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30話 この試験の結論。

 30話 この試験の結論。

(……で? ここからどうする? どうやって、この試験を終わらせる?)

(普通に勝てばいいと思うわ)

(そうしたら、ロコとゲンが退学になるけど?)

(おそらく、私たちが勝っても、退学にはならない。あの『全宮ルル』という人間は、意味のない理不尽を執行するバカではないと思われる)

(なに、それ、勘?)

(違う。事前調査で知り得た全宮ルルの人間性と、先ほどの対話で得た印象を分析した結果)

(……それ、結局、勘じゃない?)

(受け取り方によるわね)

(……僕は、うまいこと『引き分け』に持っていくことを提案するよ。ドローで、ヌルっと、まるくおさめる、というのが一番無難な気がする)

(その場合、私たちが不合格になる可能性がある)

(……それ、本気で言ってる?)

(もちろん、現状を鑑みるに、『不合格になる可能性は極めて低い』と思っているわ。おそらく、ルルは『私たちを手元に置いて、監視するつもり』でいるだろうから)

(僕もそう思う。あのオバサンは、僕たちの正体に、薄々気づいている。もちろんゼノリカの全体像をハッキリとつかめているわけじゃないだろうけど、影やシルエットぐらいは見えている気がする)

 ゼノリカは、この世界に対して、
 自らの存在を『完全なる秘匿』にしているわけではない。

 知恵者にだけは伝わるように、
 少しずつではあるが、
 情報を表に出している。

 先ほどの、アモンとIRの自己紹介もその一つ。
 ただの愚者であれば、
 『珍妙な戯言』と切り捨てるだろうが、
 聡明な知恵者であれば、
 『含みのあるメッセージ』だと気づけなくもない。

 ――アモンは続けて、

(だからこそ、引き分けにしておこうと提案している。この戦いは、ルルが、僕たちを測ろうとしているだけ。引き分けに落ち着こうが、ロコたちは退学になんかならないし、僕たちを不合格にしたりもしないよ)

(あなたの推測は正しいと思う。そこを否定する気は一切ない。けれど、引き分けの場合、『私たちが落とされる可能性』が『ゼロ』じゃなくなる。大前提として、私たちは、上から『全宮学園に潜入してこい』と命令を受けている。命令の遂行が絶対的最優先。合格が保証されていない状態で無茶はできない。――落ちる可能性が1ナノでもあるなら、引き分けには出来ない)

(百済的な考えだね。『僕ら(楽連の武士)』は違う。僕らは、命令の『本質』を考える。もちろん、積極的に命令違反をする気はないけど、状況次第では、命令の枠外にも目を向ける。組織には『言われたことを完璧に遂行できるロボット』も必要だけれど、僕は『言われた事しか出来ないロボット』になる気はない)

(視点の相違ね。けれど、別にそれでいいと思うわ。全員が同じ方向を見て動いていたら、死角から飛び込んでくる緊急事態に誰も対処できなくなる)

(で? 結論は? この場をどうする?)

(……)

 数秒間だけ悩んでから、

(ギリギリで勝ちましょう。ほぼ引き分けに見えるくらい、ギリギリの接戦に見せて勝つ。それがベストだと私は考える)

(……だね)

 お互いが『納得できる結論』に達したところで、
 アモンとIR3は、ギアを入れ替えた。


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