『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

86話 もう、あきらめましょう。

 86話 もう、あきらめましょう。

『バフと薬が切れた……補充してくれ。今回は、いつもよりキツくしてもいい。この地獄にもだいぶ慣れてきた。俺は……まだ舞える』

 誰よりも壊れて、
 誰よりも苦しんで、
 なのに、

 ――それでも、センエースは『自分以外』の『弱い命』のために戦い続けた。

 こんな地獄のような状況には背を向けて、
 さっさと自殺して、別の世界に転生すれば、
 穏やかで楽しい毎日を過ごせるのに。

 けれど、センエースは抗い続けた。
 『死ねば楽になれる』のに、
 『死ぬよりも遥かに苦しい瀬戸際』で、
 延々に、黙々と、バカみたいに、
 ――戦い続けた。

『もう……あきらめましょう……これ以上やっても……あなたが壊れるだけ……もう……見ていられない……もう、あなたを……壊したくない……』

 直視できないほどズタボロの姿で、
 それでも、バグに立ち向かおうとする背中。

 さすがに耐えきれなくなって、ドナは想いを漏らした。

『おねがい……もうやめて……』

 ドナの想いを聞いて、
 センは、深く頷きながら、


『そうだな……諦めた方がいいな……』


 同意した。
 当然。
 センエースはバカじゃないから。

『さっさと諦めてしまったがいい。その方が絶対に楽……わかっているさ、そんなこと。俺は賢くないが、バカじゃない。だから、理解はできる』

『ここで諦めても、誰も、あなたを恨んだりしません……あなたは、十分すぎるほど戦ってくれました……弱い命のために……あなたは、誰よりも傷ついてくれた……みんな、知っている……ちゃんとわかっている……だから……』

 本気の言葉だった。
 もはや、懇願とも言えた。

『……幸福だった……幸運だった……あなたの配下になれたこと……あなたに尽くせたこと……すべて、すべて……だから……』

 このまま、センに絶望を押し付け続けるくらいなら、
 『世界滅亡の方が楽だ』と、本気で思ってしまった。

 普段ならそんなことは思わない。
 ドナは『世界』を大事に思っている。
 『なくしたくない』と願っている。
 だからこそ、鮮血時代では、遮二無二(しゃにむに)、朝も夜もなく闘い続けた。
 だからこそ、こんなにも長い間、センを壊し続けることができた。

 ほかの誰にも出来ない仕事。
 続けてこられたのは、
 真摯に世界を想っていたから。
 第2~第9アルファは『守るに値する世界だ』と信じていたから。

 命の暖かさを知っていたから。
 その尊さを理解していたから。

『あなたは、私に与えてくれた……この暖かさ……この想い……命の意味を、あなたは私に教えてくれた……』

 闇人形だからって、命が理解できないわけじゃない。
 むしろ、心に虚(うつろ)を飼う闇人形だからこそ、
 命の輝きについて、誰よりも理解できているという自負があった。

 センエースがくれたもの。
 ――それは、
 欲しいモノを欲しいと言っていい世界。
 本物の倫理的完成を求めてもいい土台。

 無数の地獄を乗り越えて、
 ありえないほどの奇跡を積んで、
 ようやく出来上がった理想の具現――ゼノリカ。

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