『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

68話 やめろ、バンプティ。

 68話 やめろ、バンプティ。


「――俺の家族を……ナメるなよ、虫ケラ」


 ただの言葉だった。
 間違いなく。

 けれど、センの言葉は、
 輝く光となって、
 バンスールの『奥』へと届く。

 言語という概念は、往々にして、頻繁に、
 『意思を伝えるツール』としての役割を見失う。

 きわめて不完全な記号体系。

 けれど、完全ではないからこそ、
 『言葉』という観念は、逆に、時折、
 『伝えようとした想い』を超える『熱』となって、
 相手の心に届くこともある。

 バンスールの中で、
 『バンプティ』は、



(――ああ、主よ……)



 打ち震えていた。
 その歓喜は底知れず、
 魂全てが震えていた。

 溺れるほどに、涙を流す命の器。

 バンプティは、己の命の象(かたち)を理解した。
 ハッキリと、
 クッキリと、

 ――だから、

「っっ?! や、やめろ、バンプティ! もうムリだ!! わかっているだろ! これ以上は破裂する! お前の器は、これ以上の可能性を許容しない!!」

 そんなバンスールの静止をシカトして、
 バンプティは、バンスールの中で、
 際限なく膨らみ続けていく。

「やめろと言っている!! 壊れる!!」

 そんな叫びを受けて、
 バンスールの中にいるバンプティは、
 小バカにしたように、
 鼻で笑い、

(――はっ。壊れるなどと、異(い)なことを。もともと、貴様は壊れたデータじゃろう――)

「データだけではなく、本体ごと壊れる! そうなれば、本当に終わりだ! 反魂も通用しない! 器の消滅は許容できない!!」

(――貴様が『どこ』に『境界線』を引いておるかなど知るか。このまま貴様の傀儡(くぐつ)で在り続けるぐらいなら、主の望みに寄り添って死んでやる――)

「ぐっ……ぬぅうう……やばい……こいつ、聞く耳が死んでやがる……ぎぃい……」

 バンプティの頑なさを理解すると、
 バンスールは、

「こ、これだけは、使いたくなかったが……」

 そう言うと、
 バンスール――『仮バグ』は自身の『意識』を、
 『自分の中』へと侵入させる。

 自分自身の魂魄の深部にもぐりこむ仮バグ。

 ――『そこ』には、
 『鎖』につながれているバンプティとスールがいた。

 バンスールという『仮初の器』の底で、
 『はりつけ』にされている二人の魂魄。

 『仮バグ』は、
 今にも『鎖』を引きちぎらんとしているバンプティの目の前に立つと、
 アイテムボックスの中から、
 一枚の魔カードを取り出して、


「禁止魔カード、使用許可要請」


 要請すると、
 どこからか、


『――許可する』


 そんな声が響いた。

 許可を受けると、

「……」

 仮バグは、一瞬だけ逡巡してから、



「――おしくらまんじゅう――」



 詠唱しながら、禁止魔カードを破り捨てる。

 破り捨てられたカードの残骸は、
 ヒラヒラと舞い落ちて、
 トプンと地面に溶けた。

 その直後の事だった。
 『バンプティ』の意識が、

「うぐっ!!」

 急激に重たくなった。
 頭のテッペンから、つま先まで、まんべんなくズシリと。

 まるで、深い海の底にテレポートしたみたいに、
 一瞬で、命の全てが重くなる。

 五感が奪われた『真っ黒な世界』で、
 バンプティは息も出来ず、
 自分の輪郭を感じることもできない。



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