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27話 毒組バイト、ゲン・フォース。

 27話 毒組バイト、ゲン・フォース。

「お前は私の息子だけあって根性がある。生まれたばかりのころはかなり未熟児で、正直、心配していたんだが、毎日、トレーニングを積んだことで、ある程度は、周りの子と大差ない程度には成長してきた」

 これだけ積んでも、まだ周りの子と同等。
 それを考えると心配になる無能ぶりだが、
 『貧弱・無能だから』と腐ることなく、
 必死に毎日を積める息子を誇りに思う。

「もちろん、まだまだ、貧弱な方だが、しかし、お前は努力を続ける才能を持っている。今後も、どんどん伸びていくだろう。お前には可能性がある」

「どうも」

 『努力ができること』を褒められても、別にうれしいとは思えない。
 それは『才能さえあれば、ここまで頑張る必要はない』――という事が理解できているから。
 『努力が出来る』のは『努力をしなければいけない』からであり、
 それすなわち『才能がない』ということである。

(どれだけ努力しても天才には勝てない。ちょっとした天才くらいなら対抗することも出来なくもない……が、本物の天才には、何をしても絶対に勝てない)

 関西弁の知人を思い出しながら、
 ゲンは、軽くブルーになる。

(ま、本物の天才に勝てるか勝てないかで世界を見る気はないから、別にいいんだけどな)

 勉強に関しては、一ミリも『やりたいこと』ではなかったので、そうそうに『俺はもう戦わん』と決めたが、『今の状況』は心から望んでいた世界。
 ゆえに『どれだけ努力しても勝てない相手がいるから』といって投げ出したりはしない。

 などと、感情が二転三転しているゲンの様子に気づくことなく、
 ソウルさんは続けて、

「というわけで、今日から、バイトとして、毒組で働きなさい。当然の話だが、テロリストを殲滅してこい――などという命令を出すことはない。あくまでも、仕事内容は私のサポートだ。ようするに雑用係だな」

「でしょうねぇ」

「これだけ小さいころから、小姓として尽くしてきた……という事実を積んでおけば、大人になって、毒組の入隊試験を受ける際に大きな有利をとれるだろう」

 ちなみに、そういうポジションを望む子供は結構多いのだが、
 危険だし邪魔だから、という理由で断っている。

 ようするに、ゲンの場合は、親が局長だから特別。

 この特別扱いに関して、誰かに何か文句を言われたとしても『子供に親の勇姿を見せたいから見学として連れてきた』という『一応完全な嘘でもない屁理屈』で通し、将来的には『子供のころから毒組のバイトとして頑張ってきた』という実績扱いにする気まんまん。

 汚いな、さすが上流階級者、きたない。

 ま、ようするには、生まれやコネは大事であるというお話でした。

(ガキのうちだと、まともな仕事につくのすら難しい……それゆえに『裏でのし上がるしかない』と決意したし、その過程で起こりうる『ガキゆえに苛まれる面倒』のリスクヘッジに『かなりのリソース』を割くつもり満々だったけど……毒組のバイトでいくなら、余計なことを考えなくてもいい……悪くない……)


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