『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

86話 勘違いしないでよねっ!

 86話 勘違いしないでよねっ!

 2分ほど泣き続けた結果、
 どうにか落ち着いた紅院は、

「……ぁりがと……」

 小さな声で、しかし、かみしめるように、
 感謝の言葉を口にした。

「え? なんて?」

 疑似難聴系ラブコメ主人公のように、
 聞こえなかったフリをしているのではなく、
 普通に声が小さすぎて聞き取れなかった。

「……なんでもない……」

「あ、そう……うん、はい」

 紅院の中では、センに対して、
 『とうてい言葉には出来そうにない感情』であふれていた。

 感情が暴走して、
 心が爆発しそうになっている。

(命の奥が熱い……壊れそう……)

 ツァールに壊されていた時は、外側が軋んでいたが、
 今は、あの時と同じかそれ以上の勢いで、内側が軋んでいる。

 その感情の名前を、彼女は知らない。
 未経験の感情ゆえ、定義づけするのが難しい。

 と、そんな、『謎の感情』に押しつぶされそうになっていた時、
 紅院は、ふと、

「あっ……体……大丈夫?」

 『閃壱番が紅院美麗の呪いを肩代わりした』という事実とようやく向き合う。
 詳しいことは何もわかっていないが、
 しかし、状況と結果を照らし合わせれば、
 『何がどうなったのか』を想像するぐらいはできる。

 幼児化したのは体だけで、頭までは幼くなっていない。
 というか、『実際の7歳のころ』でも、そのぐらいの想像は出来た。

「あんな……『狂ったような呪い』を……私のかわりに……」

「一個、勘違いしてほしくないことは、お前を助けようとして呪いをかぶったんじゃないってこと。ここは大事なところだから、絶対に勘違いしないように。『ツンデレ式』の『勘違いしないでよねっ』じゃなく、『どうでもいい相手から告白された女子が心の中で叫ぶ式』の『勘違い、マジうぜぇ』の方だから」

「……助けようとしたんじゃないなら……じゃあ、どうして……」

「俺と一体化したナイフ――『図虚空』は、どうやら、呪いを背負うほどに強くなる性質を持っているっぽい。だから、養分として食わせてもらった。それだけ」

「……」

「俺は強くなりたい。世界最強になりたい。世界最強は、厨二系男子高校生の夢。ゆえに、当然、俺は世界最強を目指す。すべては、それだけの話。お前のことは、心底、どうだっていい」

 と、前を置いたうえで、



「だから気にするな。俺が俺のためにやったことを、他人が無駄に気にする必要はない。もっというと、俺の『あふれんばかりの自己中』を『そうではない何か』と勘違いされることが非常に不愉快。それだけの話だ、なにもかも」



 などと、頭の悪いことを言い切った。

 『これだけ言えばご理解いただけるだろう』
 とでも言いたげな『センのドヤ顔』を見て、
 紅院は、

(……こいつ……バカだ……)

 と、素直に思った。
 混じりっ気なしの実直な感想。

(このバカ、その『苦しすぎる言い訳』が通じると本気で思っている……すごい……もはや、感嘆してしまうほど頭が悪い……)

 センは、頻繁に、
 『俺は賢くないがバカじゃない』
 と口にするが、
 しかし、こういう時の発言だけを切り取ってみれば、
 間違いなく『大馬鹿野郎』である。


(どうしよう……)


 紅院は、動悸が止まらない胸を、両手で押さえて、

(情動が止まらない……)

 言葉に出来ない想いが暴走して、
 彼女の許容量をこえていく。
 ダクダクと、器からあふれて零れる。



 ――と、その時だった。



 空間の中央に、
 謎の『エアウィンドウ』が出現し、
 そのウィンドウには、
 『不気味な笑顔の仮面』をかぶった『何者か』のバストアップが表示されていた。

 その仮面野郎は、モニター越しに、

「――聞こえるか。そこにいる者よ。私の声が届いているか?」


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