『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

82話 センエースの貪欲。

 82話 センエースの貪欲。

(アギトを選べば……俺は全てを手に入れる。欲しかったもの全部が……この手に……)

 『当たり前の欲』がゲンの中でうずまく。

 『普通』であれば、
 ここで、アギトを選択するだろう。

 常識的に考えれば、誰だって、ここはアギト一択。

 ――だが、
 ゲンは、


(……本当に『全部』か?)


 『普通』ではなかった。

 ゲンの――『センエース』の『貪欲さ』を、
 ナメてはいけない。


(全部……全部というのであれば……)


 そこで、ゲンは、チラッとロコに視線を向けた。

 彼女は泰然としていた。
 まっすぐに、ゲンを見つめている。
 静けさの中に雫。
 強固な意志の奥に感じる脆さと儚さ。

「……」

 数秒の無言。
 ゲンの中で、様々な感情が巡った。

 ケタ違いの『貪欲さ』が、
 ゲンの脳みそをかきまぜる。

(ロコを切れば大金……大金を切れば死……なんだ、その不自由な二択)

 ググっと、喉の奥から、何かがこみあげてくる。
 この不快感。
 この情動。

(クソみたいな不条理で俺を縛るなよ……イラつく……ナメんじゃねぇ)

 ゲンの中の『センエース』がうずく。
 貪欲で獰猛でプライドが高いサイコパス。

 センエースの制御など、この世の誰にもできやしない。

 だから、
 結果、

(別に、『お偉いさん』から『与えられる』のを『待つ』必要なんかねぇ……)

 ぶっとんだ帰結に至る。
 常識を殺していくスタイル。

(力づくで奪い取っていけばいい……そうすれば……いや、それだけが、『本当の全部』を手に入れられる唯一の手段)

 決断すると、
 ゲンは、

「すぅ……はぁ……」

 深く息を吸って吐く。

 不自由な二択から解放されて、
 世界が大きく広がった。

(さあ……いこうか)

 こころの中でそうつぶやくと、
 ゲンは両の拳を強くにぎりしめる。

 そして、アギトに対して、静かに武を構えた。

 言葉を使わず、態度で、明確な意思を示す。

 それを受けて、アギトは、

「……なにを……している?」

 わかっている。
 伝わっている。
 ゲンの意志。
 ゲンの覚悟。

 全部、全部、わかっている。
 しかし、だからこそ、
 問わずにはいられないのだ。

「……貴様、なにをしている! なぜ、構える!」

 語気が荒くなる。
 理解ができない。

 クラっとした。
 頭が痛い。
 視界が歪んでいる。
 本当に、理解が出来ない。


「ありえないだろ! 2兆だぞ! 最上の地位もくれてやると言っている! なのに! なんで! どうしてぇ!」


 アギトの叫びに、
 ゲンが答える。



「額が足りないからですね。俺を動かしたかったら、最低でも1京円は積んでくれないと」



「……」

「もし、1京円つんでくれるのであれば、もう少しだけ悩んであげますよ。まあ、悩む時間が延びるだけで、結論に変化はないんですけどね」

「……」

 アギトは、
 ゲンの言葉を理解しようと努めた。

 何度か、心の中で反芻し、
 咀嚼し、

 深く理解すると、

「なるほど……」

 頷いて、

「……全宮ロコの剣『ゲン・フォース』……」

 言いながら、武を構えて、

「教えてやるよ……お前に」

 静かにそう言ってから、
 タンッと地を蹴った。

 静かな流動。
 よどみなくオーラが流れて、
 魔力がシンと深くたゆたう。


 超越者の武。
 王の一手。

「――ぷげらっ!」

 ゲンの顔面に浸透していく圧力。
 鼻が砕け、眼球が飛んだ。

「痛みの底を教えてやる」

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