センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

57話 荒れ球だけで勝てるほど武の世界はぬるくない。

 57話 荒れ球だけで勝てるほど武の世界はぬるくない。

(セイバーがいねぇ……どこに――)

 姿が消えたセイバーリッチ・プチの行方を、
 高速の眼球運動で探そうとした、
 と同時、

「暴れるしか能のない愚劣な獣に……調教を施してやる。格の違いを思い知れ」

 頭上に瞬間移動していたセイバーリッチ・プチが、


「ナイトメア・ジェットニー」


 流星のような飛び膝蹴りで、
 ゲンの首をヘシ折りにかかる。


「ぶへぁっっ!!」


 白目をむいて血をはくゲン。
 頸椎に多大なる負荷がかかる。

「ふん……『無策の暴走』は、香る程度のスパイスとして活用するなら、有効な一手にもなりえなくもないが、しかし『ソレしか手がない猛獣』など、闘い方を理解している者からすれば、ただのカモだ」

 荒れ球は確かに厄介だが、
 対処方法がないわけではない。

「暴走機関車のような『制御できていない動き』にも『特有のクセ』は出る。『雑な動き』というムーブをマクロでとらえれば、点としての細かい予測は不可能でも、線でとらえるぐらいでは可能」

「ぐぷへっ……はぁ、はぁ……」

 クラクラする頭をささえて、
 ゲンは、

「て、丁寧な解説、どうも。ただ、そう言われても……今の俺には、暴走することしか出来ねぇ。数千年ほど時間をくれるのなら『汎用性のある有効な戦術』ってやつも磨いてみるところだが、今、すぐに、それを実行できるほどの武の才能が、俺にはない……」

 ゲンは、努力を積めば、ある程度は出来るようになる。
 だが、努力を積んでいなければ、基本、も出来ない。

「……中学の時に塾が一緒だった『あの天才』なら……おそらく、この状況でも、華麗に対処しちまうんだろうが……俺では無理だ……」

 言いながら、
 ゲンは、
 しかし、
 両の拳をギュっと握りしめて、

「あいつに出来て俺に出来ないことは山ほどある……」

 その前提と向き合いながら、

「けど、俺にしか出来ないことも……きっと、ある……」

 その発言に対し、
 セイバーリッチ・プチは、

「たとえば?」

 などと、煽ってくる。
 いろいろな疑問や疑念などは全部シカトで、
 まっすぐな会話で世界を進めていく。


「たとえば……」


 言いながら、ゲンは、グっと奥歯をかみしめて、



「――サイコッッジョォカァァァァアアッッ!!」



 ギィインっと、ねじりあげるような音が、
 ゲンの中で、豪快にこだまする。
 と、同時、
 全身の全てが圧縮されたような気がした。

 脳がギニィイっと、押しつぶされるかのような感覚。
 『酷い二日酔い』を数千倍~数万倍にまで強化したかのような、
 命を放棄したくなる極限の圧迫感。

 極度の脱水、低血糖、
 寝不足、自律神経症状。

 激痛と躁鬱が、体内で、無慈悲な嵐になる。

 とにかく、身体に多大な負荷を与える様々な症状が、
 いっせいに襲い掛かってきて、全力で大暴れしている。

 耐えられるわけがない精神的圧迫。
 ゆえに、


「ぶおっほぉぉお!!」


 血の混じったゲロを吐き出し、
 白目をむいてのたうちまわる。

「かかかかか、解除、解除、解除ぉおおお!」

 音速の解除。
 極限の圧迫感から解放されたゲンは、

「ぶひゅー、ぶひゅー……うえっ……おぇ……しんど……いや、しんどっ! マジか、おい! きっつぅ! むりむりむりむり!」

 脂汗にまみれながら、
 何度となく深呼吸をくりかえす。


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