センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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27話 ソウルゲートが開かない。

 27話 ソウルゲートが開かない。

「100年……いや、せめて、10年あれば……」

 砕けそうなほど、奥歯をかみしめる。
 軋んでいる。
 音がこぼれる。

 時間のなさを嘆いたところで、
 現実に変化などなにもない。

 『ゲンの現実』には、なんの革命もおきやしない。

 ――イグは、そんなゲンに、


「自分に対する激しい怒り。重濁(じゅうだく)性を有する空虚感。それは、今後の貴様を磨く原動力になるだろう。貴様はおそらく、強く、大きくなる……今はまだツボミだが、いつか大きく花開く可能性。ここで貴様を殺すのはあまりに惜しい。だから、」


 そうつぶやいてから、
 スっと、ゲンの目の前でゆらいだ。

 『動いた』と認識するよりもはやく、

「……ぅ……」

 ゲンの意識は飛んでいた。
 神速の首トーン。
 延髄にクリティカルをくらって意識を失うゲン。

 あまりにもアッサリとした最後。
 何もできず、言い訳だけして、
 結果、サクっと気絶する。
 なんという無能。

 ――ドサっと倒れるゲンに背を向けて、

「遊びの時間は終わり……それでは契約を果たそうか」

 そう言いながら、ロコに右手を向ける。
 もはや、躊躇はなかった。


「異次元砲」


 さほど魔力を込めることなく、
 サラっと、高次魔法を使い、
 ロコを消滅させようとしたイグ。

 凶悪な魔力の波動が、
 空間をえぐりながら、
 ロコをさらっていた――

 と、イグが、そう認識した直後のこと。

「?!」

 ロコの生命反応が背後に移動した。
 イグが反射的に振り返ると、


「……どういう……」


 そこには、
 『気絶しているロコ』の首根っこを粗雑に掴んでいるゲンが立っていた。

 今、ロコを掴んでいるゲンは、とにかく異質だった。
 とにかく、何もかもが異質。
 うごめくような邪気を感じた。
 ゆえに、


「……ヒィ」


 ゲンから醸し出されている凶悪な雰囲気を感じ取ったイグは、
 ひきつけを起こしたようにうごけなくなった。
 両手足のマヒ、意識の硬直。

 ――そんなイグを横目に、
 ゲンは、雑にロコを放り投げると、
 コキコキっと首をまわしながら、

「どういうことかわからねぇって? だろうな。俺だって、俺をそこまで理解してねぇ。だから、お前の疑問は至極まっとうだ。まあ『まっとうだからなんだ』って話だがな」

 などと空虚な言葉を吐いてから、
 ゲン――ナイアは、
 自分の右手をジっと見つめて、

「それはそれとして……ソウルゲート……開かなかったな……一応、俺と同期したことで、内部データ的には『神』扱いになっているし、これだけ状況も整っているんだから、この辺で開く可能性もなくはないと思ったんだが……いや、まあ、ぶっちゃけた話、『時間がたりねぇとか、ぐだぐだと言い訳しだした時点』で無理だろうなぁとは思ったが……はぁ」

 溜息まじりに、

「極限状況で言い訳するようじゃあ、マジで話にならねぇ……」

 そうつぶやきつつ、

「だが、一応、イグと対峙したことで、閃拳……じゃなかった……ゲン・ワンダフォは、一段上のステージに上がった。イグを前にしても、心が折れたわけでもない……常識に照らし合わせて考えれば、それなりに破格の精神力……比べる相手が悪すぎた、といえば、それまで……なんだが、うーむ」

 頭をガシガシとかいてから、

「まあ、まだ最終判断は、保留かな……」

 自分の心の中で、何かしらのケリをつけると、
 そこで、ナイアは、イグに視線を送り、

「さて……そろそろ自己紹介でもしておこうか。俺はナイア・ゲン・フォース。ナイアさんでも、ゲンさんでも、フォースさんでも、まあ好きに呼んでくれや。もっとも、ナイアさん以外の名前で呼ばれたら、ちょいと不機嫌になるから、あまりオススメはしないがねぇ」



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