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35話 第二フェーズ。

 35話 第二フェーズ。

「今回のミッションで、ずいぶんと情報が集まったわ。『この世界の中層以下は、そこまで脅威ではない』ということ。『深部の情報は、もっと踏み込まなければ入手できない』ということ」

 状況を整理してから、
 ミシャは、


「……あらかた『欲しかった情報』は集まった。さすがに、そろそろ次の段階に移行するタイミング……なんだけど……」


 次の段階。
 それは、
 ――『天下』を使った人海戦術。

「問題は師を説得できるかどうかなのよね……」

 ミシャは、やれやれ顔でタメ息をつき、

「師は我々を想いすぎている。もちろん、うれしいけれど、しかし、ご自身の身を最優先で案じていただかなければ――」

 と、そうつぶやいた時、
 ミシャの脳内に、



『――ミシャ。返事をしろ、私だ』



 アダムの言葉が響いた。
 ミシャは、ンンッとノドの調子を整えてから、

「聞こえているわ。なに?」

『Cレリックはどうだった?』

「やはり、大したコトはなかったわ。なんも問題もなく、当初の予定通り、バロールに回収させることができた。コスモゾーン・レリックという大層な名前だけあって、そこそこマシなアイテムだから、装備者となったバロールはだいぶ強化されたけど、面白い情報はもっていなかったから……収穫量としては可もなく不可もなく、と言わざるを得ないわね」

『了解した。それでは、主上様の命令を伝える。これまでに奪取した情報の整理と共有が終了したら、即時、全員で【こちら】に戻ってくるように』

「了解」

『あと【第二フェーズ】に移行するから、情報共有のさいに、そのムネを下に伝えておけとのお達しだ』

「あら……師は『天下』を使うことを了承なさったの?」

『私とシューリで根気よく説得した』

「……ご苦労様」

 師の頑固さを知っているミシャは、
 二人の苦労がリアルに想像できたため、
 心からのねぎらいの言葉を述べた。

 通信終了後、
 ミシャは、テキパキと指示を出し、
 五分とかからず、情報共有を終わらせ、
 『第二フェーズ始動』の指令を出すと、
 そこで、ドナに視線を送る。

 無言の命令を受けとめると、ドナは、
 自身の右耳につけているピアスを右手でつまみ、

「――ドナドナ――」

 呪文を唱えると、
 ドナを含めた『その場にいる全員』が、
 ドナのピアスの中へと引き込まれていった。

 空間干渉に対する障壁を張りながら、
 亜空間から亜空間への次元跳躍。


 ――『ドナのピアスの中』は、
 無限を思わせるほどに広くて白い空間だった。

 その空間の中央で、
 『この上なく尊き神』とその従者たちが、華麗に舞っていた。

 狂気のダンス。
 鋭敏なステップ。

 歯をむき出しにしているアダム、シューリ、平熱マンの三人を相手に、
 汗一つかくことなく、優雅に、華麗に、
 ――究極超神センエースは、空間の全方位に残影を刻んでいた。

 その光景を見たカティは、
 思わず、

「……美しい……」

 と、心からの感嘆をこぼす。

 アダムもシューリも平熱マンも、
 今のカティでは想像すら出来ないほどの『高み』にある。
 しかし、
 この上なく尊き神は、
 そんな三人の超越者を相手に、
 わずかも怯むことなく、
 ただただ美しさを魅せつけているばかり。


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