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9話 チョコネコの不思議な館の不思議具合。

 9話 チョコネコの不思議な館の不思議具合。


 チョコネコの不思議な館は、かなり広大な、『持ち込み有り』&『レベルダウン無し』の『ローグ系RPG』を思い出していただければ、それがそのまま概要になるという特異な訓練施設。

 『チョコネコの不思議な館』には無数のアリア・ギアスが組み込まれている。
 まず、全宮学園Aクラス以上に在籍している者でなければ使用できない(入試期間だけ、特別に、受験生も使えるようになるという特殊条件がある)。
 そして、モンスターのランクとトラップの殺意がハンパではなく、
 躊躇も配慮もいっさいなく、本気の全力で殺しにかかってくる。
 また、この館を一度使用した者は、一週間、入館禁止となる。

 などといった複数の前提やルールがあるため、
 経験値稼ぎとしてはあまり適していない。
 あくまでも『迷宮探索系技能』や『サバイバル能力』や『危機コントロール術』等の特殊訓練を施すためのニッチな施設。

 そんな、チョコネコの不思議な館の攻略が、今回の試験内容。
 はっきり言って、今回の試験は、例年に比べ、かなり厳しい内容になっている。
 チョコネコの内部は本当に危険であり、命の保証は一切ない。

 一応、事前に『脱出用のアイテム』が配布されるが、
 トラップの殺意がエグいので、それを使う間もなく殺されることも多々ある。
 ちなみに、この館内でモンスターに殺されると、
 その瞬間、館に吸収されてしまい、蘇生は不可能となる。

 無数のトラップやモンスターをかいくぐり、
 最下層である地下10階に到達できたら合格なのだが、
 現在、在学している『Sクラス生』の中でも、
 『流石に10階までは到達できない』という者はけっこう多い。

「……マジで今年は難易度高いよなぁ」
「ああ、ハンパじゃねぇよ。勘弁してほしいぜ」

 試験が始まってから、ちょうど1分ほどが経過したところで、
 試験に参加している『二人組の受験生ウィー&ルース』が館の内部を探索しながら、

「今年の合格者は、下手したらゼロの可能性があるな」

 ウィーが額の汗をぬぐいながらそう言うと、

「いや、ゼロではないだろ。ロコ様がいるんだし」

 ルースが、サラっとそう返した。

「え、今年の試験って、ロコ様も受けてんの?」
「なんで、気づいてねぇんだよ、注意力ゼロか。……後ろの方にいただろ」

「緊張していたからなぁ……周りはいっさい見えていなかったぜ」
「まあ、ロコ様でも、チョコネコはだいぶ厳しいと思うけどなぁ。チョコネコの不思議な館っていったら、全宮学園の全訓練施設の中でも1・2を争う鬼畜訓練だって噂だし。もちろん、合格はするだろうけど、楽勝とはいかんだろうなぁ」

「五大家の人間ですら楽勝とはいかない施設……そんなもん、試験内容にすんなよなぁ……誰だよ、ここを試験会場に決めたバカ」
「全宮ルル様だよ」

「……なんて、素敵で独創的な試験内容なんだ。さすが、ルル様……」
「……」

 ウィーの鮮やかな手のひら返しに、
 相方のルースが怪訝な顔をしていると、
 そこで、

「……ん? あれ、ザコーじゃね?」

 ウィーの視線の先で、



「ゲギャァアアッッ!!」



 高位のモンスターを裏拳ワンパンで殺しながら前に進んでいるザコーを発見する。

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