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94話 ジャミの器。

 94話 ジャミの器。

「たかが『200年ちょっと』を『はるか昔』とは言わないのでは? それに、私の場合、先天的資質が優れていただけであって、実質的な戦闘力では、まだまだ師には及びません」

 『実戦形式(卑怯は敗者の戯言方式)』で殺し合った場合、
 ジャミの方が確実に強いが、
 しかし、純粋戦闘力だけで両者を見た場合、
 まだ、バンプティの方が強い。

 ※ 言うまでもなく、バンプティの『実質的潜在能力』は、
   ジャミをも大幅に超越しているワケだが、
   しかし、仮バグによるブーストがない状態だと、
   バンプティよりも、ジャミの方が、
   『出力の実数値』は遥かに高い。

「仮に、私が全ての面で師を超えたとしても、だからといって、師が師でなくなるわけではないと思われますが? 私に武を叩き込んでくださったのは、間違いなくバンプティ師匠であり、その事実が消えることはありえません」

「ぬしの器は、パメラノ猊下が丹念につくりあげたもの。私は、その器に、いくらかを注いだだけ……」

 パメラノの『徹底的英才教育』と、バンプティの『超実践的指導』、
 そして、『父であるアクバート・ニジック・J・ヤクーの背中』が、
 ジャミの下地を形成している『武の器』。

 ※ パメラノは『デバフ特化の後衛タイプ』なので、
   基本ベースが『肉体言語特化の前衛タイプ』であるジャミに対して、
   武の『超実践的』指導を施すことは出来なかった。
   パメラノも武の基礎を積んでいるので、
   もちろん『何も出来ない』というワケではないし、
   事実、最初の下地の部分はパメラノが形成した。
   が、『本格的な武』を叩き込んだのはバンプティである。
   パメラノが『亀仙〇』で、バンプティが『界〇様』だと考えれば、
   少しは、この三人の関係性が理解できるかもしれない。

「……そんなことより『敬語はやめよ』と何度も言っておるのに、学習せんアホウじゃのう。十席の私よりも、九華の頂点であるぬしの方が、立場は遥かに上なんじゃぞ」

「先と同じことを並べることになりますが……立場が変わっても、師弟関係に変化が生じるわけではないと思うのですが?」

「ぬしが『ただ、私より強くなった』というだけであったら、無礼な言葉遣いに対し、『ナメるなよ』と喝を入れるであろうが、しかし、ぬしは九華のリーダー。我ら九華十傑の絶対的まとめ役。対して、私は、末端の一戦闘員にすぎぬ。その上下関係が少しでもあいまいになれば、突発的緊急事態における命令系統に支障が出かねん。ぬしは私よりも『明確に上の立場』にある絶対的な上司。いざという時、ぬしに『特攻して死んでこい』と命じられたら、私はわずかも迷わずに死ななければならん」

「栄えあるゼノリカが『師を特攻させなければいけない』というほどの苦境に立たされることは、ほぼ確実に在りえないと断言できるのですが?」

「絶望の重さを知らぬ若造……私やぬしを虫ケラ扱いできる地獄は存在する……」

「聖典に描かれているような地獄、ですか? 確かに、あれほどの絶望を前にすれば、私も、家族に対して、特攻の命令を出さざるをえないかもしれませんね。ただ、まあ……ああいうフィクションを前提にモノを考えるというのは、少々、飛躍がすぎるとも思いますが?」


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