『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

37話 オレサマ オマエ クウキナゲ。

 37話 オレサマ オマエ クウキナゲ。

(不思議だ……なんで、俺は、こんなにも冷静でいられるんだ……これほど奇妙な化け物を前にしていながら……しかも、『オレサマ オマエ マルカジリ』宣言をくらっているってのに……)

 センの心はシンと静まり返っていた。
 異様なほど恐怖を感じない。

 視界が、いつもより、明らかに広かった。
 平常時よりも、はるかに、周辺視野が研ぎ澄まされている。

 ――武を構えたセンに対し、
 バケモノは、

「ヘタな抵抗をしない方が、痛みなく、楽に死ねるぞ。虫ケラをいたぶる趣味はない。俺はただ、お前を食いたいだけだ」

 そんなことをつぶやいてから、
 バケモノは、センに襲い掛かってきた。

 俊敏な動きだった。
 『見えない』というほどではないが、
 一般人では反応できないレベルのムーブ。

 『シェイプアップされたクマがとびかかってきた』
 みたいなシーンを想像すれば、
 この状況が、少し理解しやすいかもしれない。

 『鋭くて強靭なバケモノ』が襲い掛かってくる。
 それほどの『恐怖』の中で、
 しかし、センは、

(……こいつの動きは、たぶん、はやい)

 スっと、最小限の動きで、
 半身になることにより、
 つかみかかってくるバケモノの腕を避けつつ、
 心の中で、

(なのに、なんで、俺の目には、こいつの動きが、バカみたいに遅く見えるのかね……)

 『心底不思議』と言いたげな顔で、そうつぶやきながら、
 センは、ソっと右足を出して、

「うおっ!!」

 バケモノをコカして、相手の重心をズラすと、
 そのズレた軸にアプローチを仕掛けていく。

 完璧なタイミングで、
 自身の両腕を、クルリと半回転。

 すると、

「だぁあああああっっ!!」

 バケモノの視界がヌギャリとゆがんだ。
 自身に起こった物理現象を『理解』するよりも遥かにはやく、

「ぶげっっ!」

 バケモノの頭は、地面にたたきつけられた。
 すさまじい衝撃により、頭蓋骨が砕かれ、脳が破裂した。

 佐田倉の時は、
 あえて『ゆっくり』と一回転させることで、
 『足から綺麗に着地させてあげた』が、
 しかし、今回は、相手の殺意に、自分の殺意を乗せて、
 しっかりと、容赦なく、最高速で叩き落とした。

「……俺を殺そうとしたんだ……だったら、殺されても、文句は言えねぇよな?」

 などと言い捨てた直後、
 センは、バケモノを投げ飛ばした自分の両手をジっと見つめる。

 先ほどの動きのさなか、
 センの頭は、一ミリも思考していなかった。
 機械的に、反射だけで、全てを成してみせた。

 だから、

「同じことをやれって言われても、絶対に出来ない……と思うんだけど……なんだろうな……絶対に『できる気がしない』はずなのに、なぜか、次も出来そうな気がする……もう、ほんと、自分で自分がわからなさすぎる……」

 自分の『謎感覚』に対して、
 首をかしげつつ、
 センは、バケモノの死体をチラ見して、

「……『バケモノに会った』という異常よりも、『バケモノを瞬殺してしまった』という現実の方が、よっぽど衝撃的という、このナゾ現状……さて、どうしたもんかね……」

 と、あらゆる不可思議に対して、
 軽くプチパニックになっていると、
 そこで、



『――ナビゲーション・グールの撃破を確認。転移のワナを発動します』



 奇妙な声が、頭の中で響いた。

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