『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

26話 時間さえあれば……時間さえ……

 26話 時間さえあれば……時間さえ……

「ここは間違ってほしくないところだから、最初にちゃんと言っておく。俺は、あんたに勝てるなんて、1ミリたりとも思っちゃいない。何か『とっておきの隠し玉がある』とか『援軍が控えていて時間稼ぎをするつもりだ』とか……そういうのでもない」

「だろうな。その手の覚悟ではない。可能性に期待している目ではなく、死と向き合っている者の目。敬服にすら値する覚悟。すばらしい」

「褒めてくれてうれしいよ。……いやぁ、しかし……ほんと大きいな、あんた。尊敬するぜ」

 心底からの感想をこぼし、

「その『強さ』と、その『精神的成熟さ』があって……なのに、なぜ、人間の命令なんて聞いているんだ?」

 こちらも純粋な疑問。
 ただ聞かずにはいられなかった魂の問い。

「人間の命令など聞く気はない。さすがにそこまで異質な性質は有していない」

 そう前を置いてから、

「私は契約を『遵守したい』と考えているだけ。けっして義務付けられているわけではなく、己の覚悟を美徳ととらえ、ある種の誇りに思っている。だから、私は『交わした契約』は必ず履行する」

 全宮ルルとは、また方向性が違う。
 それは、ルールと契約の違い。
 字面上では些細な違いだが、
 当人たちにとっては大きな違い。

「まっとうだな。嫌いじゃないぜ。けど、あんたはロコを殺そうとしている。だったら、俺は絶対に引けない。俺にも俺なりの『魂魄を賭したルール』ってのがある」

 そう言ってから、
 目を閉じて、

「はぁぁ……」

 全身全霊、
 今のゲンに出来得る全ての力を込めて、
 踏み込み足に心を込めて、


「――ゲン・ワンダフォ――」


 『今のゲン』の『全て』が『一致』した。

 すべてがかみ合って、
 美しい一つになる。

 ゲンの一撃は、
 とても『その年齢・そのステータス』で可能な一手ではなかった。

 それまでに積み重ねてきた全てが、
 高次の感情によって昇華され、
 見事に花開いた。

 もちろん、まだまだ発展途上。
 ここで完成というわけではないが、
 しかし、イグという超常を前にしたことで、
 また一歩上のステージにいたった。

 そんなゲンの拳を、
 その魂全てで受け止めたイグは、

「見事だ」

 ボソっとそうつぶやいた。

「貴様の覚悟は、間違いなく、賞賛にも値する」

「……うれしいね。けど、まったく届いていない……どうしてだ……いや、わかっている……俺には、積み重ねが足りない……」

 ゲンは、そこで、奥歯をかみしめて、

「努力が足りなかったとは思わない。俺は持てる時間の全てを賭して、今日までの日々を積み重ねてきた……だから、足りなかったのは時間だ……時間さえあれば……時間さえ……」

 『無能の証』である、
 『時間さえあれば』という言い訳を口にする。

 時間を言い訳にする人間は出来が悪い。
 ――そんなことは、ゲンも知っている。

 けれど、今日にいたるまで、
 ゲンは、実際に、
 『たゆまぬ努力』を積み重ねてきた。

 一日たりともサボらずに、
 闇の中で手探りするような苦しい毎日を、
 必死になって積み重ねてきた。

 それでもイグに届かなったのは、
 『才能』がなかったからではない。

 才能を言い訳には出来ない。
 それだけはしたくないと心がわめいている。

「100年……いや、せめて、10年あれば……」

 砕けそうなほど、奥歯をかみしめる。
 軋んでいる。
 音がこぼれる。


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