『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

86話 自由な円。

 86話 自由な円。

(――緊急回避。横に飛べ。体をひねれ。――間に合わない。魔力で相殺。差がありすぎる。剣で合わせる。今の技術では不可能。――不可能でもやれ。――ぃや、そういう問題じゃない。このあまりに『明瞭で不可避な死』は根性で埋められる領域じゃない)

 圧縮されていく時間。

(これは純粋で無情な数値のお話。よって、死ぬ。俺は。いやだ。まだ死ねない。なら考えろ)

 走馬灯をシカトして、
 ゲンは、

(どうにか。まだある。絶対に。残っているはず。死ぬわけにはいかない。ロコの剣になるんだ)

 高速回転の中で、
 もがき、あがく。

(俺がいないと。ロコは)

 その理由は一つ。

(――一人ぼっちになってしまう――)

 たった一つの理由が、ゲンをさらに加速させる。

 ――ゲンの全てが正しく沸騰する。
 その結果、





『《【((――オメガ……バスティオン――))】》』





 ――届く。





『《【((――円よりも柔らかな点と線で描く揺らぎ――))】》』





 『自分の深部』にたどり着くゲン。
 ゲンのコアオーラが煌々と輝く。
 荘厳な瞬き。

 その一瞬のきらめきの中で、
 ゲンは、スルリと、両手で『自由な円』を描いた。
 その様は、どこか太極拳に似ていたが、しかし、根本が違う。
 ゲンによって刻まれた『自由な円』は次元に跡を残しながら、
 命の輪郭を世界に魅せつける。

 カチリと音がした気がした。

 すべてが一致した。
 ゆえに、
 その自由な円に収まるかのように、
 八本の飛翔する斬撃が、
 渇いた音だけを残して、
 世界から影をなくす。

 パチンとマヌケな音だけが揺らぐ。

 あまりにも一瞬の出来事が過ぎた。
 誰も理解できえぬ現象。
 ゆえに、当然、アギトは、ポカンと口を開いた。

 現状がまったく理解できていない。

 数秒の静寂が流れてから、
 アギトは、おもむろに、

「……は?」

 心底からの疑問符を口にした。
 マヌケな顔で、まっすぐに、ゲンを見つめている。

(なんだ……? どうして生きている……どうして刻(きざ)まれていない……どうして死んでいない……なんでだ……どうして……無傷……ダメージ0……バカな……ありえない……なんだ、これ……どうなっている……何がどうなった……)

 混乱が止まらない。
 止まらないどころか、むしろ連鎖していく。

(私の魔法は完璧だった。完璧に発動した。なのに……あのガキに当たる直前……あのガキが何か、動いたと思ったら……消えた……そんなアホな話が……)

 ハテナがとまらない。
 その状況に陥っているのはアギトだけではなく、
 ゲンも、自分の両手を見つめながら、



(――あ? なんだ……? 俺……何した?)



 疑問符の中に沈む。
 理解不能。

(――『オメガバスティオン』ってなんだ……)

 ゲンの脳みそが熱くなっていく。

(どこかで聞いたことがある……どこだ……)

 自分の奥に潜っていく。
 記憶の海をさまよい、
 けれど、

(わからない……けれど……)

 奥底の、さらに奥底に、

(俺に何かを思い出させる……この想い……この覚悟……)

 何かをつかみかけて、
 しかし、スルリと、抜けていく。

 『ウナギみたいだな』――なんて、アホなことを思いながら……


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