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36話 『ゲン・フォース』VS『ギルティ・ブラッドのルス』

 36話 『ゲン・フォース』VS『ギルティ・ブラッドのルス』

(ほう……あのガキ、虹気がつかえるのか。珍しいな)

 虹気がつかえる者の割合は、10万人に一人程度と、かなりのレア。
 ただ、クオリティが低い場合、大した恩恵は得られないため、

(ガキ……お前は、どっちかな……)

 はかるような目になってしまう。

(使えるレアか、使えないレアか……)

 少し興味が出てきたのか、
 ヒジカは、前線から少し下がる。

 ヒジカの考えを察したのか、
 オキも、

(局長の息子……局長は、あの子のことを天才と言っていたが……それは、ただの親バカか、それとも……)

 剣をおさめて、ゲンの観察を開始した。

 ヒジカとオキが距離をとったのを横目に確認した変態――ギルティブラッドのルスは、

「ははは! なになに、この空気! んー? もしかして、この俺を『お子様の訓練』に使おうとか考えている?! げははははは! 面白いねぇ! 非常にナイスでクールなグッドアイディア!」

 ラリった目で、天を仰ぎ、

「けど、残念!!」

 そう言った直後、
 ルスは、空間を駆け抜けて、
 いっさい迷わずに、
 ゲンとの距離をつめ、
 ゲンの頭部をつかみ、
 そのまま!

 ――ブチィッ!!

 と、地面に向かってたたきつけた。
 砕けた骨が弾け、血しぶきが舞う。

「子供のお遊戯に付き合ってやるほど、俺の保育士適正は高くないんだなぁ!」

 子供の死に触れた感触で全身がゾクゾク。
 強い者と戦うのも楽しいが、
 弱い命を踏みにじるのも楽しい。

「命って楽しい!」

 いつまでも、どこまでもラリっているルス。
 快感に浸っていたが、
 しかし、
 その途中で気づく。

 背後の気配。
 圧力。

「っ?!」


「――ゲン・ワンダフォ――」


 一気に膨れ上がった圧力。
 凝縮されたオーラの爆発。

「うぉおおっ!!」

 腰のど真ん中に向けて放たれた、
 渾身の正拳突き!

 ゲンは、ルスの背中をバキバキにへし折るつもりで殴りつけたのだが、

「……か、かってぇ……」

 ルスは、さほどダメージを受けている様子はない。
 『驚いた声』をあげただけで、
 痛みはほとんど感じていない様子。

 ルスは、自分の背後にいるゲンを見下ろしながら、
 ニィっと微笑み、

「ほー、ほー、へー……分身だったのかぁ! どうりで潰した時の感触が『なんかちょっと軽いなぁ』と思ったはずだぁ! 『ガキだからか』と思ったら、そっちだったかぁ! げははは!」

 愉快そうに笑ってから、

「いやはや、それにしても、今の拳……なかなか良かったねぇ! もちろん、まだガキだから、軽すぎて、まったくダメージにはならんのだけど……なんだろうなぁ……」

 少しだけ真剣な表情で、

「熟練度は決して高くないし、まだまだ威力も足りていないんだけど……そう……原石感がすごかった! 磨けば光る空気感をビンビン感じた!」

 楽しそうに、
 嬉しそうに、

「まだ少し時間があるなぁ! よーし、興が乗ったことだし、ここから、ほんの少しだけ、お遊戯に付き合ってあげよう! さ、君の全力を見せてみてぇ! さあ、カモンッ!」

 両手を広げて、そう叫ぶルス。

 そんな、ルスのナメた態度を受けて、
 ゲンは、
 心底から、

(受け止めてくれるのか……ありがたいね……マジで!!)

 感謝した。

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