたには勝てない……よくわかった……だから……」

 どうにか、慈悲を請おうとするセンに、
 アダムは、とことん冷たい視線を向けて、

「魂魄の質は、主上様と天と地だというのに、顔だけは、ほんの少しだけ、似ていなくもない、という、貴様のその『ふざけたシルエット』が……純粋に、ハラ立つ。はやく、私の視界から完全に消えてなくなれ。めざわりの塊、うすっぺらなハリボテの集合体」

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