センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

30話 ふざけた運命。

 30話 ふざけた運命。

「止めろって、マジで! マジで死にそうだ! つぅか、自殺してしまいそうだ! たのむ! お願いしますっっ!」

 口調こそ、まだまだ雑だが、
 こころは完全に折れており、
 その証拠が、最後の丁寧な懇願。

 ザコーは、誰に対しても、敬語を使わない。
 アギトやテラと対峙している時でさえ、
 彼は、絶対に、本来の口調を崩さない。

 それは『不遜であるがゆえ』ではなく『自分に課しているキャラ付け』だった。
 キャラ付けというと安く聞こえるが、
 その覚悟は決して安くない。

 簡単に言えば、その覚悟は、
 『誰が相手でも絶対に媚びてやるものか』という意地。

 信念のペルソナと言い換えることも可能な、
 『ゴキのザコー』としての矜持。

 だが、ナイアの圧力を前にして、
 その矜持はあっさりと崩れた。

(ふ、ふざけやがって……ふざけやがって、ちくしょう……なんだ、この状況……なんだ、あの異常なガキは……どうなっている……なんで、こんな……)

 自分の運命を呪っていると、
 そこで、

「ん……ぅぐ……うぷっ……」

 全身をはい回るような不快感に包まれ、
 その場に倒れこむザコー。

「うぐ……なんだ……」

「ああ、ロコの龍毒がまわってきたようだな……ロコの毒をナメちゃダメだぜ、ザコー。あいつの毒魔法は超一流だ。ちょっとした処理で解毒しきれるほどヌルくねぇ。……まあ、ロコの毒に対して、ハンパな処置をほどこしたのはイグだから、お前に言うのは筋違いだし、そもそも、イグに身をゆだねたままだったら、あと数分で完全解毒も可能だったから……ま、結局のところ、悪いのは俺だな」

「……うぷ……ぐ……」

「そのままだと死ぬ。格上相手でも、毒さえ通れば勝てる可能性もあるっていうのが、ロコの強みだ。ポ〇モンでもそうだろ? レベル1のカスでも『どくどく』を使えばカンストの厨ポケを殺せる……意味がわからないって? うそつけ。本当はわかるだろ? 魂魄には残っているはずだ。ま、取り出すのは不可能だろうけど。ははは」

 などと不気味に笑いながら、
 ナイアは、ザコーに人差し指を向けて、
 親指と中指でパチンとならしながら、

「――『神の慈悲』――」

 そうつぶやくと、
 ザコーの全身が淡く光った。
 その『ついで』といった感じで、ヤマトの全身も光に包まれる。
 回復魔法を拒絶していた足が、一瞬で完全に回復した。

(あいかわらず、すごい魔法だねぇ……)

 心の中で感想をこぼしているヤマトの視線の先で、
 ザコーは、

「……かはっ……」

 深い暖かさの底に沈んでいた。

 毒による激痛や虚脱感が、
 スゥウっと和らぐ。

(なんだ、この暖かさ……この深さは……いったい……)

 困惑しているザコーに、
 『理解する余裕』を与えず、
 ナイアは、

「あと二時間ほどで完全に解毒できる。動けるようになったら、その足で、アギトのところにいって『ロコの毒がハンパなくて、暗殺には失敗しました』と伝えろ」

 たんたんと、

「俺のことを伝えるのはやめておけ。俺は表に出る気がないんだ。なぜかって? それは……陰の実力者になりたくてっ」

「……」

「そんな顔するなよ、ちょっとした『なろうギャグ』さ」

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