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7話 決別。

 7話 決別。

「言うまでもないが、お前の脱退なんか絶対に認めないからな。ありえねぇ」

 ぶっちゃけた話、ロコの暗殺そのものに関しては、どうでもいい。
 ロコの生死など、ザコーの人生にはなんの影響もない些事(さじ)。

 あくまでもゴキの『実質的なブランド』を守ること。
 それだけが、現状におけるザコーの行動理由。

 つまり、ザコーにとって『大事』なのは、
 ゴキというアウトサイダーズそのものだということ。

 自分がリーダーで、ヤマトという戦力がいて、
 ほかにも10名ほどの超人たちが在籍している、
 超カッコイイ悪のカリスマ集団ゴキ。

 そのシステムを守るためなら、
 ザコーはなんでもする。

 ……もっとも、『最終目的』のためなら、
 実のところ、ゴキすらもかなぐり捨てることができるのだが……

「最悪、ロコを殺せなかったとしても……いや、まあ、俺が殺すと決めた以上、ロコが生き残る道なんかないんだが、それはともかく、もし、万が一、ロコを殺せなかったとしても、お前だけは絶対に連れてかえるぞ」

 ヤマトの目を見てハッキリと宣言するザコーに、
 ヤマトは、

「ロコ様の暗殺……その程度も達成できない無能なんてゴキにはいらないんじゃない?」

 そこで、ロコは、自分を軽んじるような発言をしたヤマトに『かるくムっとした表情』を向けるが、空気が読めないわけではないので、二人の会話を邪魔したりはしなかった。

 黙って、二人の話し合いを見守っている。
 どこに終着するのかと、固唾をのみながら。

 ――ヤマトの戯言に対し、『ザコー』が、面倒くさそうに、

「ヤマト、お前がワケのわからない言動をとるのは、最初から想定の範囲内だ。ワケのわからない奇行を繰り返すのも一興。俺たちは、そこも含めてクールな悪。マナーを遵守するお行儀のいい番犬ではなく、猛毒をまき散らしながら、徹底的に狂いつつ、けれど、どこか狡猾に舞う地獄の野良犬」

「はは、その表現は面白いねぇ。ザコーくんは、軽くダサイところがいいよねぇ、あはは」

 笑顔を見せるヤマト。
 別に、ヤマトは『ゴキがイヤになったから抜けた』のではない。
 そうせざるをえない理由があっただけ。
 ゆえに、

「やっぱり、嫌いじゃないなぁ。ザコーくんは、非常に面白い。他のメンバーも嫌いじゃなかった。みんな、ユニークで、独特のポリシーがあった。……できることなら、戻りたいなぁとも思うけど……まあ、でも、もう決まったことだからねぇ」

 そう言って、あらためて、ザコーとの決別を口にする。

 そんなヤマトの決意を受けて、
 ザコーは、

「……なんで、そんなに決意が固いのか知らんが、お前の決意なんか知ったこっちゃねぇ。ゴキにはお前が必要だ。絶対に脱退など認めない」

 そう言い切ってから、
 一度、浅い呼吸で間をとって、

「ちゃんと考えて答えを出せ。どっちみちロコは死ぬ。お前が殺さないというのなら、その時は、俺が殺す。絶対に殺す。お前も必ず連れてかえる」

 そう宣言すると、
 ザコーはヤマトたちに背を向けて、
 試験会場である館の中へと進んでいった。

 ――その背中を見送りつつ、ロコが、

「妙なことになったわね……」

 鬱陶しそうな顔でそうつぶやいた。

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