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59話 僕をナメんなよ。

 59話 僕をナメんなよ。

「僕の望みは、今のところ、一つだね。神になりたい。最果ての高み。真なる高次存在。『そこ』に至らないと『始まらない世界』ってのがあるから」

「神、か……神ねぇ……あー、それは……つまり、その……宗教観点における抽象的な意味か? ……それとも、完全院や全宮の中枢に食い込むということか?」

 ゴミスの視点で言えば、世界の神とは五大家のこと。
 全ての支配者。
 完全なる存在。

 額面通りに受ければ、むしろ『神に成る』という言葉は、
 『五大家の中で上り詰める事』という意味になる。

 ――だが、アモンは、渋い顔で、

「……はぁ? なわけないじゃん。僕をナメんなよ」

 と、愚者を見下す顔でそう言って、

「僕の望みは、文字通り『神』になること。直近の目標は『実数値的にも長強師匠』を超えること。『根本の目標』はパメラノ先生から太鼓判をもらって、栄えあるゼノリカの天上、九華十傑に名を連ねて、真なる高次存在となること。僕の目標は非常にシンプルで骨組みがしっかりしている。僕は意味のない夢をみない。ちゃんと、計画表をたてて、キッチリと、ストイックに毎日を積んでいくタイプ。僕みたいなのが結局、成功する」

 ぺらぺらと『他者の理解を求めていないタイプ』の『自分語り』をするアモンの顔を見ながら、
 ゴミスは、マユをひそめて、

(チョウキョウ師匠……また知らん名前が出てきたな……というか、これは……どういうことだ? アモンの目的は……ゼノリカ教で出世すること……ということか? こいつが一番じゃないのか? ……そういえば、さっき、この男は『自分はゼノリカ内で最高の資質を持つ男だ』と発言していた……そして『実数値で師匠を超えたい』という発言……その二つから鑑みるに……まさか、ゼノリカ教団には、このアモン以上の強者がいるのか? ……これだけの強さがあって、教団内で『上』に立ててはいないと? そんなバカな……)

 強さと地位はイコールになるのがゴミスの常識。
 弱者に従う強者などいない。
 ゆえに困惑する。
 理解ができない。

(そうだ……そんなわけがないっ! これだけの強さを誇る男が下っ端など、あってはいけない。……くそ……いまいち、このアモンという男の状況が把握しきれない……)

 自分の中にある常識だけに焦点をあてているものだから、
 まったく、真実が見えてこない。

 しかし、それも仕方がない話。
 『ゼノリカ』という異常な組織を想像できるほど、
 ゴミスの妄想力は豊じゃない。

 ただ、情報処理能力がラリっているというわけではないので、

(アモンの言葉が全て事実だと仮定して……述べられた言葉を並べて組み立てると……)

 そこで、頭がズンと重くなった。
 許容範囲を超える答えが算出されて、重ダルい頭痛におそわれる。

(すべてが事実なら、アモンのゼノリカ内での現状は下っ端で、アモンの願いは『九華という幹部組織への昇格』……九華十傑……その名称は、まさか、アモンの上位者が9~10人いるってことじゃ……ぃ、いやいや、さすがに、それはない! いくらなんでも、それは、妄想がすぎる。こんな圧倒的な強さを持つ者が二桁の単位で存在する組織など、五大家以外にあってはいけない……)


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