センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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49話 弱さの贖罪。

 49話 弱さの贖罪。

 ひととおり、妄想を並べ終えると、
 スールは、首を横に振って、

(……妄想が過ぎるな……愚かしい……)

 自分の考えを、自分で否定する。


 ――そんなスールの視線の先で、
 カドヒトは、かるく首をまわしながら、

「さて、それじゃあ、続きをはじめようか。そろそろ五分は経過した。もう一度まわせよ、バンプティルーレット。お前の可能性は、まだ『底』に達していない。俺にはわかる。いや、本当は何もわかっちゃいないんだが、こんなところで終わられても困るから、願望も込めて『お前の魂魄はまだ可能性を残している』と根拠なく断言しておく」

「……」

「さあ、さっさとまわせ。いまさら躊躇は許さない。お前は、力を求めて『虫の異常性』に身をゆだねた。その意地は、ただの虚勢や虚仮脅しではないはずだ」

「……」

「ハンパは許さない。まわせ。まわさないのならば殺す。俺の言葉、理解したか? 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列二位バンプティ」

「……」

 バンプティは、整理しきれない頭を抱えて、
 しかし、立ち止まることも許されてはいないので、



「……まわれ……『バンプティルーレット』……」



 宣言すると、
 そこで、
 いつものルーレットが顕現した。

 カオスバンプティルーレットではなく、
 これまでの全てを積んできたバンプティルーレット。

 ――と同時に、
 頭の中に、声が響いた。

『……ギギ……おいおい、バカか、バンプティ……なぜ、カオスをまわさない』



「――弱さで壁は壊せない――」



『……真理だな。道理ともいえる。しかし、それは未来を飾る概念だ。【暴力的な今】を飾るには不十分な観念。それじゃあ、ダメだ。それじゃあ、お前は開かない』

「黙れ……体と心は支配されても……誇りだけは自由にさせん」

『ギギ……模倣(もほう)の言葉じゃ届かねぇよ』

 仮バグは、鼻で笑ってから、

『もういいや。どうしてもお前でなきゃいけない理由はねぇんだし。あとはオレがやる』

 その言葉の直後、
 バンプティの全身がグワっと熱くなった。

「ぐっ……うぐぅう!!」

 すでに『一度脆くなってしまった精神力』では、
 仮バグの侵攻には抗えない。

「待て……私は……まだ……」

 あらがう気力は残っている。
 しかし、現状、あらがう気力が残っているか否かは問題ではなかった。

「まだ……私は……」

 重要なのは前提。
 強さに飲まれ、弱さに溺れたという前提が、
 バンプティの全てを蝕んでいる。

「どうして……私は……こんなにも……」

 『それでも』と、弱い自分を殺して、絶望と向き合う力が、
 決定的に足りていない――というワケでも無いのだが、
 積んでしまった前提は覆らない。

 バンプティは受け入れなければいけない。
 己が弱さの贖罪(しょくざい)として。

『眠れ、バンプティ。オレにとって重要なのは、てめぇの【薄っぺらな我】ではなく、その【芳醇な可能性】だけだ』

「ぐぅう……ぁああああああ!」

 全身を包み込む熱は、
 驚くほど容易に、
 バンプティの意識を奪い取った。

「――ぁ……」

 フラっと、倒れそうになったその体を、
 グっと、『仮バグ』の意識が支える。
 すべてが切り替わる。

 『バンプティ(仮バグ)』は、ニィと微笑んで、



「――待たせたな。それでは、続きをはじめようか。本当の『オレ』の強さを教えてやる」



「ついには表層に出てきたか。お前の異質さも、なかなか面白い」

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