『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

27話 無性に走りたくなる瞬間。

 27話 無性に走りたくなる瞬間。


 家に帰ってきたセンは、
 すぐさま、ランニングウェアに着替えて、
 そのまま家を飛び出した。

 玄関前でのストレッチもそこそこに、
 大きく息を吸って、足にグっと力を込める。

 アスファルトを踏みしめて、
 ダッダッダと、走り始めるセン。

 目的地などない。
 目標すらない。

「……はっ……はっ……はっ……はっ……はっ!」

 このランニングは、決して『日課』などではない。
 そもそも『トレーニング目的』というわけでもない。

 ただ、今日一日、色々あったせいで、
 なんだか『無性に走りたくなった』から、
 『何も考えずに、家を飛び出した』というだけの話。

 若者の特権。
 活力の暴走。

(……重たい体だな……)

 自分の体の重さに辟易しながら、
 センは、息を切らして、前へ、前へと進む。

(もっと、はやく動けよ……瞬間移動できるぐらい、はやく、はやくっ!!)

 心臓がドクドクと脈うつ。
 さっそく、足と頭がピリリと痛む。
 体が大量の酸素を必要としている。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、は……」

 無我夢中で、3時間ほど、
 ところどころ、ウォーキングのインターバルを交えながら、
 全部で10キロほど走ったところで、
 センは、バタリと地面に倒れこみ、

「はぁ……はぁ……」

 酸素をむさぼり、
 天を仰ぐ。

 限界まで走ったせいで、全身が痛かった。
 足の裏に激痛を感じる。
 これは、ほぼ確実に、でかいマメが両足に出来ている。

 もう、完全な夜になっていた。

 暗闇の中で、星だけが淡くチラチラとまたたいている。

 センは、そこで、
 自分の両手を見つめながら、
 佐田倉を投げ飛ばした瞬間のことを思い出す。

(とても、再現できるとは思えねぇなぁ……)

 自分で自分が理解できなかった。

 あの瞬間、自分がどう動いたのか、
 ハッキリと思い出すことすら出来ない。

(たかが10キロそこそこ走るだけで足が棒になるような、一回も武道の訓練とかしたことがない『ヒョロガリ日本代表』のセンエースさんが……どうして、あんな事出来たんだ……)

 閃壱番という高校生は、
 『テストの点はそれなりだが、運動能力に関しては下の中か、せいぜい中の下』
 という、ザ・平均的『ガリ勉くん』であり、
 とてもじゃないが、
 佐田倉のような『ゴリゴリの黒帯』を投げ飛ばせるような『柔の者』ではない。


「もしかして、俺は、柔道の父『加納治五郎』の生まれ変わりか?」


 などと、奇妙な独り言をつぶやくセン。
 どう見ても完全に変質者です。
 本当に、ありがとうございました。

「……ん?」

 と、そこで、センは、違和感に気づく。

 妙な胸騒ぎがして、
 変に心臓がしめつけられる。

 最初は、
 『急に走ったことによる体調不良か?』、
 『不整脈か? 心房細動か? 房室弁のストか?』、
 などと、心臓の機能障害を疑ったが、
 しかし、

(……なんだ、これ……この『イヤな予感』はなんだ……)

 『イヤな予感』としか言いようがないスピリチュアル全開の第六感覚。
 これは、明らかに、心臓どうこうの問題ではない。

(何かが起こる……たぶん……わからんけど……なんか、『すげぇダルいこと』が巻き起こる気がしてならねぇ)


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